コアコンピタンスとは?意味、具体例、言い換え、ケイパビリティとの違いも解説

「コアコンピタンス」とは「競合他社が真似できない中核能力」のこと

「コアコンピタンス」とは、競合他社が真似できないほど、圧倒的に上回っている自社の能力を指す言葉で、簡単に表現すると「その企業がもつ得意分野」ということになります。競争社会の中で他社に勝つためには、勝てる要素を正しく知ることが大切です。そのためにも、まずは基本となる言葉を理解しておかなければなりません。

本記事では「コアコンピタンス」の正しい意味や使い方のほか、英語表現、見極めるためのポイント、混同されやすい「ケイパビリティ」との違いなどについてもわかりやすく解説します。

「コアコンピタンス」の英語は「core competence」

「コアコンピタンス」は、「core=核」と「competence=能力、技量」を組み合わせた熟語で、英語源でも通じる言葉です。しかし、海外では一般的に「core competency」という表現をします。

We need to analyze our core competency.
自分たちのコアコンピタンスを分析する必要がある。

「コアコンピタンス」の概念・意味

「コアコンピタンス」は、もとは経営学者「ゲイリー・ハメル」と大学院教授「プラハラード」の両社が共同で寄稿した、ビジネス書「The Core Competence of the Corporation」の中で述べられた概念で、その後世の中に広く知られていった言葉で、次のような意味をもっています。

「コアコンピタンス」の意味

・競合他社が真似できないくらいのレベルに達している、その企業の中核となる能力
・その企業の中核となる強味・特徴・得意分野

しかし、ただ競合他社とは違う能力というだけでは「コアコンピタンス」とはいえず、次の3つの条件を満たしていなければなりません。

コアコンピタンスとなる条件

【1】顧客に何かしらの利益をもたらすこと
【2】競合他社が真似しにくいこと
【3】複数の商品や市場に応用できること

具体例としてよくあげられているのは自動車業界で、エンジンの中心核となる技術を、一般の自動車だけでなく、芝刈り機や除雪機などにも幅広く展開するようにしたホンダや、その時に必要な分だけを生産するという方式にし、極限まで無駄の削減に成功したトヨタがあります。

「コアコンピタンス」と「ケイパビリティ」の違い

「ケイパビリティ(Capability)」には、「(人・組織・機械などの)能力」「才能」「可能性」といった意味をもつ言葉で、日本においてカタカナ用語として使われる際は、主に、組織がもつ能力や強味を指しています。

企業が「これが当社の強味だ!」と言えるものは、決して競合他社と異なっている必要はありません。たとえば、ある企業の強味といえる事柄として、A、B、Cがあるとしましょう。その中で、Aだけは他社には真似できない能力だとしたら、Aがコアコンピタンス、BとCがケイパビリティとなるわけです。

「コアコンピタンス」を見極める5つのポイント

企業をさらなる成長に導くためには、自社のコアコンピタンスを正しく把握しておく必要があり、「ゲイリー・ハメル」と「プラハラード」の著書の中では、見極めるポイントは次の5つであると示しています。

コアコンピタンスを見極めるポイント5つ!

【1】模倣可能性(imitability)
【2】移動可能性(transferability)
【3】代替可能性(substitutability)
【4】希少性(scarcity)
【5】耐久性(durability)

項目だけではわかりにくいと思うので、それぞれについてもう少し詳しく解説しておきます。

模倣可能性(imitability)

模倣可能性とは、他社が簡単に真似できるか否かという点においての見方です。競合他社からは追いつかれないと判断できる場合は、その点において他社よりも優位に立てるということになります。

移動可能性(transferability)

「移動」とは、場所をどこかに移すというのではなく、ある技術や能力を多くの製品に展開できるかどうか、ということを意味します。「汎用性」といったほうがわかりやすい人もいるでしょう。より多くの製品に展開できる場合、移動可能性が高い技術といえます。

代替可能性(substitutability)

「代替可能性」とは、自社が強味としている技術や能力が、ほかのものに代替えできるかどうかを意味します。もしほかのものへの置き換えが不可能な場合は、その技術や能力は他社より上回っているといえます。

希少性(scarcity)

その技術や能力がとても珍しいものであったり、希少価値があるものだったりした場合、希少性が高いといえます。一般的な商品であっても、出回っている数が少なかったり、世界で一つしか存在していなかったりするものは「希少価値が高い商品」とされていますよね?それとほぼ同じ考え方です。

耐久性(durability)

「耐久性」は、その商品が長持ちするかどうかではなく、自社の強味とする技術や能力が市場内において長期間他社よりも優位に立っていられるか否かを意味します。

「コアコンピタンス」の使い方・例文

「コアコンピタンス」は、ビジネスシーンでの会話としては頻繁に使われる言葉ではないかもしれませんが、どのように用いられるのかはぜひ覚えておいてください。

例文

・当社のコアコンピタンスをもう一度見直してみる必要がある。
・今年の就職説明会ではコアコンピタンスをしっかりと伝えようと思う。
・その技術はA社のほうが確実に上回っているいるので、当社のケイパビリティコアコンピタンスとはいえない。

「コアコンピタンス」の類語・言い換え

「コアコンピタンス」を日本語で言い換える場合には、次の言葉が使えます。

「コアコンピタンス」の言い換え表現

・強味
・優位性
・長所
・専売特許
・特長
・アピールポイント
・優れた点
・武器
・肯定的側面 など

また、カタカナ用語の類語としては「スキル」があります

「コアコンピタンス」と「スキル」の違い

スキルには、「手腕」「技量」の意味があり、勉強や訓練などで身に着けた能力を指す言葉です。カタカナ用語として使われる場合は、主に人がもつ特別な技能や能力のことをいいます。

一方、「コアコンピタンス」は、従業員ひとり一人の「スキル」をもとに実現する、組織の技術や能力になります。

「コアコンピタンス」の関連語

コアコンピタンスには「コアコンピタンス〇〇」といった関連語が存在します。言葉を深く理解するためにも併せて覚えておくと便利です。

コアコンピタンス経営

コアコンピタンス経営とは、文字通り、コアコンピタンスを武器として、会社を経営していくことをいいます。どの企業にも真似ができない技術をもっているとコアコンピタンス経営が可能です。

コアコンピタンス分析

自社の強味、つまり、コアコンピタンスが何なのかを特定する作業が「コアコンピタンス分析」です。前述した、コアコンピタンスの見極め方のポイントに基づき検証する作業は、まさに「コアコンピタンス分析」となります。

「コアコンピタンス」を探し出し、競争社会で勝ち抜こう

どんなに小さな技術や能力でも、他社がもっていないなら自社の強味です。もし現時点で気付いていないとすれば、勝ち抜くチャンスを逃していることになります。コアコンピタンスの見極めができていないと感じる場合は、一度しっかり計画・分析をし、見つけ出して市場での勢力アップにつなげてください。