「サービスプロフィットチェーン」とは「顧客満足が企業利益につながるというフレームワーク」のこと
従業員が満足して毎日働くことで、顧客満足につながり、最終的には企業利益になるといったフレームワークを「サービスプロフィットチェーン」といいます。
つまり、従業員を大切にし、満足させている企業は利益を上げ、従業員を大切にしない、一般的に「ブラック」といわれる企業は目覚ましい発展を遂げていないということです。本記事では、「サービスプロフィットチェーン」の詳しい意味や一般的な循環方式、成功事例などについてもわかりやすく紹介します。
「サービスプロフィットチェーン」の英語は「Service Profit Chain」
「サービスプロフィットチェーン」を英語で表すと「Service Profit Chain」で、米国ハーバードビジネススクールのジェームス・L・ヘスケットが提唱するビジネスモデルを指します。それぞれの単語の意味は次のとおりです。
・Service(奉仕)
・Profit(利益)
・Chain(鎖)
日本においての「サービスプロフィットチェーン」とは
日本のビジネスシーンにおいての「サービスプロフィットチェーン」は、従業員満足度(Employee satisfaction)(ES)、顧客満足度(Customer satisfaction)(CS)の因果関係を示したものとされています。これは、従業員の満足度、顧客満足度、企業利益の3つ項目が向上・循環することで企業経営が向上するという考え方ですが、顧客満足度を「サービス品質」「顧客満足」の2つに分割し、4項目とするという考え方もあります。
従業員満足度(Employee Satisfaction)
従業員満足度は、英語で「Employee Satisfaction」と書くことから、主に「ES」という略語で表すことが多いです。職場の労働環境、待遇、福利厚生、職務内容など、その企業で働く従業員の職場に対する満足度を示すものとなっています。
顧客満足度(Customer Satisfaction)
顧客満足度は、英語で「Customer Satisfaction」と書くことから、主に「CS」という略語で表すことが多いです。消費者がサービスを利用する際や、商品を購入する際の満足感を示すものとなっています。
「サービスプロフィットチェーン」の循環方式
サービスプロフィットチェーンを導入した場合、7段階にわけて効果が表れるとされています。
②高いES
③高いESによる生産性UP
④顧客へのサービス品質向上
⑤高いCS
⑥顧客ロイヤリティの向上
⑦企業の収益
①社内サービスの向上
従業員が快適に、向上心をもって働けるよう、職場環境を整えます。
②高いES
職場の労働環境を良くすることで、従業員のやる気を生み出し、モチベーションのアップにつながります。
③高いESによる生産性UP
従業員に働く意欲が湧くことで仕事の効率がアップし、生産性が向上します。
④顧客へのサービス品質向上
生産性が向上することで、消費者に良い商品やサービスが届けられるようになります。また、接客を必要とする業種では、従業員の満足度が高くなることでお客様に対する接し方も良いほうに変わってくるという効果が期待できます。
⑤高いCS
消費者は、良い商品やサービスが得られることで、必然的に満足度が高くなります。
⑥顧客ロイヤルティの向上
「顧客ロイヤルティ」とは、顧客がその商品やサービスに対して感じている「信頼感」「愛着」という意味です。この感情が高まると、顧客はリピートしたいと思うようになり、これが向上につながります。
⑦企業の収益
顧客ロイヤルティが向上してリピーターが増えたり、新規顧客が増えたりすると、企業の収益がアップします。そして、企業がさらに収益の一部を従業員に還元すれば、また従業員の満足度も高くなり、良い循環が繰り返されるというわけです。
「サービスプロフィットチェーン」の成功事例
説明文を読み込むだけでなく、実際の成功事例を見るともっと理解しやすいので、「サービスプロフィットチェーン」で成功したことで有名な「星野リゾート」「オリエンタルランド」「スタバ」について紹介します。
星野リゾート
星野リゾートは、大手企業にしては珍しく、各施設の総支配人、その下の部門長にあたるユニットディレクター、プレイヤーという3層方式で、とてもフラットな組織編制になっています。代表である星野氏も代表としての特別の席はなく、ほかのスタッフと顔をあわせながら仕事をするとのこと。
