キャリアパスとは簡単にいうとどんな言葉?
キャリアパスとは、「企業のなかで目標のポストや職務に就くために、従業員がどのような職業上の経験を積みスキルを身につけるか、必要な職歴の道筋のこと」です。
類語は、「キャリアステップ」「キャリアプラン」「キャリアデザイン」。
英語で表すときは、「career path」や「career track」を使います。
キャリアパスとはどんな意味?
キャリアパスは、次の意味をもつカタカナ語です。
キャリアパスは、「経歴」や「職歴」を意味する「キャリア」と「道」を意味する「パス」を組み合わせた言葉です。企業のなかで目標に向かってキャリアを積むためにたどる、異動や昇進のルートを意味しています。
キャリアパスは英語だと?
キャリアパスは、英語だと「career path」と表記されます。
・昇進経路
・仕事の進路
キャリアパスは、「career track」と表現される場合もあります。
・出世コース
・昇進コース
どちらも同じニュアンスなので、好きな表現を選んで使ってください。
企業がキャリアパスを作ることが多い
キャリアパスは、企業が自社で実現できるキャリアの例を示すために作るケースが多いです。
この場合の目的は、従業員に目的意識を持たせることや、自社の求人に応募してくる就活者に対して自社の魅力をアピールすることです。
企業がキャリアパスを作るメリット
キャリアパスで、目標のポストにつながる昇進の道筋や、そのポストまで出世するために必要なスキルや能力を示すことで、従業員の「この会社で頑張ろう」というやる気を高められます。自社で目標をかなえられることを示せば、優秀な従業員がキャリアアップのために転職しようと考える事態も減らせます。
また、そのポストを目指す外部の優秀な人材が、「この会社で頑張ってみよう」と考え応募してくる効果も期待できます。
自社の優秀な人材の流出を防ぎ、外部からも優秀な人材が入ってくることで、会社の人的な力が高まります。離職率の低下は、企業イメージのアップにつながり、さらに優秀な人材を呼び込むことにもつながります。
キャリアパスにはデメリットもある
キャリアパスはいいことばかりではなく、デメリットもあります。
特定の役職を目指して最短のルートを進むことで、ほかのキャリアには進みにくくなってしまいます。途中で従業員の目標が変わってしまった場合、希望のキャリアを実現させるのが難しくなります。
また、ルート通りに順調に進んでいったとしても、そのポジションに空きがなかったり、会社の経営状況に変化があったりすると、目標のキャリアを実現できません。
さらに、自分の希望するポストにつながるキャリアパスがない場合や、転勤しないと目標のルートをたどれないなどの理由で、目標の実現が自分には難しいと従業員が感じてしまった場合は、モチベーションが下がってしまいます。
キャリアパスのデメリットもしっかりと頭に入れておき、デメリットを最小限に抑える方法も考えることが大切です。
キャリアパスのポイント
キャリアパスを作るときは、目標のポストや職務に到達するまでにたどる道筋とあわせて、ステップごとの昇進に必要な条件、途中で経験するキャリア一つひとつの平均経験年数などを明確に示しておきましょう。
キャリアパスは複数用意し、従業員それぞれの希望に合う目標を見つけられるようにすることが重要です。また、途中からでも目標を変更できる、なるべく柔軟なキャリアパスを作りましょう。
キャリアパスは選択肢のひとつでしかなく、どの目標を選ぶかは従業員自身が決めることです。例え適正があったとしても、会社側が目標を押しつけるのはやめましょう。
キャリアパス制度とは
キャリアパスを役立つものにするためには、キャリアパスを作るほかに次のような取り組みをすることも大切です。
・従業員のキャリアアップを応援する研修制度を整える。
・定期的な面談を行い、キャリアアップのための相談に乗るなど従業員の目標管理をサポートする。
・従業員を公平に評価する評価項目と評価基準を具体的に定める。
これらの対策を取り、キャリアパスを社内の制度としてまとめたものを、キャリアパス制度と呼びます。
キャリアパス制度は作って終わりではなく、定期的な見直しが必要です。従業員たちの実際のステップアップ状況や社会の変化などをふまえて、よりいいものになるように修正していきましょう。
従業員や就活者が作ることもある
従業員や就活者が、自分の人生設計のためにキャリアパスを作ることもあります。このケースではその会社でどのようなポストを目指すのか、その目標を達成するためにどのような業務を経験しキャリアアップしていくのか、自分の目標を明確にするために作成します。
キャリアパスの考え方・書き方
従業員や就活者が、自分でキャリアパスを書くときの考え方と書き方を紹介します。
キャリアパスを書くための下準備
キャリアパスを書き始める前に、まずは自分の理想とする将来像をしっかりイメージしてみましょう。
バリバリ仕事を頑張りたい、家族を優先した生き方をしたいなど、自分の人生に対する価値観なども踏まえながら、自分なりの目標ポストや職務を明確に決めます。
