キャリアアンカーの意味とは?3つの要素や8つの分類、おすすめの本も解説

キャリアアンカーとは簡単にいうとどんな言葉?

キャリアアンカーの意味は、「キャリアを選択するときに絶対に譲れない判断基準」です。

キャリアアンカーを言い換えできる類語はありません。

英語で表すときは、「career anchor」を使います。

キャリアアンカーとはどんな意味?

キャリアアンカーは、次の意味をもつカタカナ語です。

キャリアアンカー
個人が自分のキャリアや働き方を決めるときに最も大切にしている事柄で、仮にキャリアの選択で難しい判断を迫られたとしても絶対に譲れない「価値観」「欲求」「能力」のこと

次の3つの要素について考えてみましょう。

①自分が得意なことは何か(能力)
②自分がやりたいことは何か(欲求)
③どんな働き方、生き方に意味や価値を感じるか(価値観)

自分の出した上記の3つの答えをすべて満たしていることが、キャリアを決めるとき自分にとってどうしても譲れない判断基準になり、それをキャリアアンカーと呼びます。

キャリアアンカーの8つの分類

各々が認識したキャリアアンカーは、次の8つの区分のどれかに当てはめることができます。

キャリアアンカーの8つの分類
①管理職
②専門能力・職人
③安全・安定
④起業家的創造性
⑤自律・独立
⑥奉仕・社会貢献
⑦チャレンジ
⑧生活様式

それぞれの特徴を確認し、自分がどこに当てはまるのか考えてみましょう。

①管理職

管理職タイプの人は、できるだけ高い地位まで出世して大きな責任を引き受けたい、経営にかかわる仕事をし組織を動かしたいという気持ちが強いです。

専門家としてひとつの仕事を極めることよりも、管理職に必要な全般的な能力を得るため、若いうちに積極的に異動を受け多くの職種を経験したいと望んでいます。

適職例
マネージャー、経営者

②専門能力・職人

専門能力・職人タイプの人は、特定の仕事に才能があり、その仕事に関する知識やスキルを磨いて「専門家」として自分の能力を発揮することに価値を感じています。

出世して管理職になるよりも、いつまでも現場でスペシャリストとして働き続けたいと考える人が多いです。そのため、その仕事ができないポジションに異動させられてしまうと、仕事に対するモチベーションが大きく低下してしまいます。

適職例
研究開発、エンジニア

③安全・安定

安全・安定タイプの人は、ひとつの企業で定年まで安定して働き続けたいと考えています。終身雇用制の大企業に就職するか、公務員として働くことを希望する人が多いです。

将来の見通しが立つ環境で、心にゆとりをもって仕事をしたいと考えており、リスクや大きな変化を嫌います。部署異動にストレスを感じやすく、転職やキャリアチェンジも望みません。

適職例
公務員、年功序列・終身雇用制度のある企業での勤務

④起業家的創造性

起業家的創造性タイプの人は、新製品や新サービスの開発、新規事業の立ち上げなど、創造性を発揮し新しい何かを作り上げる仕事に満足を感じます。

リスクを恐れず、常に独立や起業にチャレンジしたいと考えています。社内ベンチャーを任せるのにも向く人材です。

適職例
起業家、新規事業開発

⑤自律・独立

自律・独立タイプの人は、マイペースで集団に合わせて動くよりも単独行動が好きです。

組織のルールや規律に縛られることを嫌がり、自分のやり方やペースで仕事を進めたい気持ちを強く持っています。自分が納得できるやり方で仕事をしたがるため、自分の裁量で動ける働き方や、上司に気軽に提案や相談、話し合いができる環境が向いています。

適職例
フリーランス、自営業

⑥奉仕・社会貢献

奉仕・社会貢献タイプの人は、人の役に立つことに大きな価値を見出しています。

高い地位についたり、多くの給料を得たりすることよりも、自分の仕事で世の中をよくすることを望んでいます。職場の同僚や上司、お客さんの役に立ち、認められたいという思いも強いです。

適職例
医療、看護、社会福祉、教育関係、人事部門で人を援助する職種

⑦チャレンジ

チャレンジタイプの人は、解決が非常に困難な事柄への挑戦や、手ごわい好敵手との負けられない競争に働き甲斐を感じます。

挑戦のためのハードワークは大歓迎ですが、退屈やルーティンワークは嫌いです。不可能を可能にするため、自分磨きの努力を厭いません。

適職例
営業、エンジニア、スポーツ選手

⑧生活様式

生活様式タイプの人は、会社でのキャリアと家族の希望、私生活の質のどれも大事にしており、これらのバランスをとることを重視しています。私生活の充実が仕事のやる気につながり、家庭を犠牲にしない範囲で仕事にも熱心に取り組みます。

