パラドックスとは? 語源、意味、英語、使い方、具体例などもわかりやすく紹介

「パラドックス」とは「逆説」こと

パラドックスとは、「正しくないように見えても、実はつじつまがあっていて、結論としては正しい」または、「正しいように見えても実は間違っている」ことを表わす言葉で、短い言葉で表すと「逆説」という意味になります。

映画などでよく使われるので、言葉と、おおまかなニュアンスは知っていても、意味をきちんと考えることは少ないのではないでしょうか。本記事では、「パラドックス」のわかりやすい例や会話中での使い方などについても紹介します。

なお、対義語は「正統派」「正しいとされていること」の意味がある「オーソドックス」ですので、併せて覚えておくと便利です。

「パラドックス」の英語は「paradox」

「パラドックス」は英語で「paradox」と表記します。語源は、ギリシャ語で「para=反対」と「doxa=意見」の組み合わせにより作られ、英語では「逆説」「矛盾した」などの意味をもつ単語として使われています。

paradox of thrift(倹約のパラドックス)
paradox of the heap(砂山のパラドックス)
・ethical paradox(倫理的パラドックス)

日本語においての「パラドックス」とは

「パラドックス」は、広い意味では「逆説」「定説に逆らっている状態」を指しますが、厳密には3種類にわけられます。

論理的に矛盾がある

哲学において「嘘つきのパラドックス」と呼ばれているものです。これは、「私は嘘つきである」と述べたとき、本当に嘘つきであった場合はこの発言は「本当」なので、結論としては「私は嘘つきではない」ということになります。

また反対に、「私は嘘つきである」という言葉が嘘であった場合は、結論としして「私は嘘つきではない」ということになるので、いずれにしても論理的に矛盾が生じるわけです。

定義上は正しく見えるが実際には存在しない

哲学において「アキレスと亀のパラドックス」と呼ばれているものです。アキレス(人間)と亀がおり、双方で徒競走をすることになりました。しかし、亀よりもアキレスのほうが足が速いのはのはわかっているので、ハンディキャップとして、亀は先のA地点からスタートするというルールにします。

しかし、アキレスがA地点に到達している頃には亀はB地点に、アキレスがB地点に到達しているときには亀はC地点…というように、いつまでたってもアキレスは亀に追いつけないというものです。

このように、「定義としては成り立っているものの、実際にはありえない」というのかこのパラドックスです。

事実には反しているようでも実は正しい

哲学において「急がば回れのパラドックス」と呼ばれているものです。例えば、山を下ろうと地図で確認したとき、A地点からB地点まで、直線距離で100m、しかし、人道はなく、木々の生い茂った急斜面を下って行かなければなりません。一方、約300mの距離になるものの、しっかり舗装された道で安全に歩いて行けます。

通常は、一歩進むのに数分かかるような急斜面を進んで行くよりも、遠回りでも舗装された道を進んだほうがスムーズです。これが「事実には反しているようでも実は正しい」ということになります。

わかりやすい「パラドックス」の例を紹介

世の中には、前述したもの以外にもさまざまな「パラドックス」が存在します。中には解釈が難しいものも多いですが、比較的簡単でわかりやすい「パラドックス」もあるので、いくつか紹介しておきます。

張り紙禁止のパラドックス

「張り紙禁止」の張り紙をすることは許されるのか。

砂山のパラドックス

砂山から数粒の砂を取り除いても砂山である。この作業を繰り返し、結果、砂山の砂が一粒になったとき、「砂“山”」と呼ぶことはできるのか。

抜き打ちテストのパラドックス

「来週のどこかで抜き打ちテストを行う」という言葉は間違っていないように思うが、「抜き打ちテスト」とは、予告なしに行われるテストのことなので、予告をしている時点で抜き打ちにはなっていない。

倹約のパラドックス

不景気になると、多くの人は倹約に努めようとするが、結果、需要が減り、より景気が悪化する。

「パラドックス」の使い方・例文

会話の中で「パラドックス」を使う場合は、前述したようなパラドックスを例として用いるも多いですが、「事実には反しているようでも実は正しい」「定義上は正しく見えるが実際には存在しない」の意味でこのように使われることがあります。

例文

・まさかこんなことがあるとは…。パラドックスだね。
パラドックスのような結果に惑わされちゃいけないよ。
嘘つきのパラドックスと豪語しているが、それはただの屁理屈だと思う。

「パラドックス」の類語・言い換え

「パラドックス」を日本語で言いかえる場合は、次のような言葉がつかえます。

パラドックスの言い換え表現

・異説
・所説
・逆説
・逆説的
・反語
・反語的表現
・矛盾
・真理に見える

また、「事実には反しているようでも実は正しい」の意味の例えとして次のような表現も可能です。

・急がば回れ
・損して得取れ
・負けるが勝ち

「パラドックス」と「ジレンマ」の違い

「ジレンマ」は、「パラドックス」の類語としてあげられることがありますが、厳密には意味が異なります。

「ジレンマ」は、選択肢が二つあるものの、どちらにもデメリットがあるため選びきれない状態を示す言葉で、詳しい内容は次のとおりです。

「ジレンマ」の意味

・相反する二つの事柄が存在しており、どちらを選んでもデメリットがある状態。
・相反する二つの事柄が存在しており、どちらを選んでも悪いことしかないのに、必ずどちらかを選ばなければならず、板挟みになった状態。

そのほか、倫理学の分野では、実際には存在していない事象について二つの仮定を立て、そこから結論を導き出すことを意味する場合もあります。

通常、「パラドックス」は、「正しいようで正しくない」「正しくないように見えて正しい」というように、矛盾している状態を表しますが、「ジレンマ」とは異なり、板挟みになっていたり、デメリットがあったりすることがないので、同義語として使わないよう注意しましょう。

「パラドックス」の意味や定義を理解して活用してみよう

本記事で紹介した「嘘つきのパラドックス」「急がば回れのパラドックス」など、哲学としてのパラドックスがたくさん存在しており、わかりやすく、日常の中でも使いやすいものもあります。これを機にいくつかチェックしておき、逆説と思われる事象があったときにはぜひ使ってみてください