「ガバナンス」とは「統治」や「管理」のこと
「ガバナンス」とは、組織に関係するメンバーが、それぞれの知識や見識を統合させながら意思決定をし、定めたルールをもとに、組織をまとめあげ統治や管理をするシステムのことをいいます。
簡単にいうと、実務をこなしている従業員を統治・管理するのが経営陣であるならば、経営陣が不正なく業務をしているかを統治・管理する仕組みが「ガバナンス」です。
本記事では、「ガバナンス」の正しい意味や会話内での使い方だけでなく、関連語、言い換え表現などについてもわかりやすく解説します。
「ガバナンス」の英語は「governance」
ガバナンスは英語で「governance」と表記し、次のような意味をもつ単語として使われています。
・(学校・企業などの)管理、運営
・(国家が国民に行う)支配、統治
・(義務などの)規定
・(法令などの)適用
使い方の例もわかりやすいものを紹介しておきます。
・business management(経営管理)
・governance of bank management(銀行経営の管理)
・strengthen governance in~(~におけるガバナンスを強化する)
・ strengthen governance standards(統治水準を強化する)
日本語においての「ガバナンス」とは
「ガバナンス」の意味は「統治」や「管理」ですが、日本語として使われる場合は、主に政界や企業において、「経営陣を管理・監視するしくみ」「統治するしくみ」を指すことが多いです。
ビジネスシーンでは「コーポレートガバナンス」が使われる
ビジネスシーンにおいては、「ガバナンス」よりも主に「コーポレートガバナンス」の形で使われており、「ガバナンス=コーポレートガバナンス」と解釈されることが多いです。
「コーポレートガバナンス」は、日本語で「企業統治」と呼ばれています。会社は、経営者の所有物ではなく、資本を出している株主のものであるという根本的な考えがあり、株主やそのほかの利害関係者の利益は最大限確保しなければなりません。
そのためにも、経営者が不正や不利益になる行為をしていないか、社外の管理者によって監視・統治するシステムが必要です。つまりこの仕組みが「コーポレートガバナンス」というわけです。
企業以外の組織に用いられる場合もある
「コーポレートガバナンス」は、「企業統治」というように、企業に対して用いられますが、「ガバナンス」は、企業以外の組織体にも使われることがあります。
グローバルガバナンス
世界で起こるさまざまな問題に対し、一つの国では対処しきれない問題を、対象の地域や国を越えて解決していこうという、政治的相互作用を「グローバルガバナンス」といいます。
インターネットガバナンス
インターネット業界を正しく運営していくうえで欠かせない規則や仕組みなどを検討し、決定したことを実施する体制やシステムを「インターネットガバナンス」といいます。
また、「ITガバナンス」という言葉も存在しますが、これは、主に会社運営のために利用するITについて監視・統治することを指しており、どちらかといえばコーポレートガバナンスから派生した言葉だとされています。
「ガバナンス」の使い方・例文
「ガバナンス」を会話や文章の中で使う際は、いくつかの決まったフレーズがあります。では、比較的よく使われる形の例文をいくつか紹介しておきます。
ガバナンスを効かせる/ガバナンスが効く
「ガバナンスを効かせる」は「監視・統治されている」、「ガバナンスが効く」は「監視・統治する」といった意味で使われます。
・ここ数年、大きな問題ばかり起こしているので、もっとガバナンスが効かせる必要があるのではないだろうか。
・この企業はしっかりとガバナンスが効いていると改めて感じた。
ガバナンス強化
「ガバナンス強化」は、言葉どおり、監視・統治する仕組みを強化させるという意味です。
・今年度より社外監査役を置いたおかげでガバナンス強化が実現した。
ガバナンス体制
代表取締役はどのように選出するか、取締役は誰が選任するかなど、内部統制の仕組みをシステム化したものが「ガバナンス体制」です。
・当社のガバナンス体制を、わかりやすく図解してみました。
(参考:mercari Corporate Gvernance ガバナンス体制)
「ガバナンス」の関連語
日本語の中には、「ガバナンス〇〇」といった関連語が存在します。「ガバナンス」という言葉の意味をさらに深く理解するためにもぜひ覚えておいてください。
ガバナンスコード
ガバナンスコードは、その企業が、ガバナンスに対し正しい取り組みがされているか、外部からも明確に分かるように定められたものを指し、「コーポレートガバナンスコード」という名称で使われることが多いです。
「コーポレートガバナンスコード」は、東京証券取引所に上場する企業には提出義務があり、未提出の場合はその理由などを指摘されます。
ガバナンストークン
トークン(token)には、「しるし」や「象徴」といった意味がありますが、分野によって内容は異なります。たとえば、仮想通貨においてのトークンは「暗号資産」、そのほかの金融業界においては、「デジタルマネー」や、ネット決済に使用する「認証デバイス」を指すこともあります。
そして、「ガバナンストークン」とは、仮想通貨用語の一つで、分散型プロトコル*の運営において、関係者が投票するために必要なトークンのことをいいます。どのくらいの量のトークンを保有しているかで投票に対する影響力が異なり、多くのガバナンストークンを持っている人ほど、実装の提案を行える仕組みとなっています。(プロトコル*:コンピューター間でデータの共有が可能にするための基本的な規則。)
ガバナンスプロセス
ガバナンスプロセスとは、企業などの経営陣による情報セキュリティ統治に必要な行動を示したものを指します。これは、経済産業省の定める情報セキュリティガバナンスにおいても定義されており、以下のプロセスを示しています。
・情報セキュリティ管理
・モニタリング
・評価
・報告
・方向づけ
この場合の「モニタリング」とは、従業員の不正行為の有無をチェックするためだけにあるのではなく、会社として定めているセキュリティに関する規則が機能を確認するためにも実施される項目です。
なお、プロセスを図解したものが、経済産業省のホームページに記載されているので、詳しく知りたい人は、そちらを参考にしてください。
(データ参照元:経済産業省 情報セキュリティガバナンスの概念)
「ガバナンス」の類語・言い換え
「ガバナンス」を日本語で言い換える場合は、統治や管理を表す次のような言葉を使うことができます。
・組織統治
・全支配
・統轄
・内部統制力
・管理能力
・制御
・委任統治 など
「ガバナンス」と「コンプライアンス」の違い
「compliance=コンプライアンス」は直訳すると「法令遵守」ですが、日本においては、不正行為が発生しないよう、規則や管理体制を作ることをいいます。
「ガバナンス」は「統治」や「管理」なので、「コンプライアンス」は、「ガバナンス」を実行するための具体的な方法の一つだといえます。
「ガバナンス」と「マネジメント」の違い
「マネジメント」とは、企業など、組織の運営や経営という意味をもつ言葉です。一つの組織を管理・統治するという意味では「ガバナンス」と同じですが、わかりやすく違いを示すとすれば、次のようになります。
・正しいマネジメントが行われている企業はガバナンスが効いているといえる。
信頼される組織にするためにもガバナンス強化は重要
企業は、一度世間の信用を失えば取り戻すのはとても大変です。不正なく、信頼される組織であるためにも、しっかりとガバナンスの強化をしていきましょう。