ボトムアップとは?トップダウンとの意味の違い、使い方、英語、類語、関連語も解説

「ボトムアップ」とは「下層部からの意見を取り入れ意思決定を行う」こと

「ボトムアップ」とは、組織経営において、下層部から上層部に出された意見を取り入れながら意思決定を行っていく経営方式のことをいいます。企業がはっきりと「当社はボトムアップです」と述べている例は少ないかもしれませんが、会社の体質を判別するためにも知っておきたい言葉です。

なお、対義語は「トップダウン」になりますが、詳しい解説は後述するので、ぜひ順番に読み進めてください。

「ボトムアップ」の英語は「bottom-up」

英語での「ボトムアップ」は「bottom-up」と表記し、英語圏では次のように3つの意味をもつ熟語として使われています。

①下位から上位への
②詳細なものから開始し、少しずつ概略的なものに移行していく方法。
③下位のモジュールから始まり、少しずつ上位のモジュールを作っていく方法。(プログラミング用語)

日本のカタカナ用語では、主に①の意味で使われています。

なお、「bottoms-up」と、「bottom」を複数形にすると、「一気に飲みほして!」という意味になるので間違わないようにしてください

日本語においての「ボトムアップ」とは

英語では3つの意味がありましたが、日本では、「組織の下層部から上層部に上げられた意見を加味しながら、経営方針を決定していく方式」を指して使われます。

「ボトムアップ」のメリット・デメリット

その企業が「ボトムアップ型」か「トップダウン型」かは、会社によって異なるわけですが、多くの場合、どちらの方式で経営していくかは、メリット・デメリットを考慮して決定されています

ボトムアップ型のメリット

「ボトムアップ」は、現場の声を上層部に届けられる仕組みが作られているので、問題点や改善が必要なことが伝わりやすく、迅速に解決に向けた検討が行われる傾向にあります。また、意見を取り入れてもらえる環境だと、従業員のモチベーションアップにもつながるため、積極性も身につきやすいです。

ボトムアップ型のデメリット

「ボトムアップ」は、下層部の意見を上層部に伝えやすい環境にあるといえ、大勢の従業員がそれぞれ伝えにいくのは現実的ではありません。ですので、現場の意見をまとめあげる人材が必要になります。

また、「下層部で意見を集める・まとめる」→「上層部に伝える」→「議論する」という手順を踏むことになるため、意思決定に時間がかかるのもデメリットのひとつです。

「ボトムアップ」の使い方・例文

「ボトムアップ」は、状況によって「ボトムアップ型」「ボトムアップ方式」という形で使うこともあります。

例文

・現場の声をもっと聞きたいので、全従業員に改めてボトムアップ方式での経営にしていくことを周知させたいと思う。
ボトムアップ型にしてから社内に活気が出てきた感じがするのは気のせいではないだろう。
・この会社はボトムアップなので、改善してほしいと思ったことがほとんど実現している。

「ボトムアップ」の類語・言い換え

「ボトムアップ」を日本語で言い換える場合は、「下から上に意見する経営方式」「下層部から上層部」と表現するしかありません。また、ボトムアップの場合、下層部の意見を取りまとめ、上層部に伝えるまとめ役となる存在がいるのが一般的なので、下層部と上層部の間を取り持つ役目である「ミドルマネジメント」は、類語といえます。

「ミドルマネジメント」の意味

日本語で言い換えると「中間管理職」で、上層部の意志を伝えたり、反対に下層部の意見や考えを上層部に伝えたりする、中間的な役割を担う役職です。日本の名称としては、係長、課長、次長、部長などが「ミドルマネジメント」にあたります。

「ボトムアップ」の関連語

ボトムアップは「ボトムアップ方式」「ボトムアップ型」のほかにも「ボトムアップ〇〇」と呼ばれている関連語があります

ボトムアップアプローチ

「ボトムアップアプローチ」とは、企業の財政状況などを、一社ずつ細かく分析しながら、投資の対象をピックアップし、資産構成をしていく、投資信託のアプローチ方法の一つです。

ボトムアップ処理

細かく、一つひとつを順番に積み重ね、全体を理解していくことを「ボトムアップ処理」といいます。日常にあるもので例をあげてみましょう。

たとえば、「柑橘系の果物は?」聞くと、「みかん」「グレープフルーツ」「はっさく」「レモン」などいろいろと出てきますよね?その中で、「黄色」という条件を加えると、多くの場合「グレープフルーツ」「レモン」と絞られ、さらに「とても酸っぱい」の条件が入ると「レモン」という答えがでます。

このように、見聞きした情報を積み重ねていくことで、一つの答えにたどり着いていく方式が「ボトムアップ処理」です。

【番外編】人工知能分野でのボトムアップAIとは?

現代は、AI技術が進化を続けている世の中になっていますが、AIにもボトムアップとトップダウンがあります

ボトムアップ型AI

一千億個もの脳細胞が連結された生体器官の構造そのものを、人工的に再現し、そこに知性を発生させようとする考え方をいう。

トップダウン型AI
コンピュータの単純な質疑応答プログラムに、知識を経験を積ませ、学習することで本物の知性に近づけていこうとする考え方をいう。現代の人工知能の多くはこのトップダウン型になっている。

「ボトムアップ」の対義語は「トップダウン」

「トップダウン」とは、組織の上層部で意思決定した内容を、下層部に伝え、その指示に基づいた行動をしていく経営方法のことをいいます。

「意思決定を下すのが早く、仕事がスムーズに進みやすい」「全体に組織の方向性が伝わり、一体感が生まれる」といったメリットがある一方、「現場の課題や問題点が反映されにくい」「従業員の積極性が生まれにくい」などのデメリットがあるのが特徴です。

「ボトムアップ」はメリット・デメリットを理解して取り入れよう

通常、「ボトムアップ」は、事業が安定し、人材を育てる段階に入っている組織に、「トップダウン」は、ベンチャー企業や、短期間で急成長と遂げている「スタートアップ」に適しているといわれています。

もちろん、ベンチャー企業であっても「ボトムアップ」で成功しないというわけではなく、どちらが適しているかは企業によって違います。ですので、双方のメリット・デメリットを把握し、しっかりと検討を重ねたうえで決定するようにしてください。