グローバルスタンダードとは?
グローバルスタンダードは、「国際標準」から派生して誕生したカタカナ語といわれています。厳密には「国際標準」とはいえない場合もありますが、一般的には「国際標準。世界基準」の意味で使われます。
金融・技術・経営など、さまざまな分野での国際的に共通する考え方や規格、ルールであるとみなされているものがグローバルスタンダードです。
日本独自の考え方や規格、ルールの対義語としてよく使用されます。
グローバルスタンダードの例
グローバルスタンダードは、商品やサービスの品質、安全性、環境保護など、さまざまな分野で設定されています。身近なところにも、グローバルスタンダードが定められているものはたくさんあります。
例えば次のようなものがグローバルスタンダードです。
・信号の色と並び順(左から緑・黄・赤)
・インターネットなどでの通信規格
・船舶や航空機の右側通行
グローバルスタンダードは曖昧な言葉
グローバルスタンダードは、さまざまな物事に対して設定される「世界共通の基準」を意味する言葉です。
しかし、あるものがグローバルスタンダードとして標準化される過程に決まりはありません。自然発生的に生まれるものもあります。また、先行技術をもつ企業や業界内で大きな影響力をもっている企業の働きかけによって成立するものもあり、いろいろです。
グローバルスタンダードといわれているすべてのものに、はっきりと取り決めされている国際標準やルールがあるわけではありません。明確な基準がない曖昧な状態で、グローバルスタンダードといわれているものもあります。
明確な基準がないということは、個人個人が思い浮かべるグローバルスタンダードの中身にずれが生じることも、当然起こりえますよね。
グローバルスタンダード=「国際標準」とは限らない
グローバルスタンダードは、日本から世界を見るという視点で使われることが多いです。
それは、グローバルスタンダードがアメリカやヨーロッパのやり方を取り入れ、従来の日本のやり方から「国際標準」に変えていくことを目指して生まれた言葉だから。グローバルスタンダードは、バブル崩壊後の日本が、世界と対等に渡り合えるようになることを目指す過程で生まれた言葉なのです。
従来の日本のやり方を「国際標準」に変えているということを、「グローバルスタンダードに基づく」や「グローバルスタンダードに準拠する」などのようにいいます。
しかし、ここでもグローバルスタンダードの曖昧さが問題になるケースがあります。明確な基準がないグローバルスタンダードだった場合、何がどの程度「国際標準」に近づけられているのか、はたから見ているだけではわからないのです。
日本の同種のもののなかでは「国際標準」に近かったとしても、世界的に見るとまだまだ国際標準であるとはいえない段階にある場合もあります。
とくに経営手法や経済システムについてグローバルスタンダードといった場合、話し手と聞き手の間に認識のずれが生まれやすくなります。
グローバルスタンダードの種類
グローバルスタンダードは、「デジュールスタンダード」と「デファクトスタンダード」の2種類に分類されます。それぞれの意味をおさえておきましょう。
デジュールスタンダード
デジュールスタンダードとは、公的機関や標準化機関によって定められた規格。
次のような規格がデジュールスタンダードです。
IEC規格:電気・電子に関する国際規格。ISO規格では扱っていない、電気や電子関係の技術を標準化する目的で定められている
JIS規格:日本産業規格。日本の産業製品の規格や測定法などが、基本的には国際規格のISO及びIECに準ずる内容で定められる
ANSI規格:アメリカ版のJIS規格のようなもの
EN規格:EU(ヨーロッパ連合)域内での統一規格
これらの規格に則ったものを作ることで、商品やサービスの信頼度を高められ、他国との貿易もしやすくなります。
デファクトスタンダード
デファクトスタンダードは、自由競争の結果、市場や業界で広く利用されるようになり、事実上の標準規格と認められるようになった基準です。
公的機関や標準化機関によって定められた標準規格ではありません。しかし、デファクトスタンダードが後に標準化機関に認められて、デジュールスタンダードに昇格するケースはあります。
デファクトスタンダードは技術の進歩などによって変化することも多く、次のようなものが現時点でのデファクトスタンダードとみなされています。
・事務用ソフトウェアのMicrosoft Office(Microsoft 365)
・Googleの検索エンジン
・QWERTY配列のキーボード
・記録媒体のBlu-ray
・USB端子のUSB-C端子
・無料通信アプリのLINE
・Web会議サービスのZoom
デファクトスタンダードが決まると、それまでその規格を使用していなかった企業の多くが、デファクトスタンダードに切り替えていく流れができます。そのため、自社規格をデファクトスタンダードにできると、業界で大きな影響力をもてるようになります。
デファクトスタンダードのデメリット:消費者
デファクトスタンダードは市場競争によって決まるため、最も優れた規格が選ばれるとは限らないという問題点があります。
デファクトスタンダードが決まると、その分野の商品はデファクトスタンダードに関連するものがそれまで以上に勢力を伸ばし、大多数になります。それ以外の規格のものは、関連商品も含めて少なくなっていくことが多いです。
そのため、消費者の選択肢が少なくなり、より優れた規格のものがあったとしても、その規格の商品を選ぶのが難しくなってしまう場合があります。
デファクトスタンダードのデメリット:企業
自社規格がデファクトスタンダードになると、市場で自社有利のビジネスができるようになる反面、市場を独占しているという非難を受ける可能性も高まります。
また、デファクトスタンダードが決まると、多くの企業が似たような技術を使って製品を開発することになるため、特許侵害などのトラブルが起きやすくなります。
グローバルスタンダードの使い方・例文
グローバルスタンダードの意味や特徴がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・グローバルスタンダードから乖離している現状を正しく把握する必要がある。
・グローバルスタンダードな服をコンセプトにする。
・グローバルスタンダードの世界地図は、イギリスが中心になっている。
グローバルスタンダードの類語・言い換え表現
グローバルスタンダードを言い換えできるカタカナ語の類語はありません。言い換えが必要なときは、日本語の「国際的基準」「世界標準」「国際標準規格」などを使ってください。
・日本の新技術で世界標準を狙う。
・国際標準規格の認証取得を目指す。
グローバルスタンダードは英語だと?
「グローバルスタンダード」の英語は、「global standard」です。
ただし、英語の「global standard」は、科学技術・工業の分野での「国際標準規格」や、会計・法律での「国際基準」の意味でしか使われません。
カタカナ語のグローバルスタンダードは、英語の「global standard」から派生し、日本独自の言葉となった和製英語といわれています。そのため、日本で使用されている感覚で「global standard」を用いても英語圏の人には通じません。
カタカナ語のグローバルスタンダードのニュアンスで英訳するときは、「globalization(企業などの世界的規模化)」や「de-facto standard(業界標準)」などを使ってください。
グローバルスタンダードの曖昧さも理解しておこう
グローバルスタンダードは、「国際標準。世界基準」の意味で使われるカタカナ語です。
グローバルスタンダードという言葉はさまざまな分野で用いられますが、分野によっては「国際標準」としての国際的な取り決めやルールがない場合もあります。
日本を基準として考えられているケースも多く、グローバルスタンダードといっても本当に「国際標準。世界基準」になっているとは限りません。
グローバルスタンダードの意味や使い方とあわせて、曖昧さのある言葉であることも頭に入れておきましょう。