オワハラの意味とは?原因や事例、対策法についても解説

オワハラとはどんな言葉?

オワハラの意味は、「企業が就活中の学生に対して、内定と引き換えに他社での就活をやめさせようとする行為」です。

オワハラを言い換えできる類語はありません。

英語で表すときは、「forcing students to end job hunting」を使います。

オワハラとはどんな意味?

オワハラは、次の意味をもつカタカナ語です。

オワハラ
企業が就活中の学生に対して、内定と引き換えに他社での就活をやめさせようとする行為

学生は企業から内定をもらったとしても、就活をやめる義務はありません。いつ就活を終えるかは学生の自由です。

しかし、内定を出す前の企業は学生を選べるため、学生よりも強い立場にあります。この強い立場であることを利用して、企業が学生に他社で受けている選考を辞退し、自社に入社するように迫ることをオワハラといいます。

オワハラは「就活終われハラスメント」の略語です。

オワハラが起こる原因

以前は、日本の大企業や大きな団体が集まって作られている日本経済団体連合会(略して経団連)が就活のルールを決めていて、経団連に属する企業の多くは就活のスタート時期を揃えていました。

しかし、経団連に所属していない中小企業や外資系企業などは、経団連の就活スタート時期よりも早い段階で就活をスタートさせ、いち早く内定を出していました。数が限られている優秀な学生を、ひとりでも多く自社に確保するためです。

しかし、優秀な学生は大企業に就職したがる人が多いので、せっかく中小企業が内定を出しても経団連の就活がスタートすると、そちらに学生を取られてしまいます。

大企業に優秀な学生を取られないようにするため、オワハラが横行したのです。

政府主導の就職ルールになってもオワハラはなくならない

経団連の就職ルールは、中小企業や外資系企業には守ってもらえていませんでした。さらに、大企業のなかにも隠れて就活の前倒しを行う企業が増えていたことで、このルールは2020年卒の新卒採用までで廃止されました。2021年卒の新卒採用からは、政府主導の就職・採用活動日程のルールで行われています。

しかし、政府のルールは、違反しても罰則などのペナルティがありません。そのため、就活の前倒しをする企業は増えると考えられています。また、意識が高い学生ほど早期に就活をはじめ、多くの内々定をもらうことになるので、優秀な学生を逃がさないためのオワハラはなくならないだろうといわれています。

オワハラの事例と対策

オワハラには、いくつものパターンがあります。どのようなオワハラがあるのかみてみましょう。対策や答え方も紹介します。

他社の内定辞退を迫る

内定を出す代わりに、他社からもらっている内定を辞退するように迫ったり、進行中の選考を辞退するように迫ったりするのはオワハラの典型的な例です。

面接官などから次のようなことをいわれた場合は要注意!

・他社からもらっている内定をすべて辞退したら内定を出してあげるといわれる
・他社からもらっている内定をすべて辞退しないと内定は出せないといわれる
・内定を出す代わりに、今後他社での就職活動を行わないことを約束するようにいわれる
・内定を出す代わりに、他社の選考を辞退するという内容の誓約書を書くようにいわれる
・内定を出す代わりに、今この場で他社に電話をかけて内定を断るように強要してくる

内定という利益を学生に与える代わりに、内定辞退や就活の終了を決断するように交渉してくるのがこのタイプです。

注意点としては、企業のいうとおりに他社の内定を辞退したとしても約束通り企業から内定をもらえるとは限らないこと。自分よりも優秀な学生が応募してきて採用の枠が埋まってしまったなど、企業側の事情が変わって内定をもらえなくなったとしても、誰に内定を出すか決める権利は企業にあるため学生はどうにもできません。

対策

企業から実際に内定をもらうまで、学生は弱い立場に甘んじるしかありません。誠実に「内定をもらえてうれしいですが、もうしばらく就活を続けたいので時間をいただきたい」と内定承諾期限の延長を交渉してみましょう。

企業が理解してくれるのならばそれでよし。企業が納得せずオワハラがやまない場合は、内定をもらうため企業の指示に従うそぶりを見せるのが得策です。

企業に「他社の内定は断る」などの約束をしても、実際に他社の内定を断ったり就活を終えたりする必要はないので、安心して納得いくまで就活を続けてください。

後日、本当に就職したい企業から内定をもらうことができたら、オワハラをしてきた企業の内定を断り、希望する企業に就職しましょう。

ただし、その場で他社に電話をかけて内定や採用選考を辞退させられる事態は回避する必要があります。「重要なことだから両親との相談も必要」などといい、その場を逃れるようにしましょう。その場での電話を強要するような悪質なオワハラをしてくる企業はブラック企業の可能性が高いため、さっさと話を断ってしまうのもありです。

