ファブレスとは?ファブレス経営ってなに?意味、使い方、類語、関連語も紹介

「ファブレス」とは「製造施設をもたない製造業」のこと

製造業としての事業を営んでいる企業の多くは、自社工場を保有して生産を行っているところが多いです。しかし、製造工程をすべて外部に委託するビジネスモデルがあり、それを「ファブレス」といいます。

本記事では、「ファブレス」の意味や使い方のほか、導入にあたってのメリット・デメリット、関連語、類語、言い換え表現などについてもわかりやすく紹介します。

「ファブレス」の英語は「fabless」

「fabless」は、「fab=工場」と否定の接尾語「less」を組み合わせた言葉で、「工場なしの」を意味する単語です。

・fabless company(工場をもたない企業)
・fabless manufacturer(工場を持たない製造業者)
・fabless chip company(工場を持たないチップ会社)

なお、「fab」も略語表現であり、正式名称は「fabrication facility=工場、加工施設」です。そして、これも熟語で、それぞれの単語の意味は次のとおりです。

・fabrication=制作、製造
・facility=施設、設備、機関

日本のカナカナ用語での「ファブレス」とは

カタカナ用語の「ファブレス」は、単体ではなく、「ファブレス企業」「ファブレスメーカー」「ファブレス経営」といった使い方をすることが多いです。

なお、ファブレスは、アメリカで半導体の設計に特化した企業で、製品の生産を日本企業に委託したのが最初だといわれています。

「ファブレス」導入のメリット・デメリット

自社で製造を行う場合、生産場所となる広大な土地、生産設備、設備管理費、工場の人件費など、莫大な費用がかかります。この費用削減のために、ファブレスの手法はとても有効です。しかし、メリットばかりではないため、導入を検討する際は、デメリットもしっかりと把握しておく必要があります。

ファブレス導入のメリット

◆製造を外部委託することで、開発や営業に集中することができる。
◆製造にかかるイニシャルコストやランニングコストを抑えられる。
◆製造ラインや商品管理にかかる人件費の削減が可能。

ファブレス導入のデメリット

◆情報漏洩の危険がある。
◆製品の品質管理がしにくい。
◆製造における技術力の維持や管理がしにくい。

「ファブレス」の使い方・例文

「ファブレス」がどういったものかが理解できれば使い方は難しくありませんが、参考までに例文を少し紹介しておきます

例文

・工場建設や運営の予算がどうしても確保出来そうにないため、ファブレス経営で事業を始めることになった。
ファブレスメーカーであるA社の下請けをすることになった。
・当社はファブレス企業として事業を行ってきたが、長年製造の下請けとして契約していたB社を、このたび完全子会社化することになった。

「ファブレス」と一緒に覚えたい関連用語

「ファブレス」をより深く理解するにあたり、ぜひ一緒に覚えておきたい関連語がいくつかあります。「ファブレス」と深い関係のある言葉も含まれているので、チェックしておきましょう。

ファウンドリ

ファウンドリは英語で「foundry」と表記し、「鋳物工場」「鋳造技術」「鋳物類」「半導体製造工場」という意味をもつ単語です。しかし、日本では、主にファブレス企業から製造を受託する企業を指しています

ファブレス化

ファブレス経営にしたり、ファブレス企業になったりするなど、ファブレスの手法を取り入れることを「ファブレス化」といい、次のような使い方をします。

例文

・生産技術の高いC社と提携し、ファブレス化を進めていくことになりそうだ。
・生産施設維持の関係でファブレス化する企業が増えている。

「ファブレス」の類語・言い換え

「ファブレス」を日本語で言い換えたい場合は、「製造施設をもたない製造業」「工場をもたないメーカー」といった表現になりますが、カタカナ用語の類語としては「アウトソーシング」や「OEM」があります。

「ファブレス」と「アウトソーシング」の違い

「アウトソーシング」とは、「アウト=外部」と「ソーシング=調達」を組み合わせた言葉で、業務を遂行するために必要な人材やサービスを、外部から調達することを意味します。「ファブレス」は生産を依頼する企業と請け負う企業はそれぞれで独立経営となりますが、「アウトソーシング」は、外部の人やサービスの力を借りて自社の運営を行うといった点で違いがあります。

「ファブレス」と「OEM」の違い

「OEM」は「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略で、自社製品を他社のブランドとして供給したり販売したりすることを指す言葉です。外部企業が生産を行っていることだけを見れば「ファブレス」と同じだというイメージが沸きやすいですが、開発は行っている「ファブレス」とは形態が異なります。

「OEM」のわかりやすい例としては、自動車があります。街中を走っている車を見ていると、時々同じような車なのに、別会社のエンブレムがついているのに気付くことがありませんか?

ダイハツのウェイクは、トヨタからはピクシスメガという名前で、スズキのワゴンRは、マツダからはフレアという名前で販売されています。ほかにもいろいろなOEM車があるので、興味のある人はこちらのサイトをチェックしてみてください。
(情報元:中古車のガリバー norico OEM車の定義・車種一覧

「ファブレス」に向いている業種とは?

日本にはさまざまな業種のメーカーが存在しますが、すべての製造業が「ファブレス」に向いているとはいえません。どちらかといえば、頻繁に新しい商品との入れ替えがある、アパレル業界、食品業界、おもちゃ業界、半導体業界だといわれています。

商品サイクルが早いということは、常に開発に力を注いでいなければならず、生産面を外部に委託することで、コストも抑えられるというわけです。

ファブレス化をする場合はデメリットも必ず把握しておこう

ファブレス化は、工場の運営、人件費、材料管理など、製造に関わるコストを大幅に抑えられるメリットがあります。しかし、前述したようなデメリットもあるため、十分に検討を重ねた上で進めていくことをおすすめします。