ヒエラルキーとはどんな言葉?意味や使い方、カーストとの違いもわかりやすく解説

ヒエラルキーとはどんな言葉?

ヒエラルキーの意味は、「階層制」「階級制」です。

ヒエラルキーを言い換えできるカタカナ語はありません。日本語の類語は、「序列」「上下関係」「権力構造」「階層」。対義語は「ホラクラシー」です。

ヒエラルキーを英語で表すときは、「hierarchy」を使ってください。

ヒエラルキーとはどんな意味?

ヒエラルキーは次の意味をもつカタカナ語です。

ヒエラルキー
・階層制
・階級制

上位、下位の関係によって順序が決められた、ピラミッド型の段階的組織構造がヒエラルキー。人間社会や自然界に関する話で使われることが多い言葉です。

例えば、会社の組織図を考えると、社長をトップに据えた次のようなヒエラルキーが形成されるのが一般的。

代表取締役社長→専務取締役→常務取締役→本部長(事業部長)→部長→次長→課長→係長→主任→一般社員

矢印を下っていくほど組織のなかでの位が低くなります。それぞれの階級に属する人数は下に行くほど多くなるため、末広がりのピラミッドのように見えます。自然界では、食物連鎖の構造が典型的なヒエラルキーの例です。

ヒエラルキーは、ヒエラルヒーと表記されることもあります。

ヒエラルキーは英語だと?

ヒエラルキーを英訳するときは、「hierarchy」を使います。「hierarchy」は「ハイァラーキ」と発音します。

hierarchy
・階層型(ピラミッド型)組織、階層制度、階級制
・組織の階層(化)、序列(化)
・組織内の支配層、管理層
・階層化された聖職者制度、聖職階級制度、聖職政治
・物事の序列、優先度
・中世神学の天使位階、天使の階級
・生物の分類体系

「hierarchy」に聖職階級制度など宗教に関する意味が含まれているのは、「hierarchy」の語源が「司祭長による支配」という意味の古代ギリシャ語、「ἱεραρχία(ヒエラルキア)」だったためです。

また、日本にはドイツ語の「Hierarchie(ヒエラルヒー)」として言葉が伝わってきたため、英語ではなくドイツ語の発音に近い「ヒエラルヒー」や「ヒエラルキー」とカタカナで表記されています。

ヒエラルキーとカーストの違い

ヒエラルキーとカーストは、似た意味をもつ言葉ですが、両者には明確な違いもあります。カーストについてもくわしくみてみましょう。

カーストとは?

カーストは、長い歴史のなかで形成されたインド特有の身分制度です。

宗教的な考え方をもとに、始まりはバラモン(司祭者)をトップに、クシャトリヤ(王族・士族)、バイシャ(庶民)、シュードラ(隷属民)の順に身分が下がる4階級に分かれていたと考えられています。そこから、混血や職業の分化によって複雑に細分化され、現代では2,000〜3,000の階層が存在します。

カーストは差別的な制度で、各カーストごとに職業・交際・通婚・慣習などのルールが厳しく定められており、異なるカーストどうしでは結婚や飲食が禁止されています。また、カーストの階級は世襲されます。現代になりインド憲法でカーストは禁止されましたが、実際にはいまだに影響が強く残っているといわれています。

ヒエラルキーとカーストは区別して使おう

ヒエラルキーは、カーストと同じく地位によって階層が分かれた、段階的組織構造を意味する言葉です。しかし、そこに差別の考え方はありません。階層によって、そこに属するものがもっている力や権力の大きさは変わりますが、上の階層だから貴く下の階層だから卑しいということはないのがヒエラルキーです。

また、ヒエラルキーの階層は流動的で、下の階層から上の階層へのし上がっていくことも可能。生まれで人生のすべてが決まってしまい、一生身分が変わることがないカーストとは違います。

そのため、ヒエラルキーとカーストはニュアンスの違いを正しく理解し、使い分けする必要があります。

ヒエラルキーの使い方を例文で学ぼう

ヒエラルキーの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・うちの会社の社長は半分引退しているようなものだから、実質的にヒエラルキーの頂点に立っているのは社長の息子である専務だ。
・会社のなかには厳然たるヒエラルキーが存在していたが、テレワークによってそれを意識せずに働けるようになった。
・とびぬけた数値が並ぶカタログスペックからも、製品間のヒエラルキーの差は明らかだ。
・この買収によって業界のヒエラルキーは大きく変化するだろう。

ヒエラルキーの類語・言い換え表現

ヒエラルキーを言い換えできるカタカナ語はありません。言い換えが必要なときは、日本語の「序列」「上下関係」「権力構造」「階層」を使用してください。

序列
【意味】
・順序をつけて並べること。順に並ぶこと。
・一定の基準に従って並べた順序。きまった順序。

【例文】
コロナショックにより業界の序列が激変した。

上下関係
【意味】
地位や身分、年齢などによって生じる、上位の者と下位の者との関係

【例文】
バス業界は上下関係が厳しい業界といわれている。

権力構造
【意味】
組織を成り立たせているさまざまな階級の人々がもつ権力の関係性

【例文】
世代交代により会社の権力構造が大きく変わった。

階層
【意味】
・社会を形づくるいろいろな生活層。社会のなかでのいろいろな階級
・建築物の階の上下の重なり

【例文】
年齢階層別にアンケートを実施する。

ヒエラルキーの対義語

ヒエラルキーの対義語は「ホラクラシー」です。

ホラクラシーは、組織内に階級や上司、部下の関係がまったく存在しない管理体制。社長や役員はいるけれど、上層部が絶対的な決定権を持っているわけではなく、役職や肩書がないそのほかの社員にも意思決定権が与えられている組織もホラクラシーに含まれます。

例文
日本でもホラクラシーを導入する企業が増えつつある。

ヒエラルキーの雑学

ビジネスとは関係が薄いですが、ほかの分野でもヒエラルキーが重要な言葉として使われています。雑学としてどのような言葉があるのかみてみましょう。

ヒエラルキーコントロール

ヒエラルキーコントロールは、医療業界におけるリスクマネジメントの概念のひとつです。

看護師をはじめとする医療従事者は、院内感染や危険な薬剤の使用など、患者の治療をすることで自身の健康にリスクが生じてしまいます。この職業上の危険性を排除または最小限にするための対策や管理が、ヒエラルキーコントロールです。

教室内ヒエラルキー

教室内ヒエラルキーは、現代の日本の学校内部で生徒の間に自然発生する人気の度合いを表す序列

運動神経や学力など努力で挽回可能な能力ではなく、「自分の意見を押し通す」コミュニケーション能力の優劣によって序列が決まるのが特徴です。上位の生徒が下位の生徒を軽視する傾向があるため、いじめの原因のひとつとして問題視されることもあります。

教室内ヒエラルキーは、スクールカーストとも呼ばれています。

ヒエラルキーを正しく理解しよう

ヒエラルキーは会社や学校など、身の回りにいくらでもあるため、社会で生きていくなら逃れることはできません。必然的に耳にする機会も多くなるのでしょう。

また、ヒエラルキーと意味が似ている言葉にカーストがありますが、カーストには差別的な意味合いがあるので、この2つは区別して使う必要があります。

ヒエラルキーの意味を正しく理解しして使うようにしましょう。