内定の前後で企業と学生の力関係は逆転する

この対策ができるのは、内定の前後で企業と学生の力関係が逆転するから。

日本では、企業が内定を出し学生がそれを承諾すると、その時点から法的な労働契約が成り立つと考えられています。そのため、内定を出した企業はよほどの理由がない限り、学生に出した内定を取り消すことはできなくなります。

一方、学生が内定を辞退することは、比較的簡単にできます。それは憲法で「職業選択の自由」が認められており、従業員は企業に労働契約の解約を申し入れて2週間経てば退職できるルールになっているため。

内定により企業と学生の間に労働契約が成り立っているので、内定をもらった学生は労働者と同じような扱いになり、内定辞退も入社の2週間前までならば認められます

内定辞退は企業にとって大変迷惑なこと

学生が内定を辞退することは法的には問題のない行為ですが、いったん承諾した内定を辞退することは企業にとって大変迷惑な事柄です。

企業はたくさんのお金と時間をかけて採用活動を行っています。内定を出した学生が辞退すると、新たにコストを払って採用活動をやり直さなければなりません。新卒採用の場合は、優秀な学生は他社に内定をもらってどんどん就活を終了していくので、内定辞退の申し出が遅くなればなるほど新たに優秀な人材を採用するのが難しくなります。

そのため、就職したい企業から内定をもらえたら、就職しない企業からもらった内定は速やかに辞退しなければなりません。間違っても、入社直前までキープし続けるということがないようにしてください。辞退の申し出をするときは、相手企業に迷惑をかけることを自覚し、誠実にお詫びしましょう。

内定承諾書にサインするように強要する

企業が、学生に内定承諾書にサインすることを強要するケースもよくあります。内定承諾書は、その企業に入社することを約束する書類です。学生が内定承諾書に署名・押印することで内定は正式なものになり、企業と学生の間に法的な労働契約が結ばれます。

企業に次のように迫られたら、それはオワハラです。

・内定承諾書をその場で書くように強要される
・内定承諾書の提出期限が明らかに短い

学生に十分な時間を与えずに内定承諾書にサインさせ、内定辞退しないようにプレッシャーをかけてくるのがこのタイプです。期限内に他社の内定を辞退しないと内定を取り消すといわれることもあります。

内定承諾書は、内定誓約書や入社承諾書、入社誓約書、就職承諾書などと呼ばれることもあります。

対策

学生が内定承諾書に署名・押印したとしても、入社の2週間前までならば学生が内定辞退することは可能です。

企業からサインしないと内定を取り消すなどといわれサインを強要された場合は、サインしてその場をやり過ごし、後日内定辞退しても問題ありません。他社の内定は、オワハラをしてくる企業には辞退したと答え、内緒でキープしておきましょう。

まれに内定承諾書提出後に内定辞退したことで損害が生じたとして、企業から損害賠償を求められる場合もありますが、それが認められるケースはほとんどありません。

内定辞退による損害賠償が認められるのは、入社しないことを決めたのにすぐに内定辞退の連絡をせず入社直前に申し出て企業に損害を与えた場合など、常識から外れた対応をしてしまった場合だけです。

本命からの内定が得られた後、企業に対して誠実な態度で速やかに内定辞退の申し出をすれば、法的な問題になることはありません。

時間を拘束し他社での就活を妨害する

学生の時間を拘束し、他社での就活に参加できないようにするのもオワハラ。例えば次のようなことがされるケースが多いです。

・面接をその業界での採用面接の平均回数と比べて明らかに多い回数設定したり、最終面接までの期間を延ばしたりし、他社の面接を受けにくいスケジュールで予定を組んでくる
・入社前研修やインターン、懇親会など内定者向けのイベントを頻繁に行い、それへの参加を強制する
・大手企業の選考解禁日や大規模な就活イベントがある日に、強制参加の内定者向けイベントを開催する
・学生が公務員試験を受けられないように、試験日に面接やイベントを行う
・課題をたくさん出して他社の就活に集中できないようにする

参加しない場合、選考辞退や内定辞退とみなすなどと学生を脅し、参加を強制してくることがよくあります。

対策

このようなオワハラを受けたときは、家庭の事情で参加できないなど正当な理由付きで申し出て、スケジュールを調整するように企業と交渉しましょう。

正式に内定をもらっている場合、企業が正当な理由があって参加できないといっている学生に参加を強制する権限はありません。無断での欠席は、内定取り消しの口実になる場合があるのでやめましょう。

推薦状を求めてくる

企業が学生に、所属している研究室の教授や大学から推薦状をもらってくるように要求するオワハラです。これは、理系学生の就活で多いです。

理系学生の就活の場合、内定をもらいやすいけれど教授や学校の信用が絡むため基本的に辞退できないことになっている学校推薦ルートと、内定はもらいにくい代わりに内定辞退の自由がある自由応募ルートの2パターンがあります。

