「拝啓」とはどんな言葉?
「拝啓」は、手紙の始めに書く頭語。「謹んで申し上げる」という意味の言葉です。
類語は、「拝呈(はいてい)」「急呈(きゅうてい)」「復啓(ふくけい)」「謹呈(きんてい)」。
英語では「Dear Mr.」「Dear Ms.」などを使います。
「拝啓」の意味とは?
「拝啓」は「はいけい」と読み、次の意味で使います。
「拝啓」は、言葉を作っている漢字の意味を考えると、ニュアンスがわかりやすくなります。
「拝」と「啓」は、それぞれ次の意味をもっています。
②官をさずかる
③自分の動作に添える謙譲語
②あける。先ばらいする
③もうす。「言う」の謙譲語
「拝啓」は、「拝」の「おじぎをする」と「啓」の「もうす」の意味が、組み合わされて言葉ができています。
江戸時代の武士が主君に対して何かを上奏するときには、座礼し頭を下げたまま言葉を発するのが正しい作法といわれています。「拝啓」はこの武士の作法のように、「お辞儀した状態でへりくだってあなたにものを申します」という意味。相手に敬意を払っていることを表す言葉です。
「拝啓」は「敬具」とセットで使うことが多い
丁寧な手紙を書くときは、冒頭に頭語を書いて始まり、文末に結語を記して終わるのが約束事になっています。頭語にどの言葉を使うかによって、結語に用いるフレーズがきまってくるため、セットで覚えておきましょう。
頭語に「拝啓」を使った手紙は、結語に「敬具(けいぐ)」を用いることが多いです。
「拝啓」で書き始めた手紙の場合、「敬具」のほかにも「敬白(けいはく)」や「拝具(はいぐ)」を結語として使えます。
「拝啓」を使うのはどんなとき?
「拝啓」は、一般的な手紙をこちらから送るときに使います。一般的な手紙とは、そこそこの丁寧さが求められる手紙のことなので、普段から敬語で会話する関係性にある相手に送る手紙や、改まったビジネス文書をイメージしてください。
面識のない相手に手紙を出すときにも使用できます。
「拝啓」を使わないのはどんなとき?
「拝啓」は、相手への敬意を表す言葉なので、親しい上司や友達に出す手紙に使うには丁寧すぎます。この場合の頭語は「前略」が向いています。
「拝啓」はこちらから手紙を送るときに用いる言葉のため、相手から来た手紙に返信するケースには使用しません。代わりに「復啓(ふくけい)」を使います。
急ぎの用件にあたるお見舞いの手紙のときも「拝啓」は向きません。頭語を省略するか、緊急の場合の頭語「急呈(きゅうてい)」を用います。
また、次に挙げるケースでは、「拝啓」だけでなくほかの頭語や結語も使用せずに手紙を書きます。
・相手に負担をかけさせないことが重要なお悔やみの手紙
・年賀状、寒中見舞い、暑中見舞いといった季節の挨拶の手紙
「拝啓」の使い方を例文で学ぼう
手紙の冒頭に「拝啓」を記した次には、季節に応じた挨拶言葉や相手を気遣う文言などを続けて書きます。「拝啓」の使い方を例文でイメージしてみましょう。
「拝啓」の類語・言い換え表現
「拝啓」のほかにも手紙の頭語はたくさんあります。ビジネスでよく使われるものをおさえておきましょう。
【例文】
拝呈 入梅の候。皆様におかれましてはお元気でご活躍のこととお喜び申し上げます。
【結語】
敬具、敬白、拝具
【例文】
急呈 配達された商品に不備があったとのこと、誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます。
【結語】
草々、不一(ふいつ)、不備(ふび)
【例文】
復啓 このたびはご丁寧なお手紙を頂きまして、ありがとうございました。
【結語】
敬具、拝答(はいとう)、敬答(けいとう)
【例文】
謹呈 暑気厳しき折柄、貴社ますますご盛栄のことと拝察いたしております。
【結語】
謹言(きんげん)、謹白(きんぱく)、敬白(けいはく)
「拝啓」は英語だと?
「拝啓」などの手紙の頭語は、英語では「Dear 〇〇」の形で表します。
女性への手紙の場合:「Dear Madam」「Dear Miss」「Dear Mrs.」「Dear Ms.」
会社などへの手紙の場合:「Dear Sirs」
誰に宛てた手紙なのかによって、表現を使い分けてください。
【おまけ】娯楽分野での「拝啓」
「拝啓」という言葉は、音楽や小説など娯楽の分野でも使われています。あなたの興味がある「拝啓」がみつからないか、息抜きに読んでみてください。
「拝啓」をうまく使おう
メールやSNSでやり取りするのが当たり前になり、手紙を書く機会は減っています。しかし、ビジネスでは丁寧な形式で手紙を書かなければならない場合もあります。
そんなときに「拝啓」を正しく使えないと困ってしまいますね。「拝啓」の意味や使い方を頭に入れておき、必要なときにうまく使用できるよう備えておきましょう。