「年商」とはわかりやすくいうとどんな言葉?
「年商」の意味は、「企業や個人事業主が、1年間に本業として取り扱う商品やサービスを売って得た合計金額」。
類語は「年間売上高」です。
英語で表すときは、「annual turnover」や「annual business」「yearly turnover」を使います。
「年商」とはどんな意味?読み方は?
「年商」は「ねんしょう」と読み、次の意味で使います。
「年商」は、1年間に商品やサービスを売って得た金額を合計しただけのもの。商品の仕入れ代金や人件費、広告宣伝費などのビジネスにかかった費用や、法人税などの税金は引かれていない金額です。そのため、「年商」だけではその企業が儲かっているのかどうかはわかりません。
「年商」は消費税込み、消費税抜きどっち?
「年商」で表される「1年間に本業として取り扱う商品やサービスを売って得た合計金額」は、消費税込みの場合も消費税抜きの場合もあります。
これは、会社の会計処理で売上げ計算をするときに、消費税込みにするか消費税抜きにするかは、企業が自由に選べることになっているためです。
「年商」と「損益計算書」
損益計算書は、企業が年度末に作成する決算書のうちのひとつで、企業に1年間に「入ってきたお金」と「出ていったお金」を示したものです。
この損益計算書には、企業が本業で稼いだお金の合計が、「売上高」という項目で表記されています。
「売上高」は、本業によって会社に入ってきた「総売上高」から「売上値引」や「返品」「売上割戻」の金額を引いたもの。商品やサービスを売るためには、商品の仕入れ代金や製造費、人件費などの費用がかかりますが、「売上高」はこれらの費用を引いていません。
この損益計算書の「売上高」は、「年商」と同じ金額になります。
「売上割戻」とは
「売上割戻」は、一定期間に特定の取引先や一般のある購入者に、多額または多量に商品やサービスを売ったときに、あらかじめ取り決めていた割合の金額の支払いを免除、または払い戻しすることをいいます。
例えば、1個290円の商品を2個まとめて買った場合2つで500円にするという取り決めがあったとき、本来は580円になるところ500円で売ることになります。
差額の80円が「売上割戻」です。
「年商」と間違いやすいビジネス用語
「年商」と間違いやすいビジネス用語に、「売上高」「利益」「年収」があります。これらの言葉と「年商」は意味が違うため、言い換えには使えません。それぞれの意味をしっかりおさえておきましょう。
「年商」=「売上高」ではない
『「年商」と「損益計算書」』の見出しで解説したように、損益計算書の「売上高」は1年間の「売上高」のため、「年商」とイコールです。
しかし、本来の「売上高」の意味は「一定期間に獲得できた売上の総額」のため、1年間の売上だけでなく、1ヶ月や1週間、1日などいろいろな期間の売上に対して使われます。
損益計算書の話ではないところで「売上高」といった場合は、「年商」と同じ意味にならないケースもあるので注意してください。
「年商」=「利益」ではない
「利益」は、企業の儲けのこと。「利益」にはいくつか種類があり、本業で得た「利益」だけに限定して考えても、「売上総利益」と「営業利益」の2種類があります。
「売上総利益」は、「1年間に本業として取り扱う商品やサービスを売って得た合計金額」である「年商」から、商品を仕入れるために支払った代金や、製品の製造にかかった費用を引いた金額です。
「営業利益」は、「売上総利益」から商品やサービスを販売するためにかかった費用と、企業がビジネスを行うために販売とは直接関わらない部分でかけた費用を引いた金額。広告宣伝費、保管費、運賃、人件費、事業所や事務機器にかかる費用、光熱費、水道費、通信費などが差し引かれます。
最終的に企業がどのくらい儲けたかは、「売上総利益」に本業以外から得られた「利益」を加減し、さらに法人税などの税金を差し引いて求めます。こうして求められた最終的な企業の儲けは、「当期純利益」と呼ばれます。
「年商」のインパクトに惑わされないで
「年商」が大きくても、ビジネスにかかる費用が大きければ「利益」はたいして残りません。そして、「利益」が小さければ、その企業は儲かっていないということになります。
例えば、年商10億円の企業であったとしても費用や税金に9億円かかっていれば、手元に残る最終的な「利益」は1億円です。年商10億円といっても、10億円儲かっているわけではありません。
「年商」のインパクトに惑わされないように気をつけてください。
「年商」=「年収」ではない
「年収」の意味は、「個人が1年間に得た総収入」。会社員の場合は、勤めている企業から1年間に支払われる金額の合計のことで、税金や社会保険料などが引かれる前の金額です。
個人事業主のケースでは、「年商」からビジネスにかかった費用を引いた金額が「年収」になります。
「年商1億円」の会社の社長は、1億円の年収をもらっている訳ではないので、勘違いしないようにしましょう。
「年商」の活用法
「年商」だけでは企業の儲けはわかりませんが、「年商」は意味ない数字というわけではありません。「年商」の活用法もおさえておきましょう。
「年商」の活用法①:企業アピール
「年商」は、事業規模がどのくらいの大きさなのかを示す目安として使われる場合が多いです。
「年商」が大きいと事業規模が大きい企業であるといえます。そして、事業規模が大きいほど、ビジネスに成功している企業であると周囲から見られるようになり、会社としての信用力が高くなります。そのため、「年商」は企業のアピールポイントとしてよく使われます。
「年商」の活用法②:経営分析
企業全体の「年商」に対する取引先ごとの「年商」の割合を調べることで、ビジネスの安全度を計ることも可能です。
「年商」の大部分がひとつの取引先で占められている場合、その取引先が倒産してしまうなどで取引がなくなると、自社のビジネスも立ち行かなくなってしまいます。
「年商」を分析しバランスの悪さが発覚したら、リスクを分散させるために取引先を開拓する必要があります。
「年商」の使い方を例文で学ぼう
「年商」の意味や活用法がわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・2021年度の年商は10億円だった。
・都道府県別に企業の年商の平均をまとめたランキングが発表された。
「年商」の類語・言い換え表現
「年商」の類語は「年間売上高」です。「年商」と同じ意味なので、言い換え語として使えます。
「年商」は英語だと?
「年商」は英語だと、次のように表されます。
annual business:年商、年間事業
yearly turnover:年商、年間売上高
例えば、「当社の年商は10億円です」は、上記の表現を使って「Our company’s annual turnover are 1 billion yen.」のように英訳できます。
「年商」の意味を正しく理解しよう
「年商」は、「企業や個人事業主が、1年間に本業として取り扱う商品やサービスを売って得た合計金額」を意味するビジネス用語です。
「売上高」や「利益」「年収」と勘違いされやすいので、それぞれの意味をしっかり頭に入れておき、区別して使えるようになりましょう。