オンボーディングの意味とは?目的や進め方のポイント、事例も紹介

オンボーディングとはどんな言葉?

オンボーディングの意味は、「新しい仲間に対して必要なサポートを行い、早く慣れてもらう取り組み」です。

オンボーディングを言い換えできる類語はありません。

英語で表すときは、「on boarding」を使います。

オンボーディングとはどんな意味?

オンボーディングは、次の意味をもつカタカナ語です。

オンボーディング
新しい仲間に対して必要なサポートを行い、早く慣れてもらう取り組み

オンボーディングは、英語の「on-board」が語源です。「on-board」は、船や飛行機など乗り物に乗っている状態を表す言葉。

もともとは、船や飛行機に新しく乗り込んできた乗員や乗客がスムーズに船内の環境に順応できるように、必要なサポートを行い早く慣れてもらうための取り組みを意味する言葉でした。

そこからニュアンスが広がり、ビジネスでは人事の分野やカスタマーサクセスの分野で、次のように使われています。

人事分野のオンボーディングの意味と目的

人事の分野でのオンボーディングは、企業が採用した新入社員に会社や職場に早く慣れてもらい、戦力として使える人材にいち早く育てるための取り組みのことです。オンボーディングを行う施策や仕組みを、オンボーディングプログラムと呼びます。

オンボーディングに力を入れることで、新人の離職を予防できます。また、部署ごとの人材教育や訓練のレベルにばらつきが起きないようにすることも、オンボーディングの目的です。

人事分野のオンボーディングの特徴

人事の分野でのオンボーディングは、新卒採用の社員だけでなく中途採用のすべての社員が対象にです。キャリアを積んだ中途採用者の場合も、社内の人間関係の構築や、その企業での文化やルールなどわかると、業務の向上にも繋がります。

新入社員の場合、人事部や一部の教育担当の社員だけでなく、配属先の上司や同僚など、広範囲の社員にも協力してもらい職場全体でサポートしていきます。

一律に同じ研修を行う通常の新人研修とは違い、ひとり一人のキャリアやスキルに応じて、必要なサポートができるように個別のプログラムが組まれるのです。また、数ヶ月から1年程度かけて継続的にサポートしていく点も、一般的な新人研修とは異なります。

カスタマーサクセスでのオンボーディング

カスタマーサクセスでのオンボーディングは、企業が提供している商品やサービスを新しく利用し始めた顧客に対して、その商品やサービスの使い方や機能をなるべく早い時期に理解してもらい、迷いなくそれらを利用できるようにサポートする取り組みのこと。

オンボーディングに力を入れ、早い段階で商品やサービスを使いこなせるように顧客を導くことで、顧客の満足度を高めることができ、継続的な商品やサービスの利用を促せます。

MEMO
カスタマーサクセスとは、自社の製品やサービスを利用する顧客が、それを利用することを通じて自身の目的を達成するなどの成功体験を得られるように、顧客に対して企業側から積極的に働きかけ顧客の満足度を高めること。

IT分野でのオンボーディング

IT分野でのオンボーディングは、ソフトウェアやインターネットサービス、アプリの話でよく使われます。新しい利用者が迅速にこれらの操作法に慣れて習慣的に使用できるように導くための、システムやプロセスのことをオンボーディングと呼びます。

初期の段階でサービスの価値がユーザーに伝わらなかったり、操作方法がわからなかったりする場合、利用者はすぐにサービスの利用を止めてしまいます。そのため、IT分野でもオンボーディングは非常に重要視されています。

オンボーディングでは、チュートリアルやガイドツアー、設定アシストなどの手法がよく使われます。

オンボーディングは英語だと?

オンボーディングは英語では、「on boarding」と表します。

on boarding
・新入研修
・オリエンテーション

入社した新人が職務を行うために必要な知識やスキルを習得するための、講習会や勉強会を意味します。

人事の分野でのオンボーディングのメリット

人事部がオンボーディングに力を入れるとどのようないいことがあるのか、オンボーディングのメリットをみてみましょう。

コストの節約になる

オンボーディングに力を入れると、新入社員の早期離職を予防できます。

企業が新しい社員を採用する場合、求人広告費や面接を行うための人件費などで採用費がかかり、採用後は教育のための費用もかかります。

採用した新入社員が早期離職してしまうと、これらのコストは全部無駄になってしまいます。また、新しい社員を採用しなければならないため、新たな採用費と教育費もかかります。

オンボーディングに力を入れることで、これらの大きなコストを節約できます。

生産性がアップする

オンボーディングにより新入社員が早い段階で会社に慣れることができれば、本来持っている実力を発揮しやすくなり、早い段階で戦力として活躍できるようになります

指導する側の社員も新入社員が早く一人前になってくれれば、その分だけ早く自分の仕事に集中できるようになります。

社員の満足度がアップする

オンボーディングは一部の教育係の社員だけでなく、上司や同僚など、新入社員が日ごろ接する周囲の人々がたくさん関わって行われます。

そのため、新入社員も社内の人から受け入れられている感覚を受けやすく、人間関係を築きやすいです。人間関係に恵まれた職場で働けることは、従業員満足度の向上にもつながります。企業文化を理解することで、会社に愛着も持ちやすくなるのです。

職場全体で新入社員をサポートしていくことで、既存の社員たちのチームワークもアップしていき、新入社員以外にとっても働きやすい環境が整っていきます。

オンボーディングの進め方

企業がオンボーディングを実施するときの進め方や、ポイントを紹介します。

入社前の準備①:信頼関係の構築

オンボーディングでは、入社前からの信頼関係の構築が重要です。内定を出して入社が決まったら、入社する前の段階から人事部は新入社員と積極的にコミュニケーションを取っていきましょう

