セレンディピティとはどんな言葉
セレンディピティの意味は、「偶然の産物」「幸運な偶然を手に入れる力」です。
類語は、「偶察力」「掘り出し上手」「ひらめき」。対義語は、「ジャパニティ」「ゼンブラニティ」です。
英語で表すときは、「serendipity」を使ってください。
セレンディピティとはどんな意味
セレンディピティは、次の意味をもつカタカナ語です。
・幸運な偶然を手に入れる力
セレンディピティはただの幸運ではありません。
まず、発見にいたるまでにその人がいろいろな観察をしたり、知識を蓄えていたりすることが根底にあります。それらに柔軟な発想や行動力なども合わさって、探していたものとは別の価値あるものがたまたまそこにあったことに気づくことがセレンディピティです。
それに気づける能力もセレンディピティといいます。
セレンディピティは英語だと?
セレンディピティを英語で表すときは、「serendipity」を使います。
カタカナ語のセレンディピティと英語の「serendipity」は、同じ意味で使用されています。
セレンディピティの語源は?
セレンディピティは、イギリスの政治家で小説家でもあるホレス・ウォルポールが、友達に宛てた手紙のなかで使った造語がはじまりといわれています。
その手紙のなかで、ウォルポールは自分のちょっとした発見について説明するために、セレンディピティという言葉を使いました。ウォルポールは、友人にセレンディピティは子どもの頃に読んだスリランカの童話「セレンディップの3人の王子 (The Three Princes of Serendip)」の主人公の王子たちにちなんだ言葉であると説明しています。
「セレンディップの3人の王子」では、王子たちが修行の旅に出て、その途中にさまざまな困難といくつもの偶然の出来事に出会います。聡明な王子たちはたまたま目にした出来事から、自分たちがもともと探していたわけではない何か価値あるものを次々と発見し、困難を切り抜けていきます。
王子のように、偶然の出来事から思いがけない素晴らしい発見ができる能力が、セレンディピティです。
セレンディピティに似た意味のことわざ
セレンディピティに似ている日本のことわざを紹介します。似た意味のことわざを知ることで、セレンディピティの意味をより理解しやすくなりますよ。
セレンディピティの例
これまでの歴史のなかで何度も、セレンディピティによって今までになかった画期的な新商品が発明されています。
日常生活で使われている、セレンディピティによって生み出されたものについてみてみましょう。
「ペニシリン」の発見
イギリス・スコットランドの細菌学者 アレクサンダー・フレミングは、黄色ブドウ球菌の研究をしていました。研究のため、シャーレで黄色ブドウ球菌を培養していたのですが、たまたまそのシャーレの中にアオカビが発生してしまいます。
異物が入ってしまったシャーレは、黄色ブドウ球菌の実験には使えないため、本来ならば廃棄処分になります。しかしフレミングは、シャーレの中でアオカビの周囲だけ黄色ブドウ球菌が生えていないことに気づきます。
このことを不思議に思ったフレミングは、アオカビの実験を開始し、ジフテリア菌など数々の病原細菌の増殖を抑える「ペニシリン」を発見することができました。
「ポスト・イット」の開発
アメリカの化学メーカー3M社に勤めていた科学者 スペンサー・シルバーは、強力な粘着力をもつ新しい接着剤の研究中に、たまたま非常に粘着力が弱くて、貼り付けた後に簡単にはがせる接着剤を開発します。
目指していた強力な接着剤ではありませんが、せっかく開発できた新しい接着剤なので、シルバーはその接着剤の使い道を探し始めます。社内のさまざまな人に接着剤を紹介し、使い道がないか聞いて回りましたが、なかなか使い道はみつかりませんでした。
数年後、同じく3M社に勤めるアート・フライという科学者が、目印として本に挟んであったしおりが、ページをめくった拍子に滑り落ちてしまったのを目にします。しおりがすぐに外れてしまうことに煩わしさを感じたフライは、本のページに貼っておけて、簡単にはがせるくっつくしおりがあればいいのにと思います。
このとき、フライがシルバーの接着剤を思い出したことで、シルバーとフライの共同研究がはじまり、「ポスト・イット」が開発されました。
