「固定概念」は「固定観念」の間違い語、正しい使い方の例文や類語も解説

「固定概念」とは簡単にいうとどんな言葉?

「固定概念」は間違い。正しい言い方は「固定観念」で、その意味は「ある人の頭からいつも離れないで、自由な思考ができないように考え方を制限している考えのこと」です。

類語は「固着観念」「既成概念」。逆の意味の言葉は、「臨機応変」「融通無碍」です。

英語で表すときは、「stereotype」「a fixed idea」を使います。

「固定概念」は実は間違い

「固定概念」は、「先入観」や「思い込み」「凝り固まった考え方」のようなニュアンスで使われていますが、実は間違いです。日本語に「固定概念」という言葉はありません。

正しい言い方は「固定観念」です。

「固定観念」とはどんな意味?読み方は?

「固定観念」の読み方は「こていかんねん」で、次の意味をもつ言葉です。

固定観念
ある人の頭からいつも離れないで、自由な思考ができないように考え方を制限している考えのこと

ほかの人に意見されたり、世の中の動きや状況に変化があったりしても変えることが難しく、その人の行動に影響を与えている考えを「固定観念」といいます。

「固定概念」はなぜ間違い?

「固定概念」がなぜ間違っているのかは、「固定」と「概念」の意味を考えるとよくわかるので、まずは言葉の意味を確認しておきましょう。

固定
・一定の位置に止まって動かないこと。また、動かないようにすること
・一定していて変化しないこと
概念
「あるもの」が「どういうことか」「どういうものか」、「あるもの」に属するたくさんのものたちに共通している特徴を抜き出して、その特徴を「あるもの」の一般的な性質として意味づけしたもの

「概念」とは世の中で固定されている定義のこと

「概念」はもっと簡単に説明すると、「あるもの」を辞書で調べたときに書かれている事柄のことです。

例えば、「肉じゃが」は家庭によってレシピが異なっており、使われている肉は牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉などさまざま。野菜もじゃがいものほかに何を入れるか、いろいろなバリエーションがあります。

しかし、辞書で「肉じゃが」の意味を調べると、辞書ごとに多少文言が違いますが、「肉、じゃがいも、野菜を醤油や砂糖などで味つけし煮込んだ煮物料理」のような説明がされていますよね。材料や作り方などの細かい差異は無視して、世の中の多くの人が共通してイメージする部分だけがまとめられています

この辞書の説明文のように、「どういうものか」世の中で固定されている定義が「概念」です。

「固定概念」だと意味が二重になってしまう

「概念」は、「世の中で固定されている定義」のことでしたね。この「概念」に「固定」をつけて「固定概念」とすると、もともと世の中で共通のものとして固定されていて、ひとつしかない定義をさらに固定するということになってしまいます。

固定の意味が重なってしまうため、「固定概念」は間違いなのです。

「固定観念」はなぜ正しいの?

なぜ「固定観念」が正しい日本語とされるのかも、言葉の意味を考えると理解できます。

「観念」は次の意味をもつ言葉です。

観念
「あるもの」が「どういうことか」「どういうものか」、人がそれぞれ抱く主観的な考えのこと

「観念」は人それぞれ異なる

先ほどの「肉じゃが」の例だと、「肉じゃがには牛肉が入っている」と考える人もいれば「豚肉を入れる」と考える人もいて、さらに「鶏肉」、「ラム肉」と、その人によって「肉じゃが」がどんなものかイメージするものが変わってきます。

これらの人によって異なる考えが「観念」です。

「観念」は、人によって違うものなので固定化されていません。

「観念」に「固定」をつけた「固定観念」は、多種多様な「観念」があるにもかかわらず、そのなかのひとつの「観念」だけに固執してしまうこと。「肉じゃがは牛肉を使うべき」のように、決めつけてほかを否定してしまうことです。

この考え方に問題があるかないかはともかくとして、日本語としておかしなところはないため、言葉としては正しいのです。

「固定観念(固定概念)」の使い方を例文で学ぼう

「固定概念」は間違った日本語ですが、普通に使っている人もかなりいます。ただし、ビジネスでは正しい言葉づかいが求められるので、「固定概念」は「固定観念」に直して使用することをおすすめします。

