コモンセンスとはどんな言葉?
コモンセンスの意味は、「常識」「良識」です。
類語は、「共通認識」「社会通念」。
英語で表すときは、「common sense」を使います。
コモンセンスとはどんな意味?
コモンセンスは、次の意味をもつカタカナ語です。
・良識
コモンセンスは、ある社会に属している人のなかで「当たり前」と思われている価値観です。その社会に属している人々に、そうすることが社会的に正しく、そうすることがその社会に生きる人々の「しあわせ」や「ゆたかさ」につながると考えられている、共通の感覚のことをいいます。
考えるまでもなく、直感的にそう判断するのが当たり前と思われている事柄がコモンセンスで、それができないと「常識外れ」と周囲から思われてしまいます。
しかし、コモンセンスの内容は万国共通ではありません。地域や団体、生きている時代によって変わってきます。
例えば、次のようなものが現代の日本でのコモンセンスとされています。
・人を傷つけない
・差別的な⾔動をしない
・近所の人には挨拶をする
・決められたスタート時間はしっかり守る
コモンセンスは英語だと?
コモンセンスは、英語だと「common sense」と表記されます。
・共通感覚
「ある社会で生活する人々が、その社会で思慮深く振る舞うために必要とする共通認識、分別、教養、見識、知恵」や「そこに属する人間として現実的ないい判断ができる能力」を「common sense」といいます。
また「火に触ると火傷する」のような、幼児でも知っているわざわざいうまでもないことも、「common sense」の意味に含まれます。
こちらの意味の「common sense」は、教育を受けているかどうかという問題ではなく、生きていく上で当然知っているはずのことを指しています。もし知らないなら、「この人は大丈夫だろうか」と周囲に心配されてしまうレベルのことです。カタカナ語のコモンセンスの意味をイメージすると、まったく違っている場合もあるので注意してください。
コモンセンスの語源は?
コモンセンスは、ギリシア語の「コイネー・アイステーシス(κοινή αἴσθησις)」と、ラテン語の「センスス・コムニス(Sensus Communis)」に由来する言葉といわれています。
「コイネー・アイステーシス」と「センスス・コムニス」はどちらも、「共通感覚」という意味です。
もともとは個人の五感を統合する感覚を表す言葉だった
「共通感覚」は、古代ギリシアの哲学者 アリストテレスが考え定義した言葉です。アリストテレスは、視・聴・嗅・味・触の異なる感覚として感じられている五感をつなげ、統括する感覚があると考え、その感覚を「コイネー・アイステーシス(共通感覚)」と呼びました。
例えば、焼き立てのパンは、きつね色をしていて、香ばしい香りがし、ほんのり甘く、サクサク、もっちりなどの食感がしますね。色は視覚、香りは嗅覚、味は味覚、食感は触覚が感じています。
この別々の感覚を、焼き立てのパンというひとつのものに対して感じている感覚として統合する、五感よりも上位の感覚が「コイネー・アイステーシス(共通感覚)」。
ギリシア語の「コイネー・アイステーシス」を、ラテン語に訳したときの言葉が「センスス・コムニス」です。
「人々の共通の感覚」に意味が広がる
「センスス・コムニス」は、長い歴史のなかでさらに哲学的な考察が加えられ、「人々の間で共通する感覚・判断力」の意味をもつようになりました。
さらにそこから、人々が共有し皆が正しいと感じること、つまり「常識」を意味する言葉として「コモンセンス」という言葉が考え出されました。
トマス・ペインの「コモンセンス」
「コモンセンス(常識)」は、イギリスで生まれアメリカに渡った哲学者 トマス・ペインの著書のタイトルとして、使われていることでも知られています。トマス・ペインの「コモンセンス」 は、ペインが人々の間にアメリカ合衆国独立の世論を高めるために刊行したパンフレットです。
「コモンセンス」でペインは、アメリカ合衆国の独立の必要性を、「理」と「利」の両面からわかりやすく解説しました。「コモンセンス」は多くのアメリカ人に影響を与え、独立戦争の指導者で後にアメリカ合衆国初代大統領になったワシントンをはじめとする、指導者たちにも読まれました。
トマス・ペインの「コモンセンス」の日本語訳は、岩波文庫から出版されています。興味のある人は、「コモン・センス 他三篇」を読んでみてください。
コモンセンスの関連語
コモンセンスが使われた関連語もいくつかあります。どのような言葉があるのかも、知識として頭に入れておきましょう。
コモンセンスペアレンティング
コモンセンスペアレンティングは、子どもの社会自立を援助する技術です。非行少年を支援するアメリカの児童施設で、ケアワーカーと子ども達の関わり方を長年研究し開発されました。
次のような行動を繰り返し行うことで、養育者と子どもの信頼関係を築き、子どもに必要な社会的なスキルを身につけさせます。
・悪い行動をとってしまったら適度な罰を与え、悪い行動が減るように促す。次からどうしてほしいのかを具体的に説明し、子どもにその行動を練習させる。
コモンセンスペアレンティングは、セミナーや本などで学ぶことができます。
「むずかしい子を育てるコモンセンス・ペアレンティング・ワークブック」は、DVD付きで内容がわかりやすいので初めて勉強する人にもおすすめです。
コモンセンスエデュケーション
コモンセンスエデュケーションは、アメリカのNPO財団です。「デジタルシティズンシップ教育」に役立つ教材を提供しています。
「デジタルシティズンシップ教育」は、社会インフラのひとつとなったインターネットとの適切な付き合い方を子どもに教え、デジタル時代のよき担い手となれるように導く指導法です。
コモンセンスエデュケーションの教材は、幼稚園から高校生3年生までを対象としており、デジタル端末との上手な付き合い方やネットいじめへの対処法など、ネット社会で生きるために必要な知識を系統的に学べる内容になっています。
YouTubeに日本語字幕付きの「デジタルシティズンシップ教材」が公開されているので、興味のある人は時間のあるときに見てみてください。
コモンセンスの使い方を例文で学ぼう
コモンセンスの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・あまりにもコモンセンスがないので驚きあきれている。
・SNSに注意するのは、就活生のコモンセンスだよ。
・「コモンセンス」の著者であるトマス・ペインは、フランス革命にも関わっている。
コモンセンスの類語・言い換え表現
コモンセンスの類語は、「共通認識」「社会通念」です。それぞれの意味と使い方もおさえておきましょう。
相互の共通の認識、とくに同じ物事や同じ言葉について、同じように理解しているという共通の理解のこと
【例文】
従業員の間に共通認識を形成する。
社会一般に通用している常識または見解
【例文】
社会通念を覆すような画期的なサービスを発表する。
コモンセンスを理解しよう
コモンセンスの意味は、「常識」「良識」です。カタカナ語のコモンセンスと英語の「common sense」は、意味が少し違っているので注意してください。
また、コモンセンスは住んでいる地域や属している団体、時代によって違っていることも多いです。自分の信じているコモンセンスが絶対のものではないことも頭に入れておきましょう。