「堪える」とはどんな言葉?
「堪える」は、「我慢する」「それをする能力がある」など、いろいろな意味をもつ言葉です。
類語は、「辛抱」「耐え忍ぶ」「堪忍」「値打ちがある」。
英語で表すときは、「endure」「stand up to ~」「be equal to 〜」などの表現を使います。
「堪える」とはどんな意味?読み方は?
「堪える」には、「こたえる」「こらえる」「たえる」の3つの読み方があり、どの読み方をするのかによって意味が変わります。
それぞれの読み方での意味を確認しておきましょう。
「堪える(こたえる)」の意味
「こたえる」と読むときの「堪える」は、次の意味になります。
②耐え続ける。保つ
「堪える(こたえる)」は、「我慢し続けているけれど耐えきれないほど苦しい状況」や、「なんとか我慢し続けているけれどこれ以上は耐えられない」の意味で使われることが多いです。
「堪える(こらえる)」の意味
「こらえる」と読むときの「堪える」は、次の意味になります。
②感情などを、抑えて外にあらわさない
③外から加えられた力に耐える。持ち堪える
④堪忍する。許す
「堪える(こらえる)」は、「痛みや苦しみ、不快な気持ちなどを我慢し続ける」の意味を表します。「堪える(こたえる)」に似ていますが、「堪える(こらえる)」は「自分の感情を外に出すことを抑える」のニュアンスが、意味の中心になっています。
また、「堪える(こらえる)」は人に対してのみ使う言葉です。
「堪える(たえる)」の意味
「たえる」と読むときの「堪える」は、次の意味になります。
②外部から加えられる強い力や作用に対しても、屈したり影響を受けたりせず、抵抗する力をもつ。持ち堪える
③それをする能力がある。その力量がある
④性能や力などがなくならずにある
⑤わざわざそうするだけの価値がある。~に値する
「堪える(たえる)」は、「外からの力に抵抗し持ち堪える」というニュアンスをもつ言葉。「しんどいことを我慢して、なんとか成し遂げる」という意味で使われます。
また「堪える(たえる)」には、「堪える(こたえる)」と「堪える(こらえる)」にはない、「優れている」のニュアンスもあります。
「堪える」と「耐える」の違い
「耐える」は「たえる」と読みます。負担や不満、苦しみを「我慢する、こらえる、持ち堪える」の意味をもつ言葉です。
「堪える」にとてもよく似ている言葉ですが、「堪える」とは使い分けされることが多いです。
「耐える」を使う場合
「たえる」という言葉を「我慢する、こらえる、持ち堪える」の意味で使う場合、「耐える」を使用するのが一般的です。
『「堪える」とはどんな意味?読み方は?』の見出しで解説したように、「堪える」にも「我慢する、こらえる、持ち堪える」のニュアンスがあります。
そのため、「我慢する、こらえる、持ち堪える」の意味を表すときに、「堪える」を使っても間違いではありません。
しかし、「我慢する、こらえる、持ち堪える」の意味での「たえる」では、「耐える」を使用する人のほうが多いため、「堪える」ではなく「耐える」を用いることをおすすめします。
「堪える」を使う場合
「堪える(たえる)」には、「我慢する、こらえる、持ち堪える」の意味合いのほかに、次のように「優れている」のニュアンスを表す意味もありますよね。
④性能や力などがなくならずにある
⑤わざわざそうするだけの価値がある。~に値する
「耐える」にはこれらのニュアンスがないため、③~⑤の意味で「耐える」を使うことはできません。
「優れている」のニュアンスのときは、「堪える(たえる)」を用いてください。
まだ使用に堪えられる:まだ使用できるだけの性能がある
読むに堪える:わざわざ読むだけの値打ちがある
聞くに堪えない:聞き苦しくて、聞いていられないさま。聞く価値がない
「堪える」と「応える」の違い
「応える」は「こたえる」と読みます。
②外からの刺激を身に強く感じる
③反響する。こだまを返す
②の「外からの刺激を身に強く感じる」の意味で使われている「応える」と、「耐える。こらえる。がまんする」の意味の「堪える」は意味が近いので、どちらを使用するか迷うことがあります。「堪える」と「応える」の使い分け方をみておきましょう。
