デューデリジェンスとは?M&Aでの意味や英語、進め方なども紹介

「デューデリジェンス」とは「投資・買収先の企業を調査する」こと

「デューデリジェンス」とは、企業の投資や買収を進めるにあたり、その対象企業の経営状況や財務状況などについて調査することをいいます。専門的な知識が必要となるため、投資や買収を行う企業の従業員が直接調査を作業行うことはありませんが、企業に勤める社会人としては、言葉や内容は知っておきたいものです。

本記事では、言葉の意味や詳しい内容、進め方のほか、英語表現、会話での使い方、類語、言い換え表現についてもわかりやすく紹介します。

「デューデリジェンス」の英語は「due diligence」

日本でカタカナ用語として使われている「デューデリジェンス」は、英熟語の「due diligence」が語源となっています。「due=当然の、正当な」「diligence=勤勉、努力」、つまり「due diligen」は、投資や買収を行う際に実施する正当な努力であり、これが「投資・買収先の企業を調査」にあたるわけです。

The company I work for did the due diligence for the ABC Corporation acquisition.
(私が勤めている会社は、ABC株式会社買収のためのデューデリジェンスを行った。)

日本語においての「デューデリジェンス」とは

日本語においての「デューデリジェンス」は、「デューデリ」「デューディリ」「DD」と略されることも多いです。また、実際の調査作業は法律的な要素も多いため、弁護士や公認会計士が行っており、法律用語として「相当な注意義務」の意味でも使われています。

一般的なビジネスシーンでは、よくM&Aによる企業買収の際に行われるものと考えられていますが、投資や企業間の取引の際にも実施されており、「デューデリジェンス」は、基本的には「ビジネス「ファイナンシャル」「税務」「リーガル」「人事」の5つが基本とされています。そのほか、現在では「知的財産」「不動産」「技術」「顧客」という4つのデューデリジェンスも加えられていますが、必ず全種類のデューデリジェンスが行われるわけではありません。

ビジネスデューデリジェンス

「ビジネスデューデリジェンス」は、「事業デューデリジェンス」とも呼ばれており、調査先の企業が取り扱っている商品やサービスなど、事業そのものに直結する内容について調査することをいいます。併せて、同業他社と比較してどの位置にいるのかや、業界内での市場動向についても調査し、投資や買収を行うに値する企業かどうかを判断することとなります。

ファイナンシャルデューデリジェンス

「ファイナンシャルデューデリジェンス」は「財務デューデリジェンス」とも呼ばれており、
決算時の財務諸表を用いて、過去の業績、収益、事業計画との整合性、キャッシュフロー(現金の流れ)の状況など、財務関係の資料を対象に調査を行うことをいいます。

そのほか、雇用、不動産関係の資料や契約書など、簿外債務と呼ばれるものの有無の調査も対象とされています。

税務デューデリジェンス

「税務デューデリジェンス」とは、過去の税務申告内容、納税状況など、過去の税務の問題の有無ついて調査することをいいます。税務上でリスクがあるかどうかは、M&Aを実施するにあたってはとても重要な要素とされています。

リーガルデューデリジェンス

「リーガルデューデリジェンス」は「法務デューデリジェンス」とも呼ばれており、沿革、商業登記、過去のM&A、許認可など会社の基本的な事項、契約関連、資産、債務、訴訟といった、企業の法務関連について調査をすることをいいます。いろいろある項目の中でも、引継ぎ不可なら事業の継続ができなくなる「許認可」や、賠償金の支払いが伴う可能性の高い「訴訟」を抱えているか否かについては特に慎重に調査されます。

人事デューデリジェンス

「人事デューデリジェンス」とは、従業員数、人件費、人事制度、人事システム、労使関連など、人事関連について調査を行うことをいいます。人材は、事業を推進していく上でとても重要な企業の財産のひとつであり、企業買収を行った際、従業員の勤労意欲の低下が起こらないようにするためにも重要な調査です。

知的財産デューデリジェンス

発明、営業秘密、商標など、人の知的活動により産出された無体物も財産とし、これらを「知的財産」と呼んでおり、買収先の企業が保有する知的財産について、それらの価値やリスクについて調査することを「知的財産デューデリジェンス」といいます。