仕事と家庭を両立させるため、在宅勤務制度や育児休暇制度など、福利厚生面が充実している会社で働くことを望む人が多いです。

適職例
事務職、個人の状況に合わせて柔軟な対応をしてもらえる企業での勤務

キャリアアンカー理論

キャリアアンカーは、アメリカ合衆国の心理学者 エドガー・ヘンリー・シャイン氏が提唱したキャリアアンカー理論により広まった言葉です。

キャリアアンカーが当てはまるのは中堅以降のビジネスマン

シャイン氏は、スローン経営大学院修士生45名を対象に、卒業直前と卒業してからの1年後、5年後、13年後にそれぞれが仕事に対して抱いている自己認識をインタビューやテスト、アンケートを通して調査し、キャリアアンカーという概念を導き出しました。

シャイン氏は、キャリアアンカーはビジネスマンとしてある程度の経験を積み自分のことがよくわかるようになることで、認識できるようになる概念であると述べています。

キャリアアンカーは、学生やキャリアの浅い若手ビジネスマンには向かないことも頭に入れておきましょう。

キャリアアンカーの活かし方

キャリアアンカーは、一度形成されると年齢が上がったり、職場環境が変わったり、結婚や出産といったプライベートで変化があったりしても大きく変わることはめったにありません。一生涯、その人の譲れない判断基準であり続けます。

30歳をすぎ、キャリアに対する自分の考え方が固まったと感じるようになったら、キャリアアンカーを確認するのがおすすめです。

早い段階で自分のキャリアアンカーを認識しておくと、その後の長い人生でのキャリアのミスマッチを避けやすくなります。報酬や肩書など表面的な情報に惑わされにくくなり、自分に合うキャリアをうまく選べるようになるので、満足できる働き方がしやすくなります。

インターネットで検索すると、無料でキャリアアンカー診断ができるサイトをみつけられるので、試してみてください。

キャリアアンカーの由来は船の錨

キャリアアンカーのアンカーは、船の錨(いかり)のことです。

シャイン氏の調査に協力した調査対象者のうち、「自分の譲れない判断基準」にマッチした仕事をしていた人が、自分の状況を航海を終えた船が安息地となる波止場に錨(アンカー)を下ろしたかのように、「いい感じだ」とたとえたことからつけられたといわれています。

キャリアアンカーについて学びたい人におすすめの本

もっとくわしくキャリアアンカーについて知りたい人には、キャリアアンカー理論を提唱するエドガー・ヘンリー・シャイン氏の著書、「キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう」がおすすめ。

この本は、キャリアアンカーに関する知識をわかりやすく学ぶことができるビジネス本です。書き込み式の診断シートを使っての作業を通して、自分がどのような人間なのかじっくり見直すことができ、自分のキャリアアンカーを探れます。

キャリアアンカーの使い方を例文で学ぼう

キャリアアンカーについて理解できたら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・社員一人ひとりのキャリアアンカーを知ることで、人員配置のミスマッチを避けられる。
キャリアアンカーに沿った働き方ができる職場に転職した。
キャリアアンカーを無視すると仕事に対する満足度が低くなる。
・質問票の質問に答えキャリアアンカーを診断する。

キャリアアンカーは英語だと?

キャリアアンカーは、英語だと「career anchor」と表記されます。

「career anchor」は、「career」と「anchor」を組み合わせて作られた言葉です。もとになった単語の意味も頭に入れておきましょう。

career
・(一生の仕事とする)職業、専門的職業
・生涯、経歴、履歴、職歴
・経路、通り道
・全速力、疾走
・疾走する、全力で突き進む
・(一生の)職業の、専門職の
anchor
・錨(いかり)
・テレビやラジオのニュース番組の責任者兼キャスター
・支え、よりどころ、最強の部分、頼みの綱
・最終の競技者
・いかりで固定する、いかりを下ろす、投錨する
・しっかりと固定する
・支える

キャリアアンカーをキャリア選択に活かそう

キャリアアンカーの意味は、「キャリアを選択するときに絶対に譲れない判断基準」です。

キャリアアンカーは、一度決まるとその後の生涯で何か変化があった場合にも、大きく変わることはあまりありません。自分のキャリアアンカーを知ると、今後のキャリア選択で自分にとって満足度の高い選択をしやすくなります。

キャリアアンカーを、長い職業人生に活かしていきましょう。