アサーションとはどんな意味?アサーショントレーニングやおすすめの本も紹介

アサーションとはどんな言葉?

アサーションの意味は、「相手を尊重しつつ自分の意見はしっかり伝えるコミュニケーションスキル」「プログラムが実行されるときに満たさなければならない前提条件」「監査要点」。

類語は、「トークテクニック」「アサート」「監査要点」です。

英語で表すときは、「assertion」を使います。

アサーションとはどんな意味?

アサーションは、一般的には次の意味で使われます。

アサーション
相手を尊重しながら自分の意見はしっかり伝えるコミュニケーションスキル

アサーションは、すべての人が平等に自分の意見や要望を主張する権利を持っているという考え方が土台になっています。相手の発言する権利と自分の発言する権利のどちらも大切にしながら、相手と対等な立場に立ち、適切な方法で自己主張をするためのコミュニケーションスキルがアサーションです。

アサーションは、自分が自己主張するだけではダメ。相手の主張に誠実に耳を傾け、相手の事情にもできるだけ配慮する思いやりの心が必要です。

しかし、相手の主張を受け入れるばかりでもダメ。相手の気持ちを考えて傷つけないように気を配りながら、自分の考え、欲求、気持ちなど主張したいことはしっかり主張していきます。

アサーションはもともとは心理学の言葉

アサーションは、1950年代のアメリカで考え出されました。心理学者のジョセフ・ウォルピ氏が、自己主張をうまくできない人のために編み出した行動療法です。

行動療法では、セラピストとカウンセリングを受ける人が共同で、不適切な行動を修正するための治療目標を立て、いろいろな技法を使って適切な行動に変化させていきます。

この時点では、アサーションは「自己主張」を意味する言葉でした。

アサーションは人権運動によって現代の意味に進化した

1960~70年代のアメリカでは、黒人をはじめとした有色人種に対する人種差別に反対する公民権運動や、女性に対する性差別に反対する女性解放運動が活発になっていました。

「自己主張」を意味していたアサーションは、これらの人権運動と結びつき、社会的立場の弱い人々が自己主張する手法として進化します。

そして、現代の「相手を尊重しつつ自分の意見はしっかり伝えるコミュニケーションスキル」という意味で、学校教育やビジネスなどさまざまなシーンで広く使われるようになりました。

アサーショントレーニングとは

アサーショントレーニングは、「相手を尊重しつつ自分の意見はしっかり伝える」アサーションな自己主張ができるようになるためのトレーニングです。

まずは、自分の自己主張のタイプを確認してみましょう。

自己主張のタイプはドラえもんのキャラでイメージしよう

自己主張のタイプは、3つに分けられることが多いです。それぞれどのような主張をするのかは、ドラえもんに登場するキャラクターでイメージするとわかりやすいのでみてみましょう。

ジャイアンタイプ
自分の気持ちに正直で、相手よりも自分を優先するタイプ。

自分のいいたいことを相手にはっきり伝えるのが得意。しかし、相手の気持ちや事情を無視して一方的に自分の主張を押し通そうとするため、周囲の人とトラブルになったり、敬遠されたりしやすい。

「攻撃的な」という意味で、正式にはアグレッシブタイプと呼ばれる。

のび太くんタイプ
自分の気持ちに不正直で、自分よりも相手を優先するタイプ。

自分に自信がなく相手に遠慮しがち。「控えめないい人」と周囲に思われることもあるが、ビジネスでは評価されにくいのでストレスを溜め込みやすい。他人の言葉で動き自分の行動を自分で決めないため、いいわけが多くなりがち。

「非主張的」という意味で、ノン・アサーティブタイプと呼ばれる。

しずかちゃんタイプ
自分の気持ちに正直で相手より自分のことを優先するが、相手の意見も尊重し配慮も忘れないタイプ。

その場その場で最適な主張の仕方を選ぶことが得意。主張すべきところはしっかり主張し、引くべきところは相手の意見に従うことで、最終的にはお互いに納得できる合意点をみつけられるアサーションの理想形。

「主張的」という意味で、アサーティブタイプと呼ばれる。

インターネットで検索すると、自分の自己主張がどのタイプなのかタイプ診断できるサイトをみつけられます。自分のタイプを確認したうえで、アサーショントレーニングでしずかちゃんタイプを目指しましょう。

トレーニング方法①「Iメッセージ」

まずは、自身を主語にした「I(アイ)メッセージ」での会話を心がけてみましょう。普段使いがちな表現を、次のように言い換える練習をします。

会話例
「早く〇〇して」→「私はあなたに急いで〇〇をしてもらいたいと思っています」
「あなたは間違っている」→「私はあなたと違う意見を持っています」
「普通はこうする」→「私はこうしたいと考えています」
「あなたは〇〇してくれないの?」→「私はあなたに〇〇してもらいたいです」
「あなたはなんでそんなことを言うの?」→「私はそんな風に言われると悲しいです」

会話例のように自分を主語にして話すと、相手を責めるニュアンスや意見を押しつける印象になりにくいです。

トレーニング方法②拒否や命令を避ける

会話が「~できない」で終わると、相手は拒否された印象を受けてしまいます。

何かを断りたいときも否定の言葉で終わらせず、「いついつまでなら何とか対処できる」や「〇〇のような方法なら対応できる」のように、相手の気持ちに配慮した代替案を提示するように心がけましょう。

