リスキリングとは?リカレントとの意味の違いは?事例、英語、類語、言い換えも紹介

「リスキリング」とは「働くうえで必要となるスキルを習得するための取り組み」という意味

「リスキリング」は、今就いている職業や今後就く予定の職業で、必要とされるスキルの習得を目的とした、人材の再教育、もしくは知識やスキルを獲得するための取り組みのことをいいます。インターネットやAIなどの技術が進化を続け、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代が到来している現代においては一段の注目されつつあります

本記事では、「リスキリング」の正しい意味や使い方のほか、類語、言い換え、「リスキリング」がもたらす効果などについてもわかりやすく紹介します。

「リスキリング」の英語は「reskilling」

「リスキリング」の英語表現は「reskilling」で、英語圏においては、「失業者に対する再教育」の意味で使われています。もとは、「Re-skiling」で、「Re」は「再び」を意味し、「技能・技術」を指す「skill」に「ing」がついた形です。

「リスキリング」の語源・日本での意味

カタカナ用語の中には、「スキルの習得」を意味する「スキリング」という言葉があります。それに、「再び」を指す「Re(リ)」をつけたのが「リスキリング」です。「スケジュールを変更する」ことを指す「リスケ」も「リ+スケ(スケジュール)」で、「再び」を指す「Re(リ)」が頭についていますよね。これと考え方はほぼ同じです。

なお、経済産業省では、「リスキリング」の定義を次のように定めています。

「リスキリング」の定義

◆新しい職業に就く、もしくは現在の職業において必要とされるスキルの大幅な変化に適応すべく、必要なスキルを獲得する/させること

現時点で、現職に関連する教育を受ける場合は「再教育」という形になります。しかし、単なる学び直しではなく、今後継続して価値を生み出していくために必要なスキルを身につけるといったニュアンスが強いです。また、近年では、デジタル化が進むと同時に新しくできると考えられている職業や、仕事の進め方が大きく変わると考えられている職業につくためのスキル習得を指して使われることも増えています。

「リスキリング」がもたらす効果とは?

現代においては、企業でも「リスキリング」を導入する例が増えていますが、その背景としては、次のような効果が見込まれるからだとされています。

業務の効率化につながる

たとえば、昔、計算道具として使われていたのは「そろばん」ですが、それが電卓になり、パソコンでの自動計算に変化を遂げてきました。しかし、使うのは「人」なので、操作するスキルを身につけなければ仕事ができません。このように、時代の流や企業の仕事のやり方に対応できる人材を育てることで、業務の効率化につながります。

新しいアイデアが生まれるきっかけになる

新しい知識を身につけると、今までになかった考え方をしたり、視点が変わったりしやすく、新しいアイデアも生まれやすくなる傾向にあります。そしてそのアイデアが、新商品開発に活かされる可能性も高くなり、売り上げにもつながるというわけです。

新規採用のコストを削減できる

社会のデジタル化が進むことで、システムに対応できる人材を新規採用すると、それなりのコストがかかります。しかし、現在の従業員を再教育して対応できるようにすれば、新規採用の必要がなく、それにかかるコスト削減にもつながります。また、それだけでなく、既存の人材を維持できれば、従業員のモチベーションや企業の能力も維持できるといったメリットもあります。

「リスキリング」の使い方・例文

「リスキリング」は、会話や文章の中ではこのように使われます。管理職や教育に携わる人でないと使う機会は少ないかもしれませんが、一応チェックしておきましょう。

例文

リスキリングを行わなければ、時代にあった仕事をしていけない。
リスキリングの目的とメリットを全従業員に説明する必要がある。
・早々にリスキリングを導入した企業例を参考に、今後のプログラムを考えてみたいと思う。

「リスキリング」の類語・言い換え

「リスキリング」を日本語で言い換える場合は、「再教育」「職業能力の再開発」「スキル向上」といった言葉が使えますが、カタカナ用語の類語としては「アップスキリング」「アウトスキリング」があります。

「アップスキリング」とは?

「アップスキリング」をわかりやすい言葉で表すと「スキルアップ」です。これは、今もっているスキルのレベルアップを意味しており、別の職種で役立つスキルを身につけるといった要素をもつ「リスキリング」とは異なります。しかし、「スキルの向上」という意味合いでは類語といえます。

「アウトスキリング」とは?

「アウトスキリング」とは、レイオフ*の危険性がある従業員に対し、成長産業への再就職に役立てるためのスキルを身につけさせ、新たなキャリアに向かっての支援をすることを指します。「リスキリング」は、あくまでも自社での仕事に役立てることを目的としていますが、「アウトスキリング」は、他社で活躍できるためのスキルとなります。(レイオフ*:完全解雇ではなく、人件費削減などのために、企業が一時的に行う解雇のことで、時期がくれば再雇用される仕組み。)

「リスキリング」と「リカレント」の違い

「リカレント」とは、学校での教育を終了して就職した後、その仕事を辞めて再度大学や専門学校などの教育機関に戻って学習し、再度就職する、というように、学習と就職を繰り返すことをいい、「リカレント教育」という形で使われることが多いです。再教育という点においてはリスキリングと類語と考えられますが、あくまでも、リスキリングは現在の職務につきながらスキルを身につけるので、完全に学習に専念する「リカレント」とは異なります。

「リスキリング」と「OJT」の違い

「OJT」とは、「On The Job Training」の略で、仕事現場で実際の業務をしながら行う職業訓練のことをいいます。「OJT」は、あくまでも今配属されている職場で必要な知識やスキルを身につけるためのトレーニングで、他の業務で役立つ知識を学ぶ要素の強い「リスキリング」とは異なります。

「リスキリング」の事例

経済産業省から発信している「リスキリング」の資料では、日本企業の導入例として「日立製作所」「富士通」をあげています。
(情報参照元:経済産業省 リスキリングとは

日立製作所

日立製作所グループである日立アカデミーでは、DX時代に対応できる人材育成プログラムとし、「DXリテラシー研修」を導入しています。この講座では、「DXとは?」という基礎知識から、自ら計画立案ができるようになるまでのスキル強化までできる仕組みです。
(データ参照元:HITACHI 株式会社日立アカデミー 企業活動

富士通

富士通では、個人だけでなく、組織でのリスキリングが重要との考えから、グループ企業である富士通ラーニングメディアにおいて、さまざまな講座が用意されています。2022年10月からの新規コースには、DX時代に向けたリスキリングとして、「DXリテラシー入門」「DX実践ワークショップ」などがあります。
(情報参照元:富士通ラーニングメディア

「リスキリング」を実施して新時代に備えよう

昔は紙ベースでほとんどの仕事が行われていましたが、現代ではパソコン業務が当たり前になっています。仕事のやり方も時代によって変化していくので、知識もそれに合わせていかなければなりません。一人だけ取り残されることのないよう、新しいスキルを身につけて、新時代についていけるようにしましょう。