タックスヘイブンとは?タックスヘイブン対策税制って?意味、類語、やり方も紹介

「タックスヘイブン」とは「無税」もしくは「低課税」地域のこと

「タックスヘイブン」とは、税金が完全に免除されていたり、課税が著しく軽減されていたりする国や地域を指す言葉です。これは、個人の税金だけではなく、法人税についても「無税」や「低課税」になるため、多国籍企業や富裕層が税金対策で利用するケースも多いといわれています。

税金対策と聞くと悪いイメージをもたれるかもしれませんが、実際に利用している企業も存在しており、経済の話題の中に登場することも多いです。また、将来大金を手にしたときのために、概略だけでも知識として身につけておくと便利です。

「タックスヘイブン」の英語は「Tax Haven」

「タックスヘイブン」は、「tax=税」「haven=避難所」2つの単語から成る熟語で、直訳すると「税金の避難所」という意味あいになり、英語圏でも「無税もしくは低課税の地域」を指す言葉として使われています。

日本語においての「タックスヘイブン」とは

「タックスヘイブン」は、日本語では「租税回避地」「低価税地域」といい、対象地域の多くは小国や島ですが、中には名の知れた有名な国もあります。

タックスヘイブンの代表的な場所
・シンガポール
・香港
・スイス
・中米パナマ
・アイルランド
・モナコ
・ルクセンブルク
・英国領バージン諸島
・バミューダ諸島
・ケイマン諸島
・ジャージー島

「タックスヘイブン」は、税の措置の方法によって、「タックスパラダイス」「タックスリゾート」「タックスシェルター」と、大きく3種類にわけられています。

タックスパラダイス

「タックスパラダイス」を日本語で表すと「無税」、つまり、税金が全額免除される地域のことを指します。無税の内容としては、次のとおりです。

・所得税が課されない
・税金に関する他国との取り決めがない。

タックスリゾート

「タックスリゾート」とは、特定の業種に対し、税の優遇措置を取っている地域のことをいいます。たとえば、パナマでは海運業、アイルランドでは企業の特許や知的財産関連収益に対しての法人税に対して減税措置が取られています。

タックスシェルター

「タックスシェルター」とは、国外の所得に対し、非課税措置を取っている地域を指します。そのほか、租税条約を締結しているにもかかわらず、税率が低いため源泉課税がされないといった優遇措置もあります。

タックスヘイブンのメリット・デメリット

「タックスヘイブン」は租税回避の対策として活用すればメリットしかないように感じるかもしれませんが、デメリットもあるためきちんと理解しておかなければなりません。

タックスヘイブンのメリット

もっともわかりやすいメリットは、「税金が抑えられる」ということでしょう。しかし、そのほかにも次のようなメリットがあるとされています。
・確定申告が不要(個人資産・情報の秘匿性が高くなる)
・迅速に会社の設立が可能
・弱小国の経済発展につながる。

タックスヘイブンのデメリット

「タックスヘイブン」は、違法ではないものの、考え方によっては脱税をしているようなものなので、グレーゾーンに近い措置といえます。そのため、タックスヘイブンを利用している企業は、イメージが悪くなる場合があるということを忘れてはいけません。

そのほか、マネーロンダリング*として、反社会的勢力がテロや麻薬などを取り扱う拠点として利用されるといったデメリットもあります。
(マネーロンダリング*:犯罪によって得た収益を、出所や本当の所有者がわからないようにし、捜査機関による発見や検挙などから逃れようとする行為。)

タックスヘイブンのやり方

タックスヘイブンの利用の方法は、「法人の設立・移転」「ペーパーカンパニーの設立」「オフショア口座開設」の3つがあります。

法人の設立・移転

タックスヘイブンの地域に法人(本社)を設立もしくは移転をすれば、その地域の税制を受けることができます。たとえば、投資家や、店舗や事務所をもたずにインターネットビジネスを行っている人が、この方法が可能です。

ペーパーカンパニーの設立

法人登録をしているものの、事業活動を行っていない「ペーパーカンパニー」を設立し、日本の本社から送金し、その売上に対してタックスヘイブンの税制を適用するといった方法です。ペーパーカンパニーとは、いわゆる「ダミー会社」や「ゴースト会社」と呼ばれているもので、設立自体は違法ではないものの、脱税を目的とした設立は違法となります。

ただし、以前とは異なり、改正タックスヘイブン対策税制が作られ規制が厳しくなっているため、あまり有効な方法とはいえないのが現状です。

オフショア口座開設

オフショア口座とは、「海外にある銀行口座」のことです。つまり、タックスヘイブンにある銀行に口座を開設し、日本国内の銀行よりも高い利率を受けるといった方法です。

租税回避対策の「タックスヘイブン対策税制」とは?

租税回避でタックスヘイブンの国に法人を設立する企業は多いですが、その租税を回避できないような対策として「タックスヘイブン対策税制」という課税制度が設けられています。

「タックスヘイブン対策税制」を日本語でいうと「外国子会社合算税制」で、簡単に説明すると、租税回避を目的としてタックスヘイブンに設立された子会社の利益を、日本の親会社の利益と合算し、日本での課税対象とする、という制度です。ただし、すべての外国子会社が対象となるわけではありません。

タックスヘイブン対策税制の対象となるもの

◆外国関係会社(日本に居住している人、特殊関係非居住者、日本の法人により50%を超える株式を直接もしくは間接的に保有されている会社。)
◆外国関係会社の税負担の割合が20%未満の場合、法人税が存在しない国。

なお、単独または同族の株主グループで、特定外国子会社の株式を10%以上保有している日本の法人、日本に居住している個人も対象となるので覚えておきましょう。

「タックスヘイブン」の使い方・例文

多くの人は、「タックスヘイブン」についての会話をする頻度は低いと思いますが、使い方を一応チェックしておきましょう。

例文

タックスヘイブンを有効利用して利益を増やしていこうと思っている。
・日本の税金は高すぎるので、次の支社はタックスヘイブンを利用しようという声が役員の中であがっている。
・租税対策でタックスヘイブンを利用したつもりだったが、調査不足でタックスヘイブン対策税制の対象となっていた。

「タックスヘイブン」の類語・言い換え

「タックスヘイブン」を日本語で表現したい場合は次の言葉が使えます。

タックスヘイブンの言い換え表現

・課税回避地
・税金避難地
・租税回避地
・税金天国 など

タックスヘイブンの関連語

「タックスヘイブン」について調べていると、「パナマ文書」「オフショア」という言葉が目につきます。関連用語としてぜひ一緒に覚えておいてください。

パナマ文書

「パナマ文書」とは、タックスヘイブンの場所の一つである「パナマ」にある、モサック・フォンセカという法律事務所が保有していた、過去40年以上に渡る金融取引関連の内部文書のことをいいます。これらの文書の中に有名国のトップ、映画スター、スポーツ選手などの名前も載っていたこともあり、世界的に大きな話題となりました。

オフショア

オフショア(offshore)には、「沖合の」「岸から離れた」という意味があり、そこから派生してビジネスシーンでは「拠点を海外へ移転する」ことを指して使われます。

「タックスヘイブン」を利用するなら仕組みはしっかり理解しよう

世界的に見ると、日本の税金は高いとはいえないものの、可能な限り安くあってほしいものです。税金の仕組みは複雑で理解するのは難しいですが、租税対策でタックスヘイブンの利用を考える際は、デメリットも含め、内容をしっかりと把握したうえで進めるようにしましょう。