ワーキングプアとは簡単にいうとどんな言葉?
ワーキングプアの意味は、「フルタイムで働いても貧困から抜け出せない就業者」です。
類語は、「働く貧困層」「低所得層」。
英語で表すときは、「working poor」を使います。
ワーキングプアとはどんな意味?
ワーキングプアは、次の意味をもつカタカナ語です。
日本やアメリカなどの社会経済システムが資本主義で回っている先進国で、懸命に働いても貧困線以下の収入しか得られず、貧困から抜け出すことができない就業者のことをワーキングプアといいます。
貧困線とは、一家が生活するために本当に必要なものだけをぎりぎり購入できる、最低限の収入を表す指標のこと。国によって経済状況などに大きな差があるため、貧困線は世界共通の数値ではなく、国や機関によって異なっています。
日本でのワーキングプアの定義
日本では、ワーキングプアは生活保護の給与水準である、「月給約17万円(手取りでは13~14万円)」または「年収約200万円」以下の収入の人と定義されることが多いです。
しかし、日本は国としての貧困線を設定しておらず、ワーキングプアのはっきりとした基準も設けていません。
そのため、研究者によってワーキングプアと定義する収入が変わることもあります。「年収約155万円」をワーキングプアの境界とする人もいれば、30代以上の正社員ならば、「年収300万円」でワーキングプアという人もいます。
ワーキングプアの原因
日本にも、ワーキングプアと呼ばれる年収に属する労働者はたくさんおり、長く社会問題になっています。まずは、ワーキングプアが増える原因をおさえておきましょう。
賃金が上がらない
最低賃金水準が低く、働いていても得られた収入で家計を支えるのが難しいことが、ワーキングプアの大きな原因といわれています。
正社員として働いていたとしても、国として経済成長できていない時期が続いており賃金が上がらないため、ワーキングプアになってしまうのです。
さらに働き方改革により、残業時間が減ってしまい収入を支えていた残業代が減少してしまったり、サービス残業が増えてしまったことで、働く時間は変わらないのに残業代がもらえなくなってしまったりすることも起きています。
非正規労働者が増えている
賃金やそのほかの労務コストを減らすため、安いコストで雇える非正規労働者を使いたがる企業が多く、労働者人口における非正規雇用者の割合が高いこともワーキングプアの原因。
非正規労働者は、単純労働に従事する場合が多いため、長年勤めていても転職活動でアピールできるような高い職業能力を身につけるのが難しいです。
また、非正規雇用者に人材教育を施す企業も少ないので、一度非正規雇用者になるとその後のキャリアアップが難しくなり、条件のいい職場に転職するのが困難になってしまいます。
介護や子育ての負担が増している
核家族化や少子高齢化、ひとり親家庭の増加により、介護や子育てを分担できるだけの家族の人数がいない家庭が多くなり、家庭内で介護や子育てを行う負担が大きくなっていることも原因のひとつ。
介護や子育てをしている者に正社員として働く余力がなくなり、その結果一家の収入が少なくなってしまうのです。
高学歴を活かせる職が少ない
難関大学の修士号や博士号を取得していたり、高度な専門知識を得ていたりする高学歴な人材にもかかわらず、ワーキングプアになってしまう場合もあります。
新卒時に能力に見合った賃金を得られる職を得られなかったり、能力を活かせる仕事ができる職につけなかったりすると、低賃金の職場で働かざるを得なくなります。
また、ブラック企業に就職してしまい、心身を壊して退職してしまったことで、非正規雇用労働者となっている人も多いです。
価値観の多様化
価値観の多様化により、自らの意思で多くの収入を得られる正社員として働くのではなく、自由が利く非正規雇用を選ぶ人も増えています。
ワーキングプアはなぜ問題?
ワーキングプアになってしまうと、フルタイムで働いても生活できないので、仕事を掛け持ちする人が増えます。その結果、過労死してしまったり、精神的に追い詰められて自殺してしまったりする人が増加してしまいます。
ワーキングプアの家庭の子どもは、塾などに行けないことが多く低学歴になりやすいです。そのため、大人になってからワーキングプアになりやすく、負の連鎖ができてしまいます。
いったんワーキングプアになってしまうと、そこから抜け出すのが難しく、そのまま老後に突入してしまうことが多いです。現役時代に老後に備えた貯蓄もできないので、老後生活できない高齢者が増えてしまいます。
ワーキングプアは、収入が少なく家族を養うのが困難なため、結婚できない人や子どもを多く持てない人が多いです。それにより、少子化に拍車がかかってしまうと考えられています。
ワーキングプアの解決策
ワーキングプアを減らすには、働きたい人のキャリア形成を応援できるように、次のような対策で雇用の量と質を確保することが必要です。
非正規労働者のキャリア形成にも力を入れ、長期的な視点で戦力として使える人材に育てる企業を支援する制度を設けるなど。
例えば、雇用保険や求職者に対する職業訓練など、雇用のセーフティネットの質を高め再就職を積極的に支援する。
また、家族の力だけでは難しい介護や子育てを支援するサービスを強化し、介護や子育てをしながら働ける社会制度を整えることも重要です。
非正規労働者から正社員になるには
厚生労働省が公表している非正規労働者に関する資料によると、非正規労働者から正規採用された人の60%以上が、正社員登用制度のある会社での企業内登用で正社員になっています。
また、転職して非正規労働者から正社員になれた人は、2~5年くらい同じ企業で継続勤務した経験を持つ人が多いことがわかっています。
そのため、非正規労働者から正社員になることを目指す場合は、正社員登用制度のある企業の求人に応募しそこから正社員を目指すか、いま働いている企業で勤務実績を積み、その実績をアピールして正社員の求人に挑戦するのがおすすめです。 参考 はじめに厚生労働省
ワーキングプアの使い方を例文で学ぼう
ワーキングプアの意味や原因についてわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・男性よりも女性のほうがワーキングプアに陥りやすい。
・若者のワーキングプア問題を調査する。
・ワーキングプア状態からなかなか抜け出せない。
ワーキングプアの類語・言い換え表現
ワーキングプアの類語は、「働く貧困層」「低所得層」です。ワーキングプアの言い換え語として、次のように使われます。
・低所得層に対する家計支援を行う。
ワーキングプアは英語だと?
ワーキングプアは英語だと「working poor」と表記されます。
・低収入労働者
ワーキングプアは、「low income family(低所得の家庭)」や、「low income(低所得)」と表されることもあります。
ワーキングプアの意味を理解しておこう
ワーキングプアの意味は、「フルタイムで働いても貧困から抜け出せない就業者」。
ニュースでもよく耳にする言葉のため、しっかり覚えておきましょう。原因や解決策についても頭に入れておくと、より理解しやすくなりますよ。