次に、自分が何を得意としているのか、どんなことにやりがいを感じるのかを考え、自分が目標にしようとしているそのポストや職務に向いているのかを判断してください。
自分の適性が一致する実現可能性が高そうな目標が見つかったら、そのポストや職務の求人情報を調べ、必要な経験やスキルを調べておきましょう。
キャリアパスを図にまとめてみる
下準備が済んだら、下記に紹介する厚生労働省のサイトの職種別の例を参考に、自分なりのキャリアパスをまとめてみましょう。サイトでは事務系職種や接客業、福祉関係の仕事など、さまざまな業種でキャリアパスを作るときに参考になる、キャリアマップが紹介されています。まねしながら図などにまとめてみましょう。
キャリアパスを作成したら、上司や友人など身近な相手に見てもらうことをおすすめします。本当に自分に合った目標なのか、無理な計画になっていないかなど、第三者の視点でアドバイスしてもらいましょう。
参考 キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード厚生労働省キャリアパスにこだわりすぎない
キャリアパスを作ったからといって、その通りに最短ルートでキャリアアップしていけるとは限りません。多少遠回りになったとしても気にしない心のゆとりが重要です。
また、途中で別の目標がみつかったり、家庭の事情などで変更を余儀なくされたりすることもあります。
年に最低1回はキャリアパスを見直し、臨機応変に修正を加えていきましょう。
面接でキャリアパスを聞かれることも
就職面接で、面接官にキャリアパスを聞かれる場合もあります。
企業はこの質問で、就活者に長く働き続けるつもりがあるのかや、応募の本気度を確認しようとしています。質問にちゃんとした回答ができる就活者ならば、業界や自社のことをしっかりと研究して理解したうえで、自社で長く働き続ける決意をして応募してきたのだろうと判断できるためです。
また、回答の中身から就活者が希望しているキャリアと、自社で採用したい人材の将来像にギャップがないかも確認しています。求める人材とかけ離れたキャリアを希望する就活者を採用してしまうと、ミスマッチが生じて、企業にとっても就活者にとっても好ましくない将来を招いてしまうためです。
キャリアパスの使い方を例文で学ぼう
キャリアパスの意味や書き方がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・キャリアパスの作成例を紹介する。
・部下のキャリアパスの相談に乗る。
キャリアパスの類語と違い
キャリアパスの類語は、「キャリアステップ」「キャリアプラン」「キャリアデザイン」です。しかし、すべて言い換えに使えるわけではなく、意味に違いがある言葉もあります。
あるポストや職務にキャリアアップするためにたどる必要がある道筋や段階。キャリアパスと意味に違いはなく、同じニュアンスで使える。
【例文】
内定をもらった会社で希望するキャリアステップが可能かを考える。
将来の仕事や理想の働き方を明確にイメージし、理想像を実現させるための具体的な計画を立てること。
【違い】
キャリアプランの場合は、ひとつの企業のなかだけのキャリアではなく、転職や独立も選択肢に入れることができる。
【例文】
長期的なキャリアプランを立てる。
自分の理想とする職業人生を具体的にイメージし、理想像を実現させるための具体的な計画を立てること。
【違い】
キャリアデザインでは仕事に関する事柄だけでなく、プライベートの人生設計も含めた計画を立てる。
【例文】
当社では、キャリアデザインを支援するサービスを提供している。
【おまけ】身の回りのキャリアパス
わたしたちの身の回りには、キャリアパスとつくものがいくつかあります。どのようなものがあるのか、知識としておさえておきましょう。
キャリアパスポート
キャリアパスポートは、小学校から高等学校までの12年間の学校教育で行われる、子どもが自分の生き方や働き方について具体的に考えるための授業で使われる記録ノートです。
それぞれの学年で行ったキャリア教育の活動記録をとっておき、次の学年につなげていきます。振り返りができる状態で、継続的な学びを進めることで、将来に関する考えを深めていけます。
転校した場合や進学したときにも、同じものを継続して使うため、前の学校での教育と転校先や進学先での教育を結び付けやすくなります。
キャリアパス要件
キャリアパス要件は、介護職員の給料などの待遇を改善する目的で厚生労働省が定めた、「介護職員処遇改善加算」を受け取るための条件のひとつです。
「キャリアパス要件」とは別に、「職場環境等要件」も定められています。それぞれの介護施設での介護職員の待遇に対する取り組みが、この2つの要件をどの程度満たしているのかによって、その施設が受け取れる加算金の額が変わってきます。
キャリアパスの意味や特徴を理解しよう
人材確保などの目的でキャリアパスを提示したり、キャリアパス制度を設けたりする企業は増えています。また、就職活動でキャリアパスを作ることもあります。
キャリアパスの意味とあわせてメリット、デメリットなどの特徴もおさえておき、うまく自分のキャリア形成に役立てていきましょう。