不動産デューデリジェンス

「不動産デューデリジェンス」は、調査機関によっては「不動産鑑定業務」とも呼ばれており、投資・買収先の企業や投資家が保有する不動産そのものの価値、所有権利、地理的に見た収益性などについて調査することをいいます。

技術デューデリジェンス

買収先の企業が保有する技術、生産設備などハード面に関する調査を「技術デューデリジェンス」といいます。

顧客デューデリジェンス

「顧客デューデリジェンス」は、「カスタマーデューデリジェンス」とも呼ばれており、事業を引き継ぐことにより直接的に関わる新規顧客、既存顧客について調査を行うことをいいます。

デューデリジェンスの進め方

デューデリジェンスを実際に行うのは専門家ですが、実行するためにはしっかりとした計画を練らなくてはなりません。

1.チーム編成を行う

M&Aなどを行う際は、自社の業務を遂行する担当者を選びチームが作られ、調査方法に合わせて弁護士、公認会計士などの専門家を集めます。

2.優先順位の決定

無駄な時間や費用をかけることがないよう、優先順位をつけながらスケジュールを立てていきます。多くのデューデリジェンスには、ある程度決まったチェック項目があり、チェックリストとして存在するので、それらを活用するのもいいでしょう。
(情報参照元:一般社団法人日本的M&A推進財団 書式集 財務DDチェックリスト

3.専門家に依頼・打ち合わせ

調査項目に応じた専門家に依頼し、買収元となる企業の担当者との詳しい打ち合わせをします。一般的にどのデューデリジェンスでどの専門家に依頼するかは次のとおりです。

・ビジネスDD → 中小企業診断士、金融機関
・リーガルDD → 弁護士
・財務DD/税務DD → 公認会計士・税理士
・人事DD → 弁護士・社会保険労務士

4.専門家から調査結果の報告を受ける

デューデリジェンスを実施した結果をそれぞれの専門家から聞きます。その際、足りない情報などがあった場合は追加の調査依頼を行います。

5.調査結果から今後の対応を検討する

さまざまな調査結果や入手した資料をもとに、実際にM&Aに踏み切るかなどを検討し、リスクが小さいと判断した場合はそのままM&Aを進めていくことになります。

デューデリジェンスにはどのくらいの費用がかかる?

デューデリジェンスは、一般的に1ヵ月~2ヵ月の期間を要するとされており、調査作業は専門家に委託するため、それなりの費用がかかります。通常は時給換算で、どの種類のデューデリジェンスも2~5万円といわれています。調査に必要な時間はデューデリジェンスによって異なりますが、おおよそこのくらいの金額が必要とされています。

・ビジネス 30~300万
・リーガル 35~200万
・財務 100~500万

「デューデリジェンス」の使い方・例文

実際に組織内でデューデリジェンスに携わらないと使う機会は少ないと思いますが、参考までに、どのような使い方をするのか、例文でチェックしておきましょう。

例文

・A社買収にあたりデューデリジェンスを行うことになった。
デューデリジェンスを行った結果、B社の買収は当社にとって大きなリスクになることが判明した。
・財務デューデリジェンスが必要なため、早急に公認会計士を探さなくてはならない。

「デューデリジェンス」の類語・言い換え

「デューデリジェンス」を日本語で言い換えたい場合は、次の言葉が使えます。

デューデリジェンスの言い換え表現

・評価手続き
・資産査定
・財務調査
・税務調査
・買収監査 など

また、似た意味をもつカタカナ用語には「バリュエーション」があります。

「デューデリジェンス」「バリュエーション」の違い

「バリュエーション」は日本語で「企業価値評価」といい、企業の利益や資産などの企業価値と比較し、株価が割安か割高かを判断することをいいます。企業の価値を評価するという意味においては「デューデリジェンス」と類語といえますが、「バリュエーション」はただ適正な企業価格を出すだけで、実行は必須ではありません

「デューデリジェンス」の意味や重要性を理解しよう

投資や企業買収を行うには、表に見えている有益な情報を見ているだけではいけません。資金があったとしても、相手企業に負債があった場合は大きなリスクを受け入れる可能性が高くなります。また、負債意外に運営上の問題があり、契約後に判明、もしくは契約寸前に破断になってしまうと損失が出てしまいます。それらのリスクを事前に回避するためにも、デューデリジェンスは重要な作業といえます。

資金と時間は費やすことになりますが、投資や買収の計画があがった際は、必要なデューデリジェンスは行うようにしましょう。