企業が自由応募ルートなのにもかかわらず学生に推薦状を求めてくるのがこのタイプで、「後付け推薦」や「ルート変更」と呼ばれます。自由応募ルートの就活であったとしても、企業の求めに応じて教授や大学の推薦状を提出すると、学生は教授や大学の信用を背負って就活をすることになるため、内定辞退は難しくなってしまいます。

対策

企業にまだ就活を続けたいことを伝え、推薦状の提出期限を延長してもらえるように交渉してください。

交渉に応じてもらえない場合は、大学のキャリアセンターに相談しましょう。「後付け推薦」「ルート変更」で内定辞退できるかどうか、捉え方は大学によって異なります。大学としての判断を聞いたうえでどう対応するか検討しましょう。

心理的に内定辞退しにくくする

学生においしい思いをさせたり、先輩社員などと親しい人間関係を作らせたりすることで、内定辞退しにくくするのもオワハラです。

・人事担当者が過度に内定者に連絡を取ってくる
・役員や人事担当者、先輩社員との食事会を頻繁に開催したり、高級な食事に誘ってきたりする
・企業が家族や友人に内定を出した連絡をし、外堀を埋めてくる

対策

本命企業でない場合、何度も食事会に参加するのはおすすめしません。何かしらの用事を口実にして適度に断るなど、うまくやり過ごしましょう。

内定辞退しないように脅迫してくる

内定辞退しないように高圧的な態度で迫ってくるのがこのタイプ。

・内定辞退したら損害賠償を請求すると脅す
・内定辞退したら今後同じ大学の学生は採用しないと脅す
・内定辞退したら、同業他社に学生の悪い情報を流すと脅す
・他社で内定をもらえるとは思えないなどと不安をあおる
・内定辞退したあとにも何度も電話をかけてくる

「企業側が納得のいく理由を説明しない限り、内定辞退は認めない」とまくし立ててこられるなど、かなり悪質で怖いオワハラをされる場合もあります。

対策

相手の怒りにつられないように冷静に対応するのがポイントです。よく考えたうえでの決断であることを冷静に説明し、迷惑をかけたことを謝罪しつつも内定を辞退することはしっかり伝えましょう。

企業が納得してくれない場合は、大学のキャリアセンターに相談してください。

オワハラによる企業のデメリット

優秀な学生を確保するつもりが、オワハラをすることでかえって学生の確保が難しくなることも。オワハラのデメリットをおさえておきましょう。

悪質なオワハラは違法行為

悪質なオワハラは、法律に違反しているとみなされる場合があります。

例えば、内定を辞退しないように脅迫すれば、脅迫罪が成立します。また、他社の内定を辞退させる、土下座で謝罪させる、謝罪文を書かせるなどの行為は強要罪にあたります。精神的な苦痛を受けた学生が、損害賠償請求をしてくることも考えられ、裁判沙汰になることも。

炎上のリスクがある

法律に違反しない場合も、学生がSNSに企業名つきでオワハラされたと書き込めば、炎上し企業の信用が一気に落ちる可能性が高いです。

また、学生からオワハラの相談を受けたキャリアセンターが、オワハラをする企業一覧を作成し、学生たちに注意を促している大学もあります。そうなれば、翌年からの学生の応募が少なくなり、優秀な学生の採用が困難になってしまいます。

公務員や中途採用の試験にもオワハラはある

企業の新卒採用だけでなく、公務員の採用試験や中途採用の場合もオワハラはあります。

公務員や中途採用の場合も、対応方法などは企業の新卒採用と同じです。

オワハラの使い方を例文で学ぼう

オワハラの意味や対策法などがわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
オワハラを受けた人の体験談をまとめる。
・学生向けにオワハラ行為の情報を発信する。
・転職活動中にオワハラに合わないためのコツを紹介する。

オワハラは英語だと?

「forcing students to end job hunting」のようにいうと、英語でオワハラのニュアンスを伝えられます。

forcing students to end job hunting
学生に就職活動を終えることを強制する

「forcing」の意味は「強制、促成」、「job hunting」の意味は「求職活動、就職活動」です。

オワハラを正しく理解しよう

オワハラは、「企業が就活中の学生に対して、内定と引き換えに他社での就活をやめさせようとする行為」です。

就職活動中にオワハラにあったとしても、学生はそれに従う義務はありません。相手企業に内緒で就職活動を続けたとしても問題なく、ひとりで対処するのが難しい場合は大学のキャリアセンターに相談することができます。

人生を左右する就職活動で後悔することがないように、オワハラを正しく理解しうまく乗り越えていきましょう。