「既視感」とは?
「既視感」の読み方は「きしかん」です。「がいしかん」と読んでしまう人もいますが、これは間違い。正しく読めるようにしっかり覚えておきましょう。
次の意味をもつ言葉です。
「既視感」をもっとくわしく
既視感は、過去にそのような経験をしたことがなく、そのものを知らないはずなのに「よく知っている。すごくなつかしい」という感覚が伴います。
その体験をした覚えはあるのに、いつどこでその体験をしたのか思い出せない、そのような不思議な感覚のことをいいます。
「既視感」の誤用が生まれ世間に広まる
「既視感」の正しい意味は先ほど紹介した通りなのですが、2010年代にネット上や若者たちの間で、次のような間違った意味で使われ始めます。
間違ったこの意味が世間に広まっていき、現代では正しい意味の「既視感」よりも頻繁に用いられるようになっています。
さらに、この誤用の意味からニュアンスが広がり、「新鮮味がない」の意味でも「既視感」が使用されるようになりました。
「既視感」の原因
正しい意味である「一度も見たことも体験もしたこともないのに起こる既視感」の原因は、はっきりとは解明されていません。
しかし、研究は進められていて、次のような説が発表されています。
類似性認知メカニズムが原因
人間の脳には、過去に見たり体験したりしたことがある事柄に似た未経験の事柄に接したとき、類似した過去の経験の記憶が自動的に思い起こされる働きがあります。そしてときに脳が「この状況は経験済みの事柄だ」と誤認し、「経験済み」という信号を誤って発信してしまう場合があるのです。
しかし、脳には信号の間違いに気づく機能もあり、「この状況は未経験だ」と気づいた瞬間に訂正信号が脳全体に発信されます。
その結果、経験したことがないのに経験したことがあるような気が強くする「既視感」を覚えると考えられています。
「既視感」が起こりやすいのはこんなとき
「既視感」は、寝不足で脳が疲れているときなどに多くなるといわれています。頻繁に既視感がある人は、睡眠時間を多くとるようにしてみてください。
また、「既視感」は現在体験している事柄と、記憶にある過去の体験が似ているほど経験しやすくなります。
「既視感」が起こりやすい場所
「既視感」は、とくに並木道や古い町並み、公園、校舎、神社仏閣などを目にしたときに経験する場合が多いです。これらは、あちこちで作られていて私たちが目にする機会が多いもので、しかも似たような作りをしています。
例えば、あちこちの学校の校舎を目にする経験を重ねると、複数の学校の校舎の特徴が混ざりあい、細部は忘れられた形での校舎の典型的光景が脳に記憶されます。そしてあるとき、どこかでまだ目にしたことのない校舎を目にすると、記憶の中の校舎の典型的光景が再生されます。
校舎の典型的光景は、校舎というものの典型的な情報の塊で、いま目にしている現実の校舎との共通点もおのずと多くなるため、脳の誤認が起きやすくなるのです。
「既視感」の使い方・例文
「既視感」についてわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・頻繁に起こる既視感が気持ち悪い。
・既視感があると思ったら、昨夜の夢で見た風景だった。
・既視感の正体がようやくわかった。
・この作品は、設定の既視感がすごいが予想外に面白い。
「既視感を感じる」や「既視感感じる」という言い回しもよく使われますが、この表現は違和感があるといわれることも多いです。それは、「既視感」と「感じる」で「感」の字が重なっているため。
日本語として間違った表現ではないですが、漢字が重複していることで言い回しにくどさが出てしまいます。「既視感を覚える」「既視感がある」などに言い換えることをおすすめします。
「既視感」の類語・類義語・言い換え表現
「既視感」の類語は「デジャブ」です。
「デジャブ」はフランス語「déjà vu(デジャヴュ)」が英語の「deja-vu(デジャブ)」になり、そこからカタカナ語になった言葉。日本語では「既視感」と訳されます。
基本的には「既視感」と「デジャブ」は同じ意味です。しかし、「デジャブ」は「既視感」と違い、誤用から生まれた「過去にどこかで見た覚えがあること」の意味ではあまり使われません。
・デジャブのようなホームランに観衆が沸いた。
「既視感」は英語だと?
「既視感」は英語だと、類語「デジャブ」の解説で紹介した「deja-vu」を使って表します。
「デジャブ」とセットで覚えてしまいましょう。
「既視感」の本来の意味も覚えておこう
「既視感」の意味は「一度も見たことも体験したこともないのに、すでにどこかで経験したことがあるように感じられること」。
「過去にどこかで見た覚えがあること」や「新鮮味がない」の意味で使用されることが多い言葉ですが、この2つは誤用から生まれた意味です。
「既視感」の本来の意味も覚えて、正しい意味でも使えるようになりましょう。