シュールとはどんな言葉?
シュールは、「非現実的」や「奇抜」「摩訶不思議」などの意味をもつカタカナ語です。
カタカナ語でシュールを言い換えられる類語はありませんが、反対語なら「コモンセンス」や「リアル」を使うことができます。
シュールを英訳したいときには、「surreal」を用いればニュアンスを表現できますよ。
シュールについて具体的にみていきましょう。
シュールの意味は幅が広い
冒頭でシュールの意味を簡単に紹介しましたが、シュールは非常にたくさんの意味をもっている言葉です。
主なシュールの意味をおさえておきましょう。
・奇抜
・摩訶不思議
・難解な様子
・不条理な様子
・うす気味悪い
・想像の斜め上を行き過ぎていて思わず笑ってしまう
・ありえなさ過ぎて失笑を誘う
・理解できないほどばかばかしい
いろいろな意味があり、真逆のニュアンスまであってややこしく感じるかもしれませんが、非現実的という点は共通していますね。
非現実的というニュアンスで使っておけば大きく外れることはまずないので大丈夫です。
より厳密な意味でシュールを使用したいならば、現実離れしていて実際にはあり得ないようなことで、難解さと独特の個性があり、さらに不思議な感じもするものがシュールだと覚えておきましょう。
シュールの語源は「シュールレアリスム」だが意味は真逆
シュールの語源は「シュールレアリスム」です。しかし、日本で用いられているカタカナ語のシュールと語源の「シュールレアリスム」では意味が真逆なので注意が必要。
その理由は後で解説するとして、ひとまず「シュールレアリスム」の意味を確認しましょう。
「シュールレアリスム」の意味は「超現実主義」
「シュールレアリスム」は、第一次世界大戦後にフランスで起こった文学・芸術運動のこと。日本語に訳すと「超現実主義」となります。
「シュールレアリスム」とは、人間がもともと持っている無意識に価値を見いだした考え方。
理性を押しのけて無意識を現実に引きずり出すことで、戦争で行き詰まり感が強くなっている現実に新たな道を生み出そうとしたのが「シュールレアリスム」です。
「シュールレアリスム」では、今の現実を超えた現実を目指しています。
現実ではない「非現実的」という使われ方をするシュールとは真逆のニュアンスですね。
「シュールレアリスム」は「シュールリアリズム」と書くこともあります。
真逆になったのは「シュールレアリスム」が正しく伝わらなかったから
「シュールレアリスム」が日本に伝来したとき、無意識を引き出し新たな現実を生み出すという「シュールレアリスム」の目的が正しく伝わりませんでした。
目的を理解していない多くの日本人の目に「シュールレアリスム」の芸術は奇抜さを追求した作品のようにみえました。それにより、「シュールレアリスム」=「現実離れしたもの」と解釈されてしまったのです。
さらに、日本の「シュールレアリスム」は禅などの仏教的な考え方と結びつき、現実離れした独自の表現として本家フランスの「シュールレアリスム」とは異なる道をたどります。
これらのことにより、「シュールレアリスム」から生まれたシュールも現実から離れた「非現実的」という意味になったと考えられています。
シュールの英語は「surreal」
英語でシュールというときには「surreal」が使えます。
・超現実主義的の
・非現実的な
・非常に奇妙で理解し難い
・妙に現実離れした
・幻想的な
・非現実の
「surreal experience(現実離れした経験)」や「surreal video(シュールな動画)」のように用います。
英語の「surreal」も、フランス語の「シュールレアリスム」が語源です。
同じ「surreal」という単語で、現実を超えた現実を意味する「超現実的な」と現実ではないというニュアンスの「非現実的な」のどちらも表せるのは面白いですね。
英語圏の人のなかにも日本人のように「シュールレアリスム」の本質を理解できなかった人がいたのかもしれません。
シュールの使い方を例文で学ぼう!
シュールは「シュールな〇〇」という形容動詞の形で使われることが多いです。次のように使用します。
・とってもシュールなコマーシャルで一度みたら忘れられないよ。
・いつもながら超シュールな仕上がりですね。やりすぎると部長に怒られますよ。
・入社式にブリーフマンのコスプレで参加したんだって?彼女はシュールな人だなぁ。
・凧がからまった子供が空に飛ばされるシュールすぎる光景を目撃したよ。
・新作Tシャツ用にシュールかわいいイラストを描いてくれ。
・それマジな話?シュールだねぇ。
デザインなどでシュールという場合誉め言葉にもなりますが、人に対してシュールというときには注意が必要です。
「シュールな人だ」というのは、お笑い芸人でもない限りいわれていい気のする言葉ではありません。
気心が知れていて冗談の通じる相手ならば大丈夫かもしれませんが、そうでないケースでは面と向かって本人に言うのはやめましょう。
シュールの類語はない
カタカナ語でシュールを言い換えられるものはありません。「非現実的」や「奇抜」「摩訶不思議」など、シュールの日本語の意味の中から伝えたいニュアンスに近い用語を選んで使いましょう。
シュールの反対語
日本語のシュールは「非現実的」というニュアンスになります。その反対の意味は、次のカタカナ語で表せるので覚えておきましょう。
リアル:現実的であること、現実、真に迫っていること
「サステイナブルはビジネス業界のコモンセンスとなった」や「消費者のリアルな目線を忘れてはいけない」などのように使います。
【豆知識】シュールストレミングは「世界一臭い食べ物」
シュールがつく言葉に「シュールストレミング」というものがあります。
この「シュールストレミング」は「世界一臭い食べ物」とも呼ばれるスウェーデンの缶詰です。塩漬けのニシンが入っている缶詰ですが、腐敗しないぎりぎりの塩分量で作られているため缶の中でも発酵が進み、それにより発生する二酸化炭素で缶が丸く膨らんでいきます。
「シュールストレミング」は納豆の約18倍、くさやの約6倍も臭いといわれています。
興味のある方はぜひ一度試していただきたいですが、缶を開封するときは二酸化炭素と共に臭い液体が噴出するため注意が必要。食べるときには屋外で開封するのがおすすめです。
ちなみに、「シュールストレミング」はスウェーデン語。「シュール(Sur)」は「酸っぱい」、「ストレミング(strömming)」は「バルト海産のニシン」という意味です。
今日勉強してきたシュールとはまったく関係のない言葉ですが、雑学として覚えておくとどこかで役に立つかもしれませんよ。
シュールを使ってみよう!
シュールはフランス語から来ている言葉ですが、もとになった「シュールレアリスム」とは意味の異なる日本独自のワードになっています。
日本語にはすっかり浸透しており、ビジネスだけでなくプライベートの会話でもシュールを耳にする機会は多いですよね。
意味の幅が広い言葉なので、非現実的な物事を指してシュールを使用すれば大体言いたいことは伝わります。ただ、人に対して用いるときには相手の気分を害さないように気を配る必要があります。
シチュエーションを見極めて、今なら大丈夫と思えるときにシュールを使用してみましょう。何回か用いてみることで、シュールの使いどころをつかめてきますよ。