「応える」を使う場合
「堪える」と「応える」の使い分けでよく間違えられる言葉に「骨身にこたえる」があります。「骨身にこたえる」は、「骨身に堪える」と書かれることもありますが、これは間違いです。
「骨身にこたえる」は、「全身に強く感じる。心に強く感じる。骨身にし みる」という意味なので、言葉の意味を考えると「骨身に応える」が正しいことがわかります。
同じように「心にこたえる」も、「心に強く響く、痛切に感じ入るものがある」という意味なので、「心に堪える」ではなく「心に応える」が正解です。
暑さ、寒さの話は「応える」が多い
暑さ、寒さの話の場合は、「堪える」と「応える」のどちらも使用できますが、「応える」が使われることが多いです。
「寒さが応える」という場合、「強烈な寒さを身に強く感じる」という意味。「寒さが堪える」という場合は、「寒さが我慢できないほどでこれ以上は耐えられない」というようなニュアンスになります。
熱中症や低体温症など、体調不良一歩手前の極限状態であることをいいたいわけではなく、暑さ、寒さを強く感じているといいたい場合は、「応える」のほうがふさわしい表現です。
「堪える」の使い方を例文で学ぼう
「堪える」の意味がわかったら、次は言葉の使い方を例文でイメージしてみましょう。
・身に堪える暑さの猛暑日や酷暑日が続いている。
・恩師との別れに涙を堪えることができなかった。
・隣で繰り広げられる上司と後輩のやり取りが、まるでコントのようで笑いを堪えるのに必死だった。
・まったく気に入らないやり口だが、今回だけは堪えてやろう。
・君ならその任に堪えることができると判断したから推薦したんだ。自信を持ちなさい。
「堪える」の類語・言い換え表現
「堪える」の類語は、「辛抱」「耐え忍ぶ」「堪忍」「値打ちがある」です。それぞれの意味と使い方をおさえておきましょう。
つらいことや苦しいことを我慢すること。こらえ忍ぶこと
【例文】
仕事の大変さに辛抱しきれず辞めていく新人が多い。
困難や辛苦をじっと辛抱、我慢すること
【例文】
原料の価格高騰にもうけを削りながら耐え忍んできたが、そろそろ限界だ。
①怒りを抑えて、人の過ちを許すこと。勘弁
②肉体的な痛みや苦しい境遇などをじっとこらえること。我慢すること。忍耐
【例文】
今日のところはこれで堪忍してやる。
価値がある
【例文】
聞く値打ちのある情報を提供する。
「堪える」は英語だと?
「堪える」にはたくさんの意味があるため、それらをひとことで表せる英単語はありません。英語で表すときは、次のような表現を使用します。
stand up to ~ :~に抵抗する、~のいうことを拒否する、~に耐える、~に持ち堪える
withstand:抵抗する、逆らう、我慢する、耐える、持ち堪える、やり過ごす
bear:辛抱する、我慢する、耐える
keep from ~:(~することを)避ける、防ぐ、抑制する
resist:我慢する、こらえる、耐える、侵されない、抵抗する
suppress:(うめき・あくび・感情を)抑える、かみ殺す
forgive:許す、大目に見る、容赦する、免除する
be fit for ~:務まる、~に適任である
be equal to 〜:務まる、〜に対応できる、~するだけの能力がある
It’s worth it:それだけの価値がある
「堪える」を英訳するときは紹介したこれらの表現から、伝えたいニュアンスに近いものを選んで使ってください。
【おまけ】「堪える」の左側を「さんずい」に変えると?
「堪える」の左側を「さんずい」に変えた「湛える」は、「たたえる」と読みます。
②ある表情を浮かべる。感情を顔に表す
「堪える」とはまったく異なる意味の言葉になってしまうので、書き間違えないように気をつけてください。
「堪える」は注意して使おう
「堪える」は、「こたえる」「こらえる」「たえる」の3つの読み方があり、それぞれの意味も異なります。
「堪える」の意味を考えるときは、読み方と文脈から適した意味を推測しなければなりません。
また、「堪える」を使用するときは、「耐える」「応える」との使い分けを考える必要があります。
「堪える」の意味や使い方をしっかりと覚えておき、正しく使えるようになりましょう。