新しい環境に飛び込むことはさまざまな不安を呼んでしまうため、その不安を取り除き安心して入社できるようにするのが目的です。

人間関係の構築を人事部がサポートしていくことを伝えたり、会社ではどんな人が働いていてどのような役割を担っているのかや、困ったときに頼りにできるベテラン社員や上司などの情報を紹介したりします。

会社や上司が新入社員に求めている業務内容や期待する成果がどのようなものなのかを伝え、新入社員からも会社に求めていることや期待している事柄を聞き取ります。双方の期待値を擦り合わせ、入社後のギャップを小さくしておきましょう。

次のような働きかけをするのもおすすめです。

おすすめの働きかけ
・先輩社員座談会や工場見学、懇親会など、既存の社員との交流の場を設ける
・定期的に面談の機会を設ける
・社内報を送付する

入社前の準備②:指導計画の作成

新入社員が学ばなければならないことは非常にたくさんあり、ジャンルも多岐にわたります。どのような順番で教育していけば効率的かよく検討し、マニュアルを作成するなど事前準備をしっかり済ませておきましょう。

結果がなかなか出ない大きな目標は、やる気の維持が難しいです。指導プランは、1ヶ月程度で結果が出る小さな目標を積み重ねていく、スモールステップ法で作ることをおすすめします。

研修で指導する担当者と、実際の業務のなかで指導する担当者の間で、教え方や指導内容に違いがないように打ち合わせを入念に行い、連携して指導を進められるように準備しておくことも重要です。

MEMO
新入社員の入社後は、定期的に指導内容の見直しを行い、改善点をふまえたよりいいプランを作っていきましょう。

入社前の準備③:情報を検索できるようにまとめておく

新入社員が会社に馴染むために必要とする情報や、仕事で使う情報を一ヶ所に整理してまとめておき、新入社員が入社したその日から自由に調べ物ができる状態にしておきましょう。

とくに、テレワークが多い企業では、新入社員が何かに困ったときに直ぐに上司や先輩に質問できないケースが多いです。そのため、入社当日から情報にアクセスできるアカウントを作成しておかなければなりません。

まとめておいたほうがいい情報
・企業理念や会社の歴史
・会社のサービス内容
・企業文化
・交通費や残業申請などの社内規則、暗黙のルール
・業務フロー
・業界知識
・業界や社内で使われる専門用語 など

入社後①:職場に慣れるための指導をする

入社したばかりのころは、会社や業界の事柄について知識を深め、会社の社風やルールに慣れてもらう時期です。

既存の社員があたり前と思っていることも、新入社員にはわかりません。いちから丁寧に指導していき、仕事に関する事柄で何か知らない事柄があるかもしれないと感じてしまう、新人特有の不安を解消してあげる必要があります。

入社後②:コミュニケーションの場を設ける

入社後は、新入社員と既存の社員がコミュニケーションを取る機会を積極的に設けましょう。毎日短時間のミーティングを行う、ランチ会や他部署との交流会を行うなど。新入社員が少しでも早く既存の社員に馴染み、人間関係の輪のなかに入っていけるように手助けします。

定期的に面談を行い、困っていることや不満に感じていることなどがないかを聞き取り、フォローしていくことも重要。上司に相談しにくいことを、人事部が聞き取る機会を設けるのもおすすめです。

オンボーディングの事例

LINE株式会社はインターネット関連の、さまざまなジャンルの事業を手掛けています。幅広い職種で大量の人材を採用しており、社員の9割以上を中途採用者が占める企業です。

絶えず新しいビジネスにチャレンジし続ける社風のため、社員は早く結果を出すことを常に求められます。新入社員にも早く結果を出せるようになってもらう必要があるため、オンボーディングに力を入れています。

新入社員には、入社前の時期から入社後10日目まで会社から毎日、社風や会社で始めた新サービス、社員が使う社内システムなど、さまざまな情報を紹介するメールが届きます。

また、新入社員が困ったことやわからないことを何でも気軽に質問できる社内サービス「LINE CARE」を提供しています。「LINE CARE」は、LINEを通じて質問できる窓口と、オフィス内のサービスカウンターで対面で質問できる窓口の2つが設けられており、新入社員は自分が質問しやすいやり方を選べます。

「LINE CARE」では、パソコントラブルや福利厚生、社内カルチャー、人間関係、備品の保管場所などなんでも質問できます。質問に答える担当者には、どんな些細な質問にも親切に答えることを得意とする優しい社員を配置し、新入社員が質問しやすい環境を整えているそうです。

オンボーディングの使い方を例文で学ぼう

オンボーディングの意味や実施方法がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・長期的なプロジェクトでは、プロジェクトメンバーのオンボーディングが重要になる。
・当社では、企業のオンボーディングを支援するツールを提供し、さまざまな企業にご利用いただいている。
・中途採用者のオンボーディングを強化している企業が増えている。

オンボーディングの類語・言い換え表現

オンボーディングを端的に言い換えられる言葉は、カタカナ語、日本語どちらにもありません。

カタカナ語のオンボーディングがわかりにくいときは、言葉の意味の「新しい仲間に対して必要なサポートを行い、早く慣れてもらう取り組み」を使ってニュアンスを説明するのがおすすめです。

オンボーディングの意味を覚えておこう

オンボーディングは、プライベートなど普段の生活ではまったく使われていない言葉です。しかし、ビジネスでは重要視されている言葉のため、職場で耳にする機会があるかもしれません。

そんなときに困らないように、オンボーディングの意味をしっかりおさえておきましょう。