「サンプル」とは「見本」「標本」のこと
日常の中でよく遭遇する「サンプル」は「見本」であることが多いですが、ほかにも「実例」「標本」など、分野によってさまざまな意味で使われている言葉です。
そのため、各分野ごとの「サンプル」の意味を正しく理解しておかなければ、その分野での会話が成り立ちません。
また、「サンプル」の対義語としては、「現物」「本物」などがあてはまるので、併せて覚えておきましょう。
「サンプル」の英語は「sample」
サンプルを英語で表現すると「sample」で、次のような意味をもつ単語として使われています。
【名詞】
・見本
・実例
・試供品
・標本
・試料
【形容詞】
・見本の
【他動詞】
・見本をとる
・試食(試飲)する
・標本を抽出する
「sample」を使った熟語も少し紹介しておきます。
・sample a new cuisine
(新しい料理を試食する)
・to sample the taste of something
(試飲する)
・sample ad
(見本広告)
・sample answers
(模範解答)
・sample fair
(見本市)
・sample of blood
(血液検体)
・color sample
(色見本)
日本語においての「サンプル」とは
日本語においての「サンプル」は、広い意味では「見本」「標本」ですが、分野ごとに指すものに違いがあります。それぞれの分野の意味のほか、どんな使い方をするのかもみてみましょう。
製造分野
家電メーカー、アパレル、化粧品、食料品などの製造分野においては、本格量産に入る前に作る「試作品」を「サンプル」と呼んでいます。サンプルを作って、商品として問題がないかを検証し、なにか不具合があれば修正をし、再度サンプルを作り、再検証します。そして、問題がないと確認できるまでこの作業を繰り返し、量産へと進んでいくわけです。
・サンプルの検証結果を部長に報告する。
・うまく起動しない点を改善したサンプルがこちらになります。
販売分野
化粧品やサプリメントなどにおいては、少しだけ試しに使ってみるための商品が用意されていることがあり、これを「サンプル」と呼んでいます。メーカーによって有料、無料の違いがありますが、商品を購入しても自分に合うのか、最後まで使い続けられるかわからないものに関しては、サンプルを使ってみることで無駄な買い物をしなくて済むというメリットがあります。
また、販売側としても、サンプルで体験してもらうことで、先の売上につながる可能性が出てくるため、無料サンプルを配るというマーケティング方法もあります。
・1ヵ月サンプル品を飲んで、体がすっきりしてきたので、定期購入することにした。
・この美容液には興味があるが、肌に合うのか不安だったためサンプルを請求した。
そのほか、部品メーカーなどの製造業の分野でも、どの部品が自社商品に搭載できるかを検証するという工程があり、このときに部品メーカーに依頼する商品は「サンプル」にあたります。サンプル品で製造・検証し、量産品に搭載する部品として正式に発注するといった流れになるのが通常です。
つまり、製造分野においては、自社で検証する場合は「試作品」、顧客側の試作に使う商品として提供する場合は「見本品」となるわけです。
・Aの後継として生産予定のサンプルを検証する。
・B社のテレビに搭載する部品のサンプルを納入する。
マーケティング分野
マーケティング分野においては、市場調査(マーケティングリサーチ)をするうえで、標本調査*の対象となる人たちを「サンプル」と呼びます。そして、この対象者を選び出すことをサンプリングといいます。(標本調査*:調査対象の条件に合う人の中から対象者を選んで調査すること)
・ICカードを選ぶ際のポイントを調査するためのサンプルを選ぶ。
統計分野
たとえば、会社員がランチでどんなものを食べているのかを調査したい場合、全国民を対象にするのはかなり困難です。そのため、調査の際は一部を抜き取りますが、この「一部」に選ばれたところを「サンプル」と呼びます。
・この統計をとるうえでのサンプルは、今週中に選んでください。
飲食分野
飲食分野では、店舗で提供する飲食物の見本を、合成樹脂などの腐食しない材料で作ったものが展示されており、これを「サンプル」もしくは「食品サンプル」と呼んでいます。そのほか
店舗内においては、新しいメニューの試作品をつくることがありますが、これも「サンプル」ということになります。
・店頭のサンプルが美味しそうだったので、ステーキランチを食べることにした。
「サンプル」の類語・言い換え
「サンプル」を日本語に言い換える場合は、次の言葉が使えます。シーンに応じて適切と思われるものを選んでみてください。
・見本
・手本
・標本
・代表例
・基準
・例文
・ など
・このサンプルをもとに、自分なりの文章を考えてみましょう。
・この例文をもとに、自分なりの文章を考えてみましょう。
また、類語となるカタカナ用語としては「ダミー」や「モックアップ」があります。
ダミー
「ダミー」とは、「本物に見せかけたもの」「模造品」「見本品」を意味します。サンプルの中でも、食品サンプルは本物ではなく「見せかけ」なので「ダミー」にあたりますが、化粧品や部品の場合は本物を使うため「ダミー」とはことなります。
また、本物と同じ仕様で作られた見本品を「ダミーサンプル」と呼ぶ場合があるので、あわせて覚えておくと便利です。
モックアップ
「モックアップ」とは、「本物そっくりの見本品」のことをいいます。一番わかりやすい例としては、携帯電話ショップに置いている、実機そっくりの見本品です。重さ、大きさ、持った感触などは実機そのままで、画面は動かない写真のようなものが貼りつけられているものがありますよね?これが「モックアップ」です。
各分野の「サンプル」を正しく理解しよう
「サンプル」は、とても身近な言葉で日常でも当たり前に使っていますが、分野ごとにニュアンスや指すものが異なることがわかったと思います。今回登場した「サンプル」という言葉が何を表すのかを正しく解釈できるよう、それぞれの意味をきちんと覚えておきましょう。