デファクトスタンダードとはどんな言葉?意味や事例、使い方も解説

デファクトスタンダードとはどんな言葉?

デファクトスタンダードの意味は、「事実上の標準」「業界標準」です。

デファクトスタンダードを言い換えできるカタカナ語はありません。言い換えするときは、日本語の意味をそのまま使ってください。対義語はデジュールスタンダードです。

デファクトスタンダードを英語で表すときは、「de facto standard」を用います。

デファクトスタンダードとはどんな意味?

デファクトスタンダードは次の意味をもつカタカナ語です。

デファクトスタンダード
・事実上の標準
・業界標準

公的な標準化機関からの認証は受けていませんが、市場での企業競争に勝って、その業界での事実上の標準となったものをデファクトスタンダードと呼びます。

例えば、下記のようなものがデファクトスタンダードとみなされます。

・スマホユーザーの大半が使用しているLINE
・ビジネスでのコミュニケーションによく用いられているGmailサービス
・コロナ禍の影響でビジネスでもプライベートでも一気に普及したWeb会議サービスのZOOM など

デファクトスタンダードの決まり方のイメージ

あるメーカーが、独自に開発した技術や仕様を使った製品を世に売り出そうとした場合、別の規格で作られている似たような製品を販売するライバルメーカーとの競争が起こります。

それぞれのメーカーは、自分が提案している規格を採用して関連製品を作ってくれる他メーカーや、自分が押す規格を採用した製品を買ってくれる消費者をたくさん獲得しようとします。これは、味方を増やして市場での勢力を拡大するための動きです。

競争に優劣が現れ、優勢なほうの仕様を採用した製品が市場に多く出回るようになると、消費者の大半がその仕様の製品を好んで購入するようになります。別規格の製品は売れ行きが悪くなっていき、勝ち馬に乗ろうと優勢なほうの技術や仕様に対応した製品の製造をはじめるメーカーがどんどん増えていきます。

このようにして多数派となった技術や仕様が、その業界でのデファクトスタンダードとみなされるようになります。

デファクトスタンダードを争う事例

デファクトスタンダードを廻る争いは、決着がついているものも競争が継続中のものもあります。

事例
・家庭用ビデオレコーダーの規格を巡り、ベータマックスとVHS方式のビデオカセッターが競争。VHS勝利
・パソコンのOSを巡り、Classic Mac OSとWindowsOSが競争中
・第3世代光ディスクの規格で、HD DVDとブルーレイディスクが競争。ブルーレイディスク勝利
・家庭用据え置き型ゲーム機で、Nintendo SwitchとPlayStation 4、PlayStation 5が競争中
・スマートフォンやタブレットで、iOSとAndroidが競争中

このうちのMacとWindowsの競争は、パソコン分野のみでみるとWindowsが優勢のため、Windowsがデファクトスタンダードになったとする見方もあります。

しかし、両者はスマホやタブレットの分野にも進出しています。パソコンと電子端末を連携させることによる使い勝手の向上などもアピールポイントに加えて、両者の競争はまだ続いていると考えることもできます。

デファクトスタンダードになる条件

デファクトスタンダードになる条件は複雑です。1番乗りが有利に思えるかもしれませんが、早く新技術を市場に出したメーカーが優勢になるかというと、そうとは限りません。また、性能が優れていれば勝てそうですが、こちらもそうではない場合が多々あります。

デファクトスタンダードの競争に勝ち残った事例から条件を考えてみると、次のような場合に勝ちやすいといわれています。

経済界の大物を味方につけて応援してもらう
・情報を他社にオープンにすることで味方を増やす
・非常に魅了的な関連ソフトを開発して、そのソフトを使いたいファンを自陣営に獲得する

ただし、これらの例が絶対条件というわけではなく、さまざまな事柄が関係してデファクトスタンダードは決まっていきます。

デファクトスタンダードのメリット

デファクトスタンダードになると、それだけで自社規格の製品を好意的にみてくれる消費者が増えていきます。自社の仕様に対応した関連製品も次々発売されるため、ライバルメーカーよりも有利にビジネスを進めやすくなります。

このようにして、消費者から選ばれやすくなる環境が自然と出来上がっていくため、広告費を節約できます。ほかの規格を採用した競争力のあるライバル製品は減っていくため、価格設定もある程度は自由に決められるようになります。

さらに、自社が開発した仕様をもとに他社が製品を開発することになるので、パテント料(特許使用料)も得られます。

デファクトスタンダードのデメリット

デファクトスタンダードにはたくさんのメリットがありますが、いいことばかりでもありません。

例えば、パテント料を支払わずに自社規格をマネする模倣品が増え、その対応に追われる可能性が高まります。市場を独占しすぎると、独占禁止法に抵触する恐れもあります。

また、デファクトスタンダードがはっきり決まるまで、消費者がどちらの製品を購入するか決められず、様子見が必要になることも考えられますよね。デファクトスタンダードが決まったら今度は、商品選びの選択肢が少なくなり、消費者が不利益を被る場合もあります。

デファクトスタンダードは英語だと?

デファクトスタンダードを英訳するときは、「de facto standard」と表現します。

de facto standard
・デファクトスタンダード
・デファクト標準
・事実上の業界標準

「de facto」は「事実上の」という意味のラテン語ですが、「標準」や「基準」という意味の英単語「standard」にそのままくっつけて使います。

デファクトスタンダードの使い方を例文で学ぼう

デファクトスタンダードの意味がわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・自社の規格をディファクトスタンダード化するために、基本的な仕様をオープンにすることを決めた。
・両規格の優劣が明確になったことで、ディファクトスタンダード製品を製造するメーカーが増えた。
・コミュニケーションツールのディファクトスタンダードを狙う。
・将来、世界のディファクトスタンダードを握る可能性を秘めた、画期的な技術を開発した。

デファクトスタンダードの類語・言い換え表現

デファクトスタンダードを言い換えできるカタカナ語はないので、言い換えする場合は日本語の意味の「事実上の標準」や「業界標準」をそのまま使います。

例文
・画期的なビジネス形態で新たな事実上の標準になることを目指す。
・生産性アップを目的に、従来のビジネスプロセスを業界標準に合わせることを決断した。

デファクトスタンダードの対義語

デファクトスタンダードの対義語は、デジュールスタンダードです。

デジュールスタンダードは、ISOやJISの規格国際標準化機関などの公的な機関により法的に定められた標準規格のこと。デファクトスタンダードが、後に公的機関に認められてデジュールスタンダードとされる場合もあります。

次の3つが公的に認められている代表的な標準規格です。

・国際標準化機構(ISO)が定める「IS(International Standard)」
・米国国家規格協会(ANSI)が定める「ANSI Standard」
・日本産業標準調査会の答申によって定められる「日本産業規格(JIS)」

デジュールスタンダードは、「研究成果のデジュールスタンダード化を推進する」のように使います。

デファクトスタンダードを意識して働こう

企業としてビジネスを有利に進められるかどうかに関わるため、デファクトスタンダードを狙っている会社は少なくありません。また、すでにデファクトスタンダードとみなされている規格に対応した製品やサービスを提供することは、多くの消費者のニーズに応えることにもなります。

ひとりのビジネスマンとしても、デファクトスタンダードを意識して仕事に取り組んでみましょう。