頻繁に用いられている「固定概念」の言い回しを、「固定観念」に直してみましょう。

例文1
固定概念にとらわれる→固定観念にとらわれる)
上司が「仕事はこうあるべき」という固定観念にとらわれると、部下の積極性が失われていく。
例文2
固定概念を捨てる→固定観念を捨てる)
変化が早く今まで通りでは生き残るのが難しくなっている現代のビジネスでは、固定観念を捨てることが重要だ。
例文3
固定概念にとらわれない→固定観念にとらわれない)
固定観念にとらわれないで、お客様にとってベストな提案を考えよう。
例文4
固定概念にとらわれる人→固定観念にとらわれる人)
固定観念にとらわれる人は思いのほか多く、自分がそのひとりであると気づけるかどうかでその後の生きやすさが変わってくる。
例文5
固定概念を覆す→固定観念を覆す)
日本人の固定観念を覆す新商品を発表する。

「固定観念(固定概念)」は好き嫌いに影響する

「固定観念(固定概念)」は、人の好き嫌いに影響を与えています。

例えば、仕事のミスを厳しく注意された経験から「この人は怖い先輩だ」という「固定観念(固定概念)」を抱いていたら、苦手意識でその先輩のことを避けたくなってしまうかもしれません。

でも、その先輩が本当に「怖い人」なのかは、先輩のことをもっとよく知らなければわかりません。実は物言いがきついだけの面倒見がいい人ということもあります。このように、「固定観念(固定概念)」にとらわれていると、物事の本質を見誤りやすくなるので注意してください。

「固定観念(固定概念)」が役立つ場合も

「固定観念(固定概念)」は、悪い意味合いで使われるケースが多いですが、「固定観念(固定概念)」があることは悪いことばかりではありません。

私たちは、日々さまざまな経験を積み、経験の蓄積によって「固定観念(固定概念)」は出来上がります。そして、その「固定観念(固定概念)」をもとにいろいろな物事を判断しており、「固定観念(固定概念)」が役に立つ場面も生活のなかにはたくさんあります。

例えば、「来週は暑くなる天気予報だから、冷たい飲み物がたくさん売れるはず。多めに仕入れておこう」「ここは水位が上がりやすい地域だから大雨が降ると危険だ。雨が降り出す前に避難しておこう」などが、「固定観念(固定概念)」に基づく判断です。

ただし、「ここは大雨の被害を受けたことがない地域だから大丈夫」のような「固定観念(固定概念)」を持っていると、大変なことになってしまう場合も。

「固定観念(固定概念)」にとらわれすぎず、状況を見極める目や他者の助言を聞き入れる耳も養いましょう。

「固定観念(固定概念)」の類語・言い換え表現

「固定観念(固定概念)」の類語は、「固着観念(こちゃくかんねん)」「既成概念」です。それぞれの意味と使い方をおさえておきましょう。

固着観念
【意味】
固定観念とまったく同じ意味
【例文】
会議の固着観念を捨てたら、アイデアが続々と生まれるようになった。
既成概念
【意味】
「あるもの」に関して、すでに世間に広く浸透していて「そういうものだ」と一般的に認められ定着した性質
【例文】
餃子の既成概念を破る斬新なメニューを発表する。

「固定観念(固定概念)」の対義語

「固定観念(固定概念)」の逆の意味を表す言葉は、「臨機応変」「融通無碍(ゆうずうむげ)」です。

臨機応変
【意味】
その時その場の状況に応じた行動をとること。場合によって、その対応を変えること
【例文】
臨機応変な行動をとれるように訓練する。
融通無碍
【意味】
考え方や行動が何物にもとらわれず自由でのびのびしていること
【例文】
このブランドは、融通無碍に変化していくデザインで人気を集めている。

「固定観念(固定概念)」は英語だと?

「固定観念(固定概念)」を英語で表すときは、「stereotype」「a fixed idea」を使います。

「固定観念(固定概念)」の英語
stereotype:ステレオタイプ、固定観念、新鮮さや独創性を欠いた定型、決まり文句、月並みな考え方
a fixed idea:固定観念、固着観念

「固定観念(固定概念)にとらわれない」を英語で表すときは、このうちの「stereotype」を用いて次のように表現します。

「固定観念(固定概念)にとらわれない」の英語
No stereotypes.:固定観念なし
Not stereotyped.:型にはまらない
Not stereotypical.:ステレオタイプではない

「固定概念」は言い換えて使おう

「固定概念」は間違った日本語で、正しくは「固定観念」です。

「固定概念」を普通に使う人も増えていますが、ビジネスでは正しい言葉づかいが求められる場合が多いので、「固定概念」を用いるのは得策ではありません。

「固定概念」は、「固定観念」や記事で紹介した類語に言い換えて使うことをおすすめします。