クリティカルパスとはどんな意味?求め方やアローダイアグラムなど関連語も解説

クリティカルパスとは?

クリティカルパスの意味は、「ひとつのプロジェクトの作業工程のなかで、もっとも作業時間がかかる最長の作業経路」です。

クリティカルパスは、プロジェクトのなかにいくつかある作業経路のなかで、もっとも長い作業時間を必要とします。クリティカルパスの完了は、プロジェクトの完了する時間と考えられています。プロジェクト管理はクリティカルパスをスムーズに進められるかが重要です。

クリティカルパスの求め方

クリティカルパスの求め方を簡単にみてみましょう。

タスクを書き出す

プロジェクトのなかには、大小様々な多数のタスクが含まれています。まずは、すべてのタスクを書き出しましょう。

タスクのなかには、ある作業が終わってからでないと、その作業に取り掛かることができないものもあります。依存関係にあるタスクをすべて見つけ、タスク間のつながりを明確にしてください。

作業工程を見える化

タスクの書き出しが終わったら、作業の流れを確認し、すべてのタスクを作業工程のなかにはめていきます。

それぞれのタスクの依存関係を踏まえ、並行して作業できる工程は複数同時進行させる前提で考えます。作業のスタートからゴールまで、枝分かれや合流を繰り返しながらつながっていく図にまとめ、全工程の流れを見える化しましょう。

作業時間を見積もる

作業の流れを示す図が完成したら、スタートからゴールまで、枝分かれしていくそれぞれの経路で個々のタスクにかかる作業時間を見積もり、経路ごとの合計時間を計算します。

このとき、人材や物資、機械、場所、資金、時間などのリソースは、いくらでも投入できる前提で最短の作業時間を考えてください。この条件で、スタートからゴールまでの合計作業時間が、もっとも長くなる経路がクリティカルパスです。

また、このような手順でプロジェクトの各作業工程を時系列順に並べ、プロジェクトを完了させるためにこなさなければならないタスクを管理する手法をクリティカルパス法と呼びます。

クリティカルパスの例

炊き込みご飯の作り方を例に、クリティカルパスを考えてみましょう。

炊き込みご飯の調理は、次のような作業工程をたどります。

炊き込みご飯
①:お米を研ぐ(3分)
②:浸水させる(60分)
③:浸水時間の間に具材のカット(10分)
④:具材を出汁、調味料と合わせ軽く煮る(5分)
⑤:④を冷まし具材と出汁に分ける(40分)
⑥:浸水を終えた米をざるにあげ水切りする(5分)
⑦:炊飯窯に米を戻し⑤の出汁を加える(2分)
⑧:米を平らにならして上に⑤の具材を散らす(3分)
⑨:炊飯する(50分)
⑩:蒸らす(10分)
⑪:配膳(1分)
⑫:完成

炊き込みご飯の調理では、お米の準備作業にあたる②と⑥の待ち時間の間に、具材の準備(③→④→⑤)を並行して行えます。具材の準備(③→④→⑤)は合計55分、お米の準備は②+⑥=65分で、お米の準備のほうが作業時間が長いです。

つまり、炊き込みご飯の調理スタートから完成までをたどるすべての経路のうち、作業の終了時間に影響を与える重要な経路は、「①→②→⑥→⑦→⑧→⑨→⑩→⑪→⑫」。これが、炊き込みご飯の調理でのクリティカルパスになります。

クリティカルパスに後れを出さないことが重要

炊き込みご飯の具材の準備にかかる合計時間は最短で55分、お米の準備にかかる合計時間は最短で65分のため、差の10分以内ならば具材の準備に遅れが生じても全体のスケジュールに影響は出ません。

しかし、クリティカルパスには、遅れが生じたときに穴埋めとして使える余裕の時間がありません。クリティカルパス「①→②→⑥→⑦→⑧→⑨→⑩→⑪→⑫」を何のトラブルもなくこなしたときの合計時間134分が、完成までにかかる最短時間で、もしクリティカルパスのどこかでトラブルが発生するとその分だけ全体の完成は遅れてしまいます。

つまり、プロジェクトをスケジュール通りに進行させるには、クリティカルパスに含まれるタスクの優先度を上げ、熟練の作業員を割り振るなどして後れを出さない管理をする必要があるのです。

覚えておきたいクリティカルパスの関連語

クリティカルパスの話で、よく登場する関連語もおさえておきましょう。

アローダイアグラムとは

アローダイアグラムは、一つひとつの作業の内容と作業の流れ、それぞれの作業で必要とする時間を図にしたものです。

作業は〇、作業の流れは→で表します。一番最初の作業の〇を左端に書き、一番最後の作業の〇が右端に来るように順番に表記していきます。並行して作業を行う場合は枝分かれ直前に行われる作業の〇から→が複数伸び、枝分かれしていた作業工程が合流するときは、複数の→がひとつの〇に向かって伸ばされます。

