「アンチテーゼ」とは「反対意見」のこと
「アンチテーゼ」とは、哲学用語で、ある理論や主張に対し、それを否定するための理論や主張のことをいいます。簡単な言葉で表現すると「反対意見」「反対主張」「反対理論」です。哲学の分野では、「反定立(はんていりつ)」と呼ばれることもあります。
哲学用語なので、ビジネスシーンではあまり使う場面はないかもしれませんが、SNSなどでよく使われる「アンチ」のもとになっている言葉です。そのため、ニュースなどで目にしてもすぐに理解できるよう、使い方、具体例なども含めて解説していきます。
また、対義語は「アンチ」を外した「テーゼ」で、「ある事柄に対する肯定的な主張」を意味します。「テーゼ」といえば、アニメ、新世紀エヴァンゲリオンの主題歌となった「残酷な天使のテーゼ」を思い浮かべる人もいるはずです。言葉の意味を知ってから歌詞の内容を見直してみると、面白いかもしれません。
なお、「テーゼ」は簡単な言葉で「命題」「主張」「定立」とも表現されるので、あわせて覚えておきましょう。
「アンチテーゼ」の英語は「antithesis」
「アンチテーゼ」はドイツの哲学用語ですが、英語でもそのまま「antithesis」というスペルで使われています。
・More and more employees are becoming the antithesis of the company’s policies.
(会社の方針にアンチテーゼを唱える従業員が増えてきている。)
「アンチテーゼ」の意味
「アンチテーゼ」は、特定の理論や主張がある場合、それを否定するために述べる理論や主張のことをいいます。しかし、ただ反対するだけではなく、もとに肯定的な理論や主張がなければ「アンチテーゼ」にはならないので注意しましょう。
たとえば、「Aさんが薦めてる本なのでいい内容だとは言えない」、これは、感覚的に否定しているので、アンチテーゼとはいえません。もっとわかりやすい具体例については後述するので、ぜひこのまま読み進めてください。
「アンチテーゼ」と「アンチ」の違い
「アンチ〇〇」「あの人はアンチだから」と、なんとなく悪い意味合いで使われることが多い「アンチ」は、ネット社会の現代においては当たり前のように使われています。しかし、この言葉は、実は哲学用語である「アンチテーゼ」が語源となっているんです。
ニュース記事などでは「反〇〇」「非〇〇」の意味で使われることが多いです。
【例】
・アンチワクチン → 反ワクチン → ワクチンに反対する人・意見
しかし、SNSではただ「嫌い」なことを指す場合もあるので、どのような意味あいで使っているのかは全体の文章から正しく解釈することをおすすめします。
【例】
・アンチ巨人 → 巨人が嫌い
・アンチdyson(ダイソン)→ dyson(ダイソン)が嫌い
「アンチテーゼ」の具体例
「アンチテーゼ」は、言葉の説明や意味を見ただけでは想像しにくいでしょう。そこで、わかりやすく「テーゼ」と、それに対する「アンチテーゼ」という形で紹介しておきます。
[アンチテーゼ]蕎麦アレルギーをもっていて、食べられないどころか蕎麦殻枕を使えない人も多い。
[アンチテーゼ]どろんこになって遊ぶことでいろんな細菌への抗体ができ、強い子供に育つ。
[アンチテーゼ]消毒をしすぎると必要な常在菌まで殺してしまい、病気にかかりやすくなる。
[アンチテーゼ]日本人としてしっかり育てたいなら、英語に慣れさせるより、赤ちゃんの頃はたくさんの日本語を聞かせなければ日本語能力が発達しない。
[アンチテーゼ]風力、水力、地熱、太陽光などの自然エネルギーも効果的に利用できるようになってきているので、危険な原子力発電は使うべきではない。
「アンチテーゼ」の使い方・例文
ビジネスシーンでもプライベートでも「アンチテーゼ」という言葉を使う機会は少ないかもしれませんが、会話の中でどのように使われるのか例文でチェックしておきましょう。
・早出、残業が当たり前の先輩にとって、フレックスを利用する人はアンチテーゼという認識だ。
・アンチテーゼを唱えるのは悪いことではないが、理由なく好き嫌いを言うだけでは成立しないことを、Aさんは知らないと思う。
・肯定派が一人でアンチテーゼが大多数だと、もはや反対論者とは言えないのではないか?
「アンチテーゼ」の類語・言い換え
「アンチテーゼ」は、状況によってさまざまな言葉に言い換えることができます。そのため、もとになっている物事によって適切なものを選択しなければなりません。
・反対意見
・反対主張
・反対理論
・反対命題
・否定的命題
・反対の立場
・対立する
・敵対意識
・向こう側
・反面
・対面 など
【豆知識】「テーゼ」と「アンチテーゼ」を合わせて生まれる「ジンテーゼ」
対立した意見を議論する際、より思考を深めながら進めていく考え方に「弁証法」というものがあります。その中での肯定的意見を「テーゼ」、反対意見を「アンチテーゼ」といいますが、テーゼとアンチテーゼを合わせて出された新しい意見を「ジンテーゼ」といいます。そのほか、「テーゼ」と「アンチテーゼ」を合わせる行為そのものは「アウフヘーベン」と呼ばれているので、豆知識として覚えておきましょう。
[アンチテーゼ]小麦よりも米の入荷を増やさなければならない。
[ジンテーゼ]米粉を使ったパスタの生産を増やしていこう。
「アンチテーゼ」はただ反対するだけではないことを理解しよう
反対意見や反対主張であっても、そこに「テーゼ」があってこそ、「アンチテーゼ」成立するということは忘れないでください。ただし、ネット社会の中でいわれる「アンチ〇〇」は、ただ嫌いなだけでも成立しているので、厳密には「アンチテーゼ」とは違う意味合いがあるといえます。もし、これから先、「アンチ〇〇」を使う機会があっても、本来の意味は頭に浮かぶようにしておくことをおすすめします。