「大義名分」とはどんな言葉?
「大義名分」の意味は、「行動の根拠や口実」です。
類語は、「名目」「建前」「口実」。
英語で表すときは 、「good reason」「higher principle」「a just cause」「political cover」を使います。
「大義名分」とはどんな意味?読み方は?
「大義名分」の読み方は「たいぎめいぶん」。「行動の根拠や口実」のニュアンスで使われる四字熟語です。もう少しくわしく説明すると、次の意味になります。
②ある行為のよりどころとなる正当な理由づけ
③建前としての理由づけ
「大義名分」は、「人に堂々と説明できる何かをするための正当な理由」や、「相手にそれをすることが正当だと思わせるそれらしい口実」という意味合いで使用されることが多いです。
「大義名分」の由来
「大義名分」は、中国の思想家 孔子の教えをまとめた儒教に由来する言葉です。
儒教では、「大義」と「名分」をそれぞれ次のように教えています。
つまり「大義名分」は、人には身分に応じた責任や役割があり、臣下は身分差を認識した節度あるふるまいを取ることが人としての正しい道であるということを教えている言葉になります。
この教えをふまえれば、『「大義名分」とはどんな意味?読み方は?』の見出しで紹介した、①「人として、また、臣として国家や君主に対して守るべき道理や本分、節義」の意味についてはその成り立ちが理解できますね。
「大義名分」と「大義名分論」
儒教の「大義名分」の教えは日本にも伝わり、江戸時代の封建体制を支える支配的なイデオロギーの「大義名分論」が考え出されます。
「大義名分論」とは、君臣の支配服従関係を絶対化した考え方です。臣下や被治者は、どのような状況であっても主君や統治者に服従することが人として正しい道であるとされています。
わかりやすく言い換えると、それがどのような命令であったとしても、主君や統治者から命令されたら従わなければならないということです。
「大義名分」の意味の移り変わり
臣下の主君に対するあるべき姿を表していた「大義名分」ですが、時代が進むにつれてだんだんと、主君と臣下の間で使うようなシチュエーションが少なくなっていきます。
「大義名分論」の考え方によれば、臣下として主君の命令に無条件で従うことは、人として正しい道になりますよね。これは言い換えれば主君から命令が出たという事実が、それをするための正当な理由になるということ。
ここから②の「ある行為のよりどころとなる正当な理由づけ」の意味が生まれ、君臣のやり取りとは関係のない一般的な言葉としても用いられるようになります。
そこからさらに意味が転じて、③の「建前としての理由づけ」の意味合いでも使用されるようになっていきます。
「大義名分」は、現代では③の意味から「建前」や「言い訳」のニュアンスで使われることも多いため、「大義名分」という言葉にいい印象を持っていない人もいるかもしれません。でも、本来は悪い意味の言葉ではないことも頭に入れておきましょう。
「大義名分」の使い方を例文で学ぼう
「大義名分」の意味がわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・大義名分に後押しされて、長年の宿願を果たすことができた。
・大義名分が崩れたことで方針転換を迫られる。
・ビジネスシーンでも大義名分として掲げられる何かを用意できれば、相手を説得しやすくなる。
・聞こえのいい大義名分を振りかざす気にはとてもなれない。
「大義名分」の類語・言い換え表現
「大義名分」の類語は、「名目」「建前」「口実」です。それぞれの意味や使い方をおさえておきましょう。
・名称。呼称。とくに、表向きの名称
・表向きの理由。口実
【例文】
打ち合わせの名目での呼び出しだが、実態はほぼ飲み会だ。
・原則として立てている方針。表向きの考え
・行商人や大道商人が商品を売るときの口上。売り声
・家屋の建築で、基礎の上に柱や梁(はり)、棟など主な骨組みを組み立てること。また、そのときに行う祝い
【例文】
建前を崩して相手の本音を聞き出す。
・言い逃れや言いがかりの材料。また、その言葉
・日ごろよく口にする言葉。言いぐさ
※いい意味合いではあまり使われない言葉です
【例文】
新型コロナウイルスを口実にした詐欺が増えている。
「大義名分」は英語だと?
「大義名分」を英語で表すときは 、次のような表現が使えます。
higher principle:大義名分
a just cause:正当な理由、大義名分
political cover:政治的保護、政治的な口実、政策上の表向きの態度、大義名分
伝えたいニュアンスに近い表現を選んで使用してください。
「大義名分」の意味を正しく理解しよう
「大義名分」は、「建前」や「言い訳」の意味合いで使われることも多い言葉です。
「大義名分」と聞いたときにいい印象を受けない人も少なくないかもしれませんが、もともとは儒教の教えに由来する言葉なので、悪い意味の四字熟語ではありません。
「大義名分」が言い訳ではなく「正当な理由」の場合もあるので、色眼鏡で話を判断しないようにしましょう。