「いかがでしょうか」はこんな言葉
「いかがでしょうか」は、身内や目下の相手に対して用いる表現の「どうでしょうか」を取引先の人やお客様などの目上の相手にも使えるように、丁寧な言い方にした敬語です。
似た意味をもつ敬語には、「差し支えありませんか」や「よろしいでしょうか」があります。
ややカジュアルな表現の場合、「具合はどうですか」や「どうでしょうか」「大丈夫ですか」に言い換えることができます。
「いかがでしょうか」は、一語でいろいろなニュアンスを表すため、英語に直すときにはその都度、意味に合う表現を選ぶ必要があります。
例えば、「Would you like a cup of coffee?」で「コーヒーはいかがですか?」になります。
「いかがでしょうか」はこんな意味のこんな敬語
「いかがでしょうか」は、相手の事情に気を配りながら改まって「どうですか?」と何かをたずねるときに使う敬語です。
話し言葉でも、書き言葉でも使用できます。
「いかがでしょうか」はなぜ目上に使える?
「いかがでしょうか」は、次の2つの考え方で文法的に説明されます。
「どう、どのように」という意味を表す「いかが」に、丁寧に断定するときに使う「です」と、疑問の形にする「か」をつけたもの
「どう、どのように」という意味を表す「いかが」に、「だろうか」を丁寧な言い方にした「でしょうか」をつけたもの
どちらの解釈でも丁寧な言い方であることには変わらないので、「いかがでしょうか」は上司やお客様、取引先の人など目上の相手に使える敬語になります。
「如何でしょうか」は意味が紛らわしい
「いかがでしょうか」は、「如何でしょうか」と漢字で書かれるケースもあります。
しかし、ビジネスでは「いかがでしょうか」と書くのが一般的で、漢字ではあまり表記しません。
その理由は、「如何」は「いかが」だけでなく「いかん」とも読める言葉だからです。
「いかん」と読んだ場合、「如何」は「ことの次第」や「なりゆき」「ようす」という意味になります。「如何でしょうか」だと意味がわかりにくくなる恐れがあるため、「いかがでしょうか」はひらがなにするのが無難です。
「いかがでしょうか」の用法と返事の仕方
「いかがでしょうか」は、シチュエーションによって若干ニュアンスを変え、さまざまな事柄について「どうですか?」とたずねることができる、便利な言葉です。
「いかがでしょうか」の用法とそれぞれの意味を確認してみましょう。あわせて相手の心証がよくなる返事の仕方も紹介します。
相手の気分や状態を問う
相手の気分や状態をたずねるときの「いかがでしょうか」は、「どのようになっていますか」というニュアンスだと解釈するとわかりやすいです。
B「お気遣いありがとうございます。もう大丈夫です。」
B「差し支えありません。よろしくお願いします。」
B「すみません。その日は都合が悪いため参加できません。次の機会にまた誘ってください。」
「いかがでしょうか」と言われたら、お礼やお詫びの言葉などを添えて「YES」か「NO」の返事をするのが一般的です。何もつけずに返すより、相手に好ましい印象を与えることができます。
相手の状態や意見などを問う
ことの成り行きに対する相手の状態や、自分の提案についての意見をたずねるときの「いかがでしょうか」は、「どんな感じでしょうか」に脳内変換すると解釈しやすくなります。
B「◯◯の作業を行っているところです」
B(OKの場合)「ご提案ありがとうございます。そのプランで構いません」
B(返答を保留する場合)「その件については、もう少し検討させていただきます」
B(NOの場合)「申し訳ありませんが、Aプランはお断りします。ほかのプランはありますか?」
提案を受けるか受けないかに関わらず、提案してもらったことに対するお礼の言葉を添えると、相手からの心証がよくなります。
欲しいかどうかを問う
相手に何かを欲しいかどうか、たずねるときの「いかがでしょうか」の意味は、「要りますか?」です。
B(欲しいとき)「頂戴します」
B(断るとき)「ありがとうございます。でも、もう要りません」
断るときに「結構です」や「大丈夫です」と答える人もいますが、これらの表現には「それでいいです」という意味もあります。欲しいのか欲しくないのか相手に伝わりにくいため、このような返答は避けるようにしましょう。
選択肢がたくさんあるときには使えない
「いかがでしょうか」は、選択肢がたくさんあるときには使えません。
「何がいいですか」や「どれがいいですか」と相手に問いかけるときには、「いかがいたしましょうか」や「いかがなさいますか」を用いてたずねます。
・お飲み物は、いかがなさいますか?
例文は、どちらも「どの飲み物がいいですか?」という意味です。相手は「紅茶をお願いします」など、飲みたいものが何かを答えます。
一方、「お飲み物はいかがでしょうか?」だと、飲み物を飲むか飲まないかの選択になります。種類をたずねる質問にはならないので、気をつけましょう。
感想を問う
「いかがでしょうか」を過去形にした「いかがでしたか」を使用すると、「どのようでしたか?」というニュアンスの、相手から感想を聞くときの言い回しが作れます。
B「楽しませていただいました。とくに、◯◯がよかったです。」
素直に感じた内容を答えると、誠実さを伝えられます。
「いかがでしょうか」の類語・言い換え表現
「いかがでしょうか」には、次のような類語があります。どの言葉をどのようなシチュエーションで用いるのか、整理しておきましょう。
よろしいでしょうか:いいですか
この2つは、相手の状態を問うときや、相手の同意や許可をもらいたいときに使う敬語です。
どちらも丁寧な言い方なので、取引先の人など目上の人にも使用できます。
どうでしょうか:気分や状態を問うとき、提案や催促をするとき、感想を聞きたいとき、相手に是非を判断してもらいたいときに使う
大丈夫ですか:気分や状態を問うとき、問題がないかを確認するとき、同意を得たいときに使う
この3つは丁寧な表現ではありますが、「いかがでしょうか」よりもカジュアルな言い方です。親しい上司など気心の知れた相手に使うのならばありですが、取引先の人に用いるのは失礼になります。
英語で「いかがでしょうか」はどう訳す?
「いかがでしょうか」はさまざまな意味を表す敬語なので、英訳するときには表現したいニュアンスに合う言い回しに変換する必要があります。
・Would you like ~?
・Do you want ~?
How is ~?
How about ~?
How is ~ going?
ビジネスで「いかがでしょうか」を使いこなそう
丁寧な表現の「いかがでしょうか」は、さまざまなシチュエーションで用いることができる敬語です。目上の人にも安心して使用できるため、覚えておくと便利に使えます。
ただ、「いかがでしょうか」ばかりを連発していると印象が悪くなってしまい、相手に語彙の足りない人と思われてしまいます。
また、「いかがでしょうか」では言いたいことが伝わらない場合もあります。類語や、使い分けが必要な敬語もあわせて頭に入れておきましょう。