それぞれの作業にかかる時間は、その作業から伸びている→のそばに数字で記入しましょう。

先ほど紹介した炊き込みご飯の調理工程を、アローダイアグラムで示すと次のようになります。

図の点線の矢印は、「ダミー作業」を示す矢印です。「ダミー作業」で実際に行う作業はないですが、作業同士の前後のつながりを示すために記載します。

図の〇と→の流れををたどると、炊き込みご飯の調理の作業経路は「①→②→⑥→⑦→⑧→⑨→⑩→⑪→⑫」と「①→③→④→⑤→⑦→⑧→⑨→⑩→⑪→⑫」の2パターンあることがすぐにわかります。それぞれの経路での作業時間の合計を求めると、クリティカルパスもすぐに把握できます。

ガントチャートとは

ガントチャートは、プロジェクト管理や生産管理など、何かの作業の進捗状況を管理するときに用いられる棒グラフ状の一覧表です。

縦軸はタスク(作業内容)、横軸は日時を示しており、各タスクの進捗状況が横方向に伸びる棒グラフで示されます。ガントチャートを使うと、どんなタスクが進行中か、各タスクの期限や進捗状況を簡単に把握できるようになります。クリティカルパスの進捗状況の確認にも役立ちますよ。

ガントチャートは、「工程表」「スケジュール表」「管理表」などと呼ばれる場合もあります。

クリティカルチェーン法

クリティカルチェーン法は、リソース(人材、物資、機械、場所、資金、時間など)の制約がある前提で「ひとつのプロジェクトの作業工程のなかで、もっとも作業時間がかかる最長の作業経路」を割り出す方法です。

クリティカルパスは、リソースの制約を一切受けないという前提で「ひとつのプロジェクトの作業工程のなかで、もっとも作業時間がかかる最長の作業経路」を割り出します。しかし、実際には作業員不足や機械の順番待ちなどが起こり、経路のどこかに停滞が発生することがほとんどです。機械の故障など、イレギュラーが発生する場合もあります。

クリティカルチェーン法では、このようなリソースによる制約を計算に入れ、安全余裕時間を加えたスケジュールを立てます。

安全余裕時間は最後に配置

クリティカルチェーン法では、各タスクの作業時間に余分な安全余裕時間は加えません。各タスクに安全余裕時間を割り振ると、従業員になまけ心が生まれてしまい作業効率が落ちてしまうためです。それぞれのタスクの作業時間はリソースの関係から実現可能な、しかし余裕はないぎりぎり間に合う時間で割り振られます。

各タスクに割り振られなかったそのほかの安全余裕時間は、すべてまとめて工程の最後に見積もります。そして、工程のどこかで遅れが発生したときは、工程最後の安全余裕時間を使い、完了予定がずれないように帳尻合わせされます。

医療・看護でのクリティカルパスとは

医療や看護の分野でのクリティカルパスの意味は、「標準的な診療計画」です。

クリティカルパスは、病院経営と治療の質の観点から、効率と安全性を考えて作成されます。

クリティカルパスを作ることで、医師の違いによる治療のバラツキがなくなります。医師、看護師、薬剤師、栄養士など、治療にかかわる多くの職種のスタッフたちが治療チームとして連携し、良質で安全な医療を提供できるようになるメリットもあります。

クリティカルパスの使い方・例文

クリティカルパスの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
クリティカルパスの書き方を解説する。
・無料のクリティカルパス作成ツールを提供する。
クリティカルパスを活用する病院が増えている。

クリティカルパスの類語・言い換え表現

クリティカルパスは、日本語では「最長経路」「臨界経路」と訳されます。

例文
・システム開発での最長経路を求める。
・臨界経路の管理方法を紹介する。

カタカナ語が使いにくいときには、言い換え語として使用してください。

クリティカルパスは英語だと?

クリティカルパスは英語だと、「critical path」と表記されます。

critical path
・クリティカルパス、臨界経路
・クリティカルパス、治療計画書

「critical」の意味は「危機的な、危機の、重大な」、「path」の意味は「通路、軌道、道」です。「critical」と「path」をつなげた「critical path」は、「重大な軌道」という意味になります。

ビジネスでのクリティカルパスはプロジェクトの進行に、医療分野のクリティカルパスは治療方針に大きな影響を与えます。どちらのクリティカルパスも、「critical path(重大な軌道)」のニュアンスにつながっていますね。

クリティカルパスの意味を読み取ろう

クリティカルパスは、「ひとつのプロジェクトの作業工程のなかで、もっとも作業時間がかかる最長の作業経路」を意味するカタカナ語です。プロジェクト管理で重要な考え方のため、ビジネスでよく使われます。

また医療や看護の分野では、「標準的な診療計画」の意味でクリティカルパスが使用されています。こちらは入院したときなどに耳にすることがあるかもしれません。

どちらのクリティカルパスも意外に身近な言葉です。シチュエーションに合ったニュアンスで解釈できるように、それぞれの意味を頭に入れておきましょう。