「~すべきだ」「~しなさい」のような上から目線の命令も避けてください。「~したらどうでしょうか」のように提案をしたり、「~して欲しいです」「~してください」のように、お願いの表現を使ったりすると話し合いがしやすくなります。

トレーニング方法③言葉以外の表現も意識する

誰かと話しているとき、人は相手の言葉だけでなく表情や態度など言葉以外のものからも相手の気持ちを感じ取ろうとしています。そのため、人と話すときは相手が気持ちよく会話できる態度や動作を心がける必要があります。

次のようなポイントを意識してください。

ポイント
・相手にいい心象を与える表情を意識する
・相手の目を見て話す
・声の大きさ、話すスピード、トーンを意識して話す
・自信なさげに聞こえてしまう「あのー」「そのー」「えーと」のような「場つなぎ音」は避ける
・服装に気を配り、姿勢をよくする

トレーニング方法④ロールプレイングに挑戦

パートナーを探してロールプレイングしてみるのもおすすめ。

アサーションについて勉強している人や理解している人をパートナーに選ぶと効果が上がりやすいです。

インターネットで調べると、ロールプレイングの事例をみつけられます。

アサーションを学べるおすすめの本

アサーションは、本で学ぶこともできます。ビジネスやプライベートで役立つアサーションを学べる書籍を紹介します。

おすすめ①
「マンガでやさしくわかるアサーション」は、漫画メインでわかりやすく、難しい本が苦手な人にもおすすめの書籍。

自己主張が苦手で、仕事とプライベートの両面でストレスを溜めていた主人公が、アサーションを知りうまくいくコミュニケーションの方法を習得していくストーリー。

おすすめ②
「夫婦・カップルのためのアサーション」は、夫婦生活での物事の見方や自己表現のやり方、コミュニケーション方法を具体的に学べる本。

家族心理学やカップルセラピーを専門とする筆者が、夫婦ならではの事情をふまえながら、夫婦の関係をよくする手段としてアサーションを活用する方法を紹介している。

おすすめ③
「自尊感情を持たせ、きちんと自己主張できる子を育てるアサーショントレーニング40」は、子どもと一緒にアサーションについて勉強したい親御さんにおすすめの本。

ほとんどの漢字にふり仮名がついているので、低学年の子でも読みやすい。ワークシートに書きこみながら学べる。

IT分野でのアサーションの意味

プログラミングの話でアサーションが使われた場合は、そのプログラムが実行されるときに満たさなければならない前提条件を意味します。

また、プログラミング中に、その前提条件を満たしているか確認するために用いるチェック機能のこともアサーションと呼ばれており、こちらの意味で使用されるケースが多いです。

チェック機能のアサーションをプログラムに組み込むことで、プログラマーが意図していない動作を見つけ出すことができます。

会計分野でのアサーションの意味

会計の話で、アサーションが使われた場合は、監査要点という意味になります。

監査要点は、経営者が自社の財務諸表の正しさを主張するための項目のこと。

財務諸表をチェックする監査人の立場で考えると、財務諸表が正しいかどうか判断するために確認する必要がある項目を意味します。

次のような項目がアサーションにあたります。

アサーションの項目
実在性:その資産や負債は本当にあるのか、その取引や会計現象は本当に発生したのか
網羅性:記載しなければならない資産や負債、取引や会計現象がもれなくすべて記録されているか
権利と義務の帰属:その資産の権利や負債の義務は会社のものか
評価の妥当性:資産や負債、取引、会計現象の価格が適切な金額で評価されているか
期間配分の適切性:取引や会計現象、収益、費用が正しい期間に計上されているか
表示の妥当性:資産や負債、取引、会計現象などが適切に記載され、情報が開示されているか

アサーションは英語だと?

アサーションを英語で表すときは、「assertion」を使います。

assertion
・断言、断定、主張
・コンピュータのアサーション。プログラムの形式検証における成立条件
・会計のアサーション。監査要点、経営者の弁明
・心理学のアサーション。自己の主張をやさしく論理的に行うこと

カタカナ語のアサーションには3つの使い方がありますが、どのパターンでも「assertion」を用いて英語に訳すことができます。

アサーションの使い方を例文で学ぼう

アサーションの意味がわかったら、それぞれの分野での使い方を例文でイメージしてみましょう。

一般的な意味の例文
・ロールプレイング形式で、アサーションを取り入れたコミュニケーションを練習する。
アサーションのスキルを身につける。
IT分野の例文
アサーションの機能を導入する。
アサーション違反が検出された。
会計分野の例文
アサーションに合った資料を準備する。
・適切なアサーションの設定がなされていることが重要だ。

アサーションの類語・言い換え表現

アサーションの類語は、どの意味でアサーションが使われているかで変わってきます。

一般的な意味の場合は「トークテクニック」、IT分野では「アサート」、会計分野のときは「監査要点」を用います。

例文
・トークテクニックを向上させるため、先輩にアドバイスを求めた。
・アサートが発生した原因に対処する。
・監査要点の選択の誤りは、監査の失敗の大きな原因になる。

アサーションの意味を正しく理解しよう

アサーションは複数の意味をもつカタカナ語です。

一般的な意味は、「相手を尊重しつつ自分の意見はしっかり伝えるコミュニケーションスキル」ですが、分野によっては異なるニュアンスで使われることもあります。どの意味でアサーションが用いられているのか、しっかり読み取れるようになりましょう。

また、コミュニケーションスキルのアサーションは、ビジネスだけでなくプライベートでも役に立ちます。興味のある人は、紹介した本なども使用して勉強してみてください。