「ご芳志」とはどんな言葉?
「ご芳志」の意味は「相手のお気遣い」。他人の親切な心や気持ちを敬っていう言葉です。
「ご芳志」の類語は、「ご厚志」「ご恵贈」「ご芳心」「ご芳情」「ご厚情」。対義語は「寸志」「薄謝」「松の葉」です。
「ご芳志」を英語で表現するときには、「kind intentions」や「kindness」を使ってください。
「ご芳志」の意味は?読み方は?
「ご芳志」は「ごほうし」と読みます。主に送別会や歓迎会、祝賀会、講演会、葬儀といった改まった場や、季節のあいさつなどで金品をいただいたときに用いる表現です。
たとえば、次のようなときに「ご芳志」を使います。
・会に参加していない上司がお金を払ってくれたとき
・会の主賓(しゅひん)や無料招待のお客様が、気持ちとしてお金や品物を持ってきてくれたとき
・葬儀で香典や供物、供花、弔電などをいただいたとき
・協賛金をいただいたとき
・寄付金をいただいたとき
・お歳暮やお中元などをいただいたとき
これらの共通点は、マナーとして払ったり贈ったりするべきかどうかはともかく、払う義務はないこと。
つまり、上司やお客様など目上の人が、本来は払う必要はないのに好意で負担して贈ってくれたお金や品物を「ご芳志」といいます。
主賓からも会費を徴収することになっている場合は、「ご芳志」とはいわない。
「ご芳志」は二重敬語?
「ご芳志」の「芳」と「志」は、次のような意味をもつ漢字です。
・かんばしい。いい香りがする
・評判がいい。ほまれ
・他人の物事に冠する敬称
・思いやる気持ち
・書きしるす。書いたもの
・「志摩(しま)の国」の略
「芳志」は「思いやる気持ち」を「敬う」言葉で、「芳志」だけでも「相手のお気遣い」という意味の尊敬語になります。
「ご芳志」は尊敬語の「芳志」に、さらに尊敬のニュアンスを付け加える接頭語の「ご」をつけたものなので、二重敬語であると考える人もいます。
しかし、二重敬語はすべてが間違いというわけではありません。慣習として日本語に定着しているものは使うことが許容されています。
「ご芳志」は鎌倉時代にはすでに使用されていた古い日本語のため、二重敬語であったとしても問題なく用いることができます。
御芳志とは?
「ご芳志」は「御芳志」と書かれる場合があります。「ご」が漢字表記の「御」になっただけなので、「ご芳志」と「御芳志」の意味は同じです。
お礼状を書くときなど、「ご芳志」を書き言葉で用いるときは、ひらがな・漢字どちらの書き方でも問題ないので好きな表記を使ってください。
「ご芳志」はありがたくいただく
「ご芳志」はありがたくいただくのがマナーです。
相手に丁寧にお礼の言葉を述べ、幹事は会の参加者に「ご芳志」をいただいたことを報告します。報告では、「ご芳志」をいただいた相手の名前は知らせますが、金額は伏せてください。
後日、「ご芳志」のお礼状を送るとさらに丁寧な対応になります。
「ご芳志」を辞退しているときには?
事前に「ご芳志の辞退」を伝えている場合には、「大変恐縮ですが、ご芳志は辞退させていただいております」など、丁寧な言葉で一度はお断りしてください。
それでも受け取ってほしいといわれたときには、ありがたく受け取るのが大人の対応ですが、このときに重要なのは全員に同じ対応を取ることです。
その人ごとに対応が違うと、「受け取るなら持ってきたのに」と後からトラブルになる可能性があります。
辞退しているのに郵送されてきたら?
ご芳志を辞退しているのに郵送されてきた場合は、送り返したりはせずそのまま受け取るのが一般的なマナーです。
コンプライアンスなどの関係でご芳志を受け取れないときには、贈り主に感謝の言葉とご芳志を受け取れない理由、さらにお詫びの言葉と返送させてもらうことを書いた手紙を先に送ります。
その後、ご芳志を開封せずに上から再包装して、丁寧に返送してください。
「ご芳志」の使い方を例文で学ぼう
ご芳志の意味やマナーがわかったら、次は言葉の使い方を例文でイメージしてみましょう。
・本日は多大なるご芳志を賜り、誠にありがとうございます。
・社員一丸となって業務に邁進することで、みなさまからのご芳志に応えてまいります。
・社長から過分なご芳志をいただきました。社長、本当にありがとうございます。
・ご芳志は固くご辞退申し上げます。
「ご芳志を賜り」の「賜る」は「もらう」の謙譲語で、「いただく」よりも丁寧な敬語表現です。
「ご芳志」の類語
「ご芳志」には次のような類語があります。それぞれの読み方と意味を確認しましょう。
ご恵贈(ごけいぞう):人から金品や書籍などを贈られることを敬っていった言葉
ご芳心(ごほうしん):他人の親切な心を敬っていう言葉。他人に親切な気持ちだけでつくすこと
ご芳情(ごほうじょう):他人の思いやりの心を敬っていう言葉
ご厚情(ごこうじょう):厚いなさけ。心からの思いやりの気持ち
「ご芳志」の対義語
「ご芳志」は、相手の好意でお金や品物をいただいたときに用いる敬語です。自分があげる側になったときには使えません。
自分があげるときに使用できる「ご芳志」の対義語もおさえておきましょう。
薄謝(はくしゃ):わずかな謝礼。目上の人が目下の相手に感謝の気持ちを込めて金品を贈るときに自分をへりくだっていう言葉
松の葉(まつのは):細い松の葉で包めてしまうほどわずかなもの。寸志とほぼ同じ意味。のし紙の表書きに使う言葉で、身分の上下に関わらず使用できる
これらの言葉は自分の贈り物を謙遜した表現です。封筒やのし紙に「寸志」のように書かれていたとしても、受け取った側が「寸志をいただきました」といってしまうのは大変失礼なので注意しましょう。
お礼や報告するときには、「ご芳志をいただきました」のように言い換えてください。
「ご芳志」の英語表現
「ご芳志」は英語だと、「kind intentions」や「kindness」と表現されます。
「kind」は「親切な」、「 intentions」は「意図」という意味の単語で、「kind intentions」で「親切」や「ご芳志」のように訳されます。
「kindness」も「親切」という意味です。
ご芳志を正しく使えるようになろう
ご芳志は、改まったシチュエーションで使用する敬語です。
日常の業務で用いる言葉ではありませんが、正しいマナーがとくに要求されるシーンで使う言葉なので、社会人として正確な知識を身に着けておかなければなりません。
いざそのときが来たときに慌てないように、ご芳志の意味や使い方を整理して頭に入れておきましょう。