また、ユニットディレクターは立候補制で、年2回議員選挙のようにプレゼンを行い、戦略を発表し、従業員、人事、総支配人の意見をまとめて決定するというシステムを導入しています。上に立つことは大変であるにもかかわらず、毎回多くの立候補者があり、従業員のモチベーションの高さがキープできている証拠だといえます。
オリエンタルランド
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを運営しているオリエンタルランドでは、毎年各組織や委員会から推薦された案件の中より優れた案件を選び、会社表彰を行っており、特に成果の大きかった案件については「Award of Excellence」が進呈されます。また、従業員が気軽に提案できる制度「I have アイデア」を実施しており、グランプリ受賞者を表彰するといった取り組みも有名です。
(参照元:OLC GROUP 企業風土とES活動)
スターバックス
「スタバ」の愛称で有名は大手コーヒーチェーンのスターバックスでは、アルバイトのスタッフに対しても80時間もの研修時間が用意されており、企業のミッションについてしっかりと伝えられています。
【企業ミッション】
人々の心を豊かで活力あるものにするために一人ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから。
(参照元:スターバックス 会社案内 Our Mission and Values)
スターバックスとして、パートナー、コーヒー、お客様を中心としてサービスを提供するという概念をしっかりと教え込まれ、従業員も理解し、主体的に動ける姿勢が、従業員、顧客双方の満足につながっています。
「サービスプロフィットチェーン」の循環を良くするためのポイント
「サービスプロフィットチェーン」の循環を良くするには、循環方式の項目でも伝えたように、まずは従業員の満足度を高くすることから始めなければなりません。働きやすい環境かどうかを見直すためにも、従業員から「何かやりにくいことはないか」「改善してほしいことは?」など、意見を集めてみるのもおすすめです。
「サービスプロフィットチェーン」活用のメリット・デメリット
「サービスプロフィットチェーン」が利益につながるのであればメリットしかないような印象を受けるかもしれませんが、実はデメリットもあるんです。
メリット
大きなメリットは、「ES(従業員満足度)の向上」「CS(顧客満足度)の向上」です。ESが向上すれば人材の流出を減らすことができ、企業としての知識・経験・実績が維持できます。そして、その結果、良い顧客サービスができるようになり、利益につながるというわけです。
デメリット
従業員の満足度を上げるために福利厚生を充実させたり、報酬制度を作ったりすると、それなりの資金が必要となります。しかも、「サービスプロフィットチェーン」を導入してもすぐに結果が出るわけではないことを理解しておくことが必要です。
「サービスプロフィットチェーン」の使い方・例文
「サービスプロフィットチェーン」は、意味や概要がわかれば使い方は難しくありません。
・サービスプロフィットチェーンを実現するにあたり、まずは職場環境の整備を始めようと思う。
・サービスプロフィットチェーンを活用し始めてから、従業員の働く姿に活気が現れている。
・当社はサービスプロフィットチェーンの導入で成功したといっても過言ではない。
「サービスプロフィットチェーン」の類語・言い換え
サービスプロフィットチェーンを日本語で言いかえる場合は、意味として解説してきたように、「顧客満足が企業利益につながる仕組み」などで表すしかありません。カタカナ用語の中にも同じ意味をもつ言葉はほかにありませんが、従業員満足度(ES/Employee Satisfaction)や顧客満足度(CS/Customer Satisfaction)は類語というこができます。
「サービスプロフィットチェーン」を理解し、業績UPにつなげよう
「サービスプロフィットチェーン」を活用するには初期投資が必要ですが、成功すれば大きな利益につながる可能性があります。導入する際は、デメリットの部分もしっかりと理解し、準備を始めるようにしてください。