カーブアウトとはどんな言葉?
カーブアウトの意味は、「切り出す」「分裂する」です。
類語は、「スピンオフ」「スピンアウト」。
英語で表すときは、「carve out」を使います。
カーブアウトとはどんな意味?
カーブアウトの基本的な意味は、「切り出す」「分裂する」です。この意味をベースに、次の3つの意味で使われています。
・財務諸表から、分離を検討している部門の財務諸表を切り出すこと
・M&Aの交渉時に、特定の事項を除外すること
「事業の一部や子会社を分離する」とは
カーブアウトの「企業が事業の一部や子会社を切り離して、分離すること」とは、企業が特定の事業部門や子会社を切り離して、別の企業として独立させることを意味します。
この意味のカーブアウトは、将来性があるけれど現時点では企業の中核をなす事業とはならない事業を会社本体から切り離し、スタートアップ企業として独立させるために行われることが多いです。
また、「外部のパートナー企業と共同で行う事業とするため」や、「事業部門や子会社を外部に売却するため」にカーブアウトが行われるケースもあります。
「部門の財務諸表を切り出す」とは
「部門の財務諸表を切り出す」の意味のカーブアウトは、企業が事業の一部を分離・独立させるため、企業の財務諸表から分離を検討している事業の財務諸表を切り出すことをいいます。
一般的に、会社全体の決算書(財務諸表)から一事業だけを切り出した、特定の事業に関する決算書(財務諸表)は作られていません。一方、事業に投資する前には、投資対象の価値やリスクなどを徹底的に調査する必要があります。
そのため、事業の一部を分離・独立させるときには、事業の価値やリスクを分析する調査資料として企業全体の財務諸表から対象事業にかかわる部分を切り離し、対象事業の財務諸表として作成する作業が行われます。この作業がカーブアウトです。
「交渉時に特定の事項を除外する」とは
M&A契約の交渉時に、特定の事項を「除外」することもカーブアウトといいます。
「〇〇の影響によるものを除く」や「但し、別紙〇〇に記載された事項を除く」のように特定の事項を指定し、それを契約の適用外とすることを意味します。
カーブアウトの目的・メリット
事業の一部や子会社を切り離して独立した新会社を立ち上げるカーブアウトは、次のような目的で行われます。カーブアウトのメリットもおさえておきましょう。
①:分離した事業の成長を促す
親会社の事業の中核から外れた技術や事業は、将来性が期待できるものであったとしても、親会社の方針によってうまく活用できず、宝の持ち腐れになってしまっているケースは多いです。
そのような事業をカーブアウトし親会社から分離・独立させると、その事業は外部から資金や人材を調達できるようになり、意思決定も迅速に行えるようになります。
②:不採算事業を分離する
企業の経営に悪影響を与えている、不採算事業を分離することもカーブアウトの目的です。
不採算事業を分離することで、親会社は中核の事業に資金や人材を集中させられるようになります。
カーブアウトのデメリット
カーブアウトはいいことばかりではなく、デメリットもあります。後から後悔することがないように、カーブアウトはデメリットもふまえて検討してください。
①:計画通りに成長しない場合がある
カーブアウトして誕生した新会社に親会社が介入しすぎると、子会社の成長が妨げられてしまうため注意が必要です。
また、子会社が外部から資金援助を受けるようになると、経営に関する意思決定に外部の意思が介入するようになります。それにより、親会社の計画どおりに子会社のビジネスを進められなくなる可能性もあります。
②:人材の流出を招く場合がある
カーブアウトにより独立する会社で働くことになった社員が、親会社から離れ子会社に行くのを嫌がって離職してしまう恐れがあります。
親会社から子会社に移動すれば、待遇や人間関係などに変化が生じますよね。それにより社員が不安を感じたり、モチベーションが下がってしまったりすることが、離職の原因になるのです。
カーブアウトの事例
実際にカーブアウトを行っている企業の実例をみてみましょう。
三菱ケミカル
三菱ケミカルホールディングスグループは、2023年に石化・炭素事業をカーブアウトするべく動いています。2022年の現在は、パートナーになってくれる企業を探している段階です。
三菱ケミカルホールディングスグループは、このカーブアウトはカーボンニュートラルを実現させるためのものであると発表しています。カーボンニュートラルにより、変化を避けられなくなる国内の基礎化学産業を、パートナー企業とともにリーダーとしてけん引することを目指しています。
TOYOTA
トヨタグループも、過去にカーブアウトを行ったことで、大手企業に成長したといわれています。
株式会社トヨタケーラムは、トヨタ自動車の情報システム部門で、CAD/CAMシステムを開発、提供する業務を担当していたケーラム事業部が、1993年に独立して生まれたトヨタグループの情報システム会社です。
株式会社トヨタケーラムは、専門スキルに秀でた子会社として成長したのち、同じく過去にトヨタ自動車から分離し成長した情報子会社2社(トヨタデジタルクルーズ、トヨタコミュニケーションシステム)と、2019年に統合されました。
現在は、トヨタグループの挑戦をITの面からサポートする総合的なITソリューション会社 株式会社トヨタシステムズとして運営されています。
カーブアウトの使い方を例文で学ぼう
カーブアウトの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・大手企業からカーブアウトしたベンチャー企業に出資する。
カーブアウトの類語・言い換え表現
カーブアウトの類語は、「スピンオフ」「スピンアウト」です。それぞれの意味や使い方も一緒に勉強しておきましょう。
スピンオフ
スピンオフは、次の意味をもつカタカナ語です。
「今年の春、スピンオフ起業した」のようにして使います。
「カーブアウト」と「スピンオフ」は使い分けされることも
スピンオフは、カーブアウトの一種とみなされる場合と、意味に違いをもたせて別の言葉として使い分けされる場合があります。
カーブアウト:親会社と子会社の支配・被支配の関係が柔軟で、独立後は外部の融資を受けられる
紹介した例のほかにも、別の判断基準で使い分けされることがあります。
「カーブアウト」と「スピンオフ」を使い分けている人が、どのような基準で使い分けしているのか、文脈からしっかり読み取ってください。
スピンアウト
スピンアウトは、次の意味をもつカタカナ語です。
「この会社は、大手メーカーからスピンアウトしたベンチャー企業だ」のように使います。
スピンアウトもカーブアウトの一種とみなされる場合と、異なる言葉として使い分けられる場合があります。
カーブアウト:親会社から資金援助を受けて分離・独立すること
カーブアウトは英語だと?
カーブアウトは英語だと、「carve out」と表記されます。
・区分けする。分割する
・努力(苦心)して作り上げる
カタカナ語のカーブアウトと同様に、「The president decided to carve out the IT division.(社長はIT事業部をカーブアウトすることを決めた)」のようにして使うことができます。
カーブアウトの意味を読み取れるようになろう
カーブアウトの意味は、「切り出す」「分裂する」です。
会社分割の話として使われる言葉で、「企業が事業の一部や子会社を切り離して、分離すること」などの意味を表します。
類語は「スピンオフ」と「スピンアウト」ですが、この2つはカーブアウトの一種として扱われるときと、別の言葉として区別して用いられるときがあります。カーブアウトと「スピンオフ」「スピンアウト」がそれぞれどのような意味合いで使われているのか、文脈から読み取れるようになりましょう。