「コカ・コーラ」の発明
1880年ごろ、アメリカでは薬草入りのお酒が、薬として販売されていました。
ジョージア州で薬剤師をしていたジョン・S・ペンバートンも、コカインの原料であるコカの葉と、カフェインをたくさん含んでいたコラの木の実にワインをあわせた薬用酒を独自に開発し、「フレンチ・ワイン・コカ」という名前で販売します。
「フレンチ・ワイン・コカ」は大人気商品になったのですが、欧米で健康のための禁酒運動が巻き起こり、売れなくなってしまいます。
そこでペンバートンは、ワインではなくシロップを使った「コカ・コーラ」を新たに開発しました。ペンバートンは、「コカ・コーラ」の原液を水で薄めて売っていたのですが、あるとき間違って炭酸水で割ってしまいます。
この炭酸割りの「コカ・コーラ」が国民的な大ヒット商品になり、現代の「コカ・コーラ」のもとになったといわれています。
「面ファスナー」の発明
「面ファスナー」は、マジックテープやベルクロなどの商品名で販売されている、固定テープのことです。
スイスの電子工学者 ジョルジュ・デ・メストラルは、愛犬と山歩きをしていたときに、自分の服や愛犬の毛に野生ゴボウの実がたくさんくっついていることに気づきました。なぜくっつくのか不思議に思ったメストラルは、その実を持ち帰ります。
野生ゴボウの実を顕微鏡で観察したところ、実の表面が無数のとげとげで覆われており、とげの先っぽは釣り針のような引っ掛かりやすい形をしていることがわかりました。そのとげが、服の繊維や犬の毛にからまってくっついていたのです。
メストラルは、野生ゴボウの実のとげとげの形をヒントに面ファスナーの研究をはじめ、数年後見事開発に成功しました。
セレンディピティとシンクロニシティの違い
シンクロニシティの意味は、「意味のある偶然の一致」。
「虫の知らせ」や「正夢」「会いたいと思っていた人からたまたま連絡が来る」などのように、複数の出来事が意味的なつながりをもちながら、因果関係なく偶然同時に起きることを意味する言葉です。シンクロニシティは、起こった現象そのものを表しており、そこから何かを発見するという意味はありません。
セレンディピティは、偶然から何か役に立つものを発見することやその能力を意味する言葉です。シンクロニシティと「偶然」というところは共通していますが、ニュアンスが少し違います。
セレンディピティの使い方を例文で学ぼう
セレンディピティの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・セレンディピティを促す働きかけをする。
・SNSやオンラインイベントは、コロナ禍でもセレンディピティに出会える場所といわれている。
・セレンディピティが起こりやすい環境をいかにマネジメントするかが、企業の課題になっている。
・セレンディピティ体験の場を提供する。
セレンディピティの類語・言い換え表現
セレンディピティの類語は、「偶察力」「掘り出し上手」「ひらめき」。「偶察力」は、セレンディピティの日本語訳です。
これらの言葉は、次のように使います。
・掘り出し上手の彼と話していると、自分の発想も豊かになる気がする。
・とっさのひらめきが新商品につながった。
セレンディピティの対義語
セレンディピティの対義語は、「ジャパニティ」と「ゼンブラニティ」です。それぞれの意味と使い方をおさえておきましょう。
みんながやっていることを追いかけて、必然的に何かを発見する能力
【例文】
ジャパニティによる地道な努力が繰り返された結果が、大きな成果につながった。
幸運な予想外の出会いがなく、 予定調和で決まり切ったことしか見つけられないこと。またはその能力
【例文】
ゼンブラニティから抜け出す。
【おまけ】セレンディピティがテーマに扱われている作品
セレンディピティは、本や映画などのテーマにも扱われています。興味のある作品がないか探してみてください。
セレンディピティを意識して仕事してみよう
セレンディピティは、「偶然の産物」「幸運な偶然を手に入れる力」という意味のカタカナ語です。いろいろなものを観察し、幅広い知識を集め、積極的に行動することでセレンディピティを得やすくなります。
セレンディピティが起こりやすくなるように、日頃から意識して仕事や日々の生活に臨んでみましょう。