「無知の知」とは「知らないことを自覚している」という意味
古代ギリシアの哲学者ソクラテスの言葉として有名は「無知の知」は、「自分は何も知らないということを自覚している」ことを指す言葉です。しかし、この言葉は、謝って認識されている部分も多いといわれています。そこで、本記事では、読み方、由来、使い方なども含め、わかりやすく解説します。
なお、「無知の知」の対義語は、「図々しくて恥知らず」という意味の「厚顔無恥(こうがんむち)」となるので、関連付けて覚えておくと便利です。
「無知の知」の読み方・意味
「無知の知」は、「むちのち」と読み、「自分が無知であるということを自覚している」ことを指す言葉とされています。しかし、詳しい意味は、「無知なことを自覚していると表すことは、自分はなんでも知っていると見せかける人よりも人として優れている」という意味です。
日本では、「無知の知」はソクラテスが提唱した標語とされていますが、実はそれは誤解で、次の2つの考え方をもってはいるものの、「無知の知」を主張はしていないといわれています。
◆自分が無知であることを自覚していることは、自分には知恵があると自認している人よりもわずかに優れていると考えている。
◆知らないことを知っていると考えるより、知らないことは知らないと考えられるほうが優れていると考えている。
「無知の知」の使い方・例文
「無知の知」のようや故事成語や四字熟語は、使い方を間違えると恥ずかしい思いをすることがあるので、意味だけでなく、会話での使い方も確認しておきましょう。
・無知の知だということを意識していないAさんが、とうとう大きなミスを犯してしまったようだ。
・無知の知は、決して恥じることではないと私は思う。
「無知の知」の類語・言い換え表現
「無知の知」と似た意味をもつ言葉として、「汝自身を知れ」「不知の自覚」があげられます。「無知の知」とまったく同じ意味ではありませんが、状況によっては「汝自身を知れ」や「不知の自覚」のほうが適している場合があります。
汝自身を知れ
「汝自身を知れ(なんじじしんをしれ)」は、「自分が無知であることを自覚し、自分を高めるように励め」という意味合いの故事成語です。無知の知と同じく、古代ギリシアの哲学者であるソクラテスに関連する言葉で、彼自身の行動指針の標語にもなっていたとされています。
「無知の知」は、「無知であることを自覚すること」ですが、自覚するだけでなく、「知識を身につけるなど、自分自身を高めなさい」の意味も付け加えられているのが「汝自身を知れ」です。
どんなことに関しても「知らない」で終わらせるBさんに、「汝自身を知れ」という言葉を伝えたい。
不知の自覚
「不知の自覚」は、「知らないことを自覚している」という意味で、「無知の知」の代わりに使うことができます。実は、「不知=知らないこと」「無知=知識がないこと」であるため、ソクラテスが掲げた言葉といわれている「無知の知」は、本来は「不知の知」である、と考える日本の研究者も多いです。
・あの人の知ったかぶりのせいで迷惑を被っている人がたくさんいるけど、「無知の知」という言葉を知らないんだろうね。
・あの人の知ったかぶりのせいで迷惑を被っている人がたくさんいるけど、不知の自覚という言葉を知らないんだろうね。
「無知の知」の英語表現
「無知の知」は、そのまま英語に訳すことは出来ず、次のような文章に置き換えて表現します。
・I know nothing except the fact of my ignorance.
(私は自分の無知という事実以外、何も知りません。)
・I know that I don’t know anything.
(私が何も知らないということを分かっています。)
「無知の知」の意味を理解し正しく使おう!
カタカナ用語や英語を使うことが多い現代では、四字熟語や故事成語を使って表現する機会は少ないかもしれません。しかし、日本人であるならば、日本独特の言葉も知っておきたいものです。使い方は少し難しいかもしれませんが、意味は即座に説明できるようにしておきましょう。