「シームレス」とは「継ぎ目がない」という意味
「シームレスショーツ」「シームレスパンツ」のように、下着の名称の中で目にすることが多い「シームレス」は、「継ぎ目がない」の意味をもつカタカナ用語です。しかし、実は衣類のほか、ビジネスシーンでもまた別の意味で使われているため、何を指すのかは状況に応じて判断しなければなりません。
本記事では、カタカナ用語「シームレス」のもとになっている英語や、業界ごとの「シームレス」の意味のほか、会話での使い方などについてもわかりやすく解説します。
「シームレス」の英語は「seamless」
「シームレス」は、「seam=縫い目」に「less=~がない」がついている単語で、「seamless」
表記し、次の意味をもつ単語として使われています。
・(衣類などが)継ぎ目のない、縫い目のない
・(移行などが)途切れない
また、対義語としては、「intermittent=時々とぎれる、断続する」があてはまるので、セットで覚えておくと便利です。
日本語においての「シームレス」とは
日本でカタカナ用語として使われている「シームレス」は、広い意味では「継ぎ目がない」ことを指していますが、業界によってニュアンスが異なります。各業界で何を「シームレス」と呼ぶのか、ここでチェックしておきましょう。
また、会話での使い方の例文も紹介しておくので、場面を想像しながら読んでみてください。
アパレル業界
「シームレス」という言葉を耳にして、多くの人が真っ先に頭に思い浮かべるのが、アパレル業界の「縫い目がない」の意味でしょう。また、肌にフィットし、柔らかい素材で作られているのも特徴で、女性用の下着だけではなく、現代では男性用にも採用されています。
IT業界
業務を遂行するうえで、ひとつのパソコンに複数のシステムやソフトを入れていることがありますよね。たとえば、パソコン上のシステムAからシステムBに移行する際、ユーザーが意識することなく操作がスムーズに行えている状態、これが「シームレス」ということになります。
また、スマホにBluetoothイヤホンを接続した状態で車に乗り込んでエンジンをかけると、自動的に車のハンズフリー機能へ接続される、これも「シームレスな移行」というわけです。
金融業界
金融業界においては、証券、保険などの支払いを、同じ銀行口座内で完了できることを「シームレス」といいます。
また、スマホの利用が生活の一部になっている現代においては、クレジットカードを事前にアプリに登録し、レジでカードを出すことなくスムーズな決済が可能です。これも「決済のシームレス化」ということになります。
そのほか、ひとつのスマホに、PayPay、LINE Payなど、複数のアプリを登録し、「シームレスに切り替えができる」のも、現代の決済システムの特徴といえるでしょう。
建築業界
建築業界においては、境目のない間取りや構造を「シームレス」といいます。
たとえば、リビングの窓からウッドデッキに出て、さらにそこから庭に続く、屋内と屋外が一体になった構造があり、これが「シームレス」になります。また、キッチンとリビングの境目をなくし、一体感をもたせた間取りも「シームレスな間取り」といえます。そのほか、床の目地をなくした仕上げのことを「シームレスフロア」と呼びます。
シームレスな照明とは?
天井などに取り付けられている従来の蛍光灯は、両端に取り付けるためのエッジがついており、その部分は発光しません。一方で、シームレスな照明器具は、エッジの部分まで発光するように作られており、継ぎ目のない照明を施すことができます。このような照明は「シームレスライン」や「シームレスラインランプ」などと呼ばれています。
医療業界
怪我や病気の重さによっては、「急性期→回復期→維持期→リハビリ期」と全快までの段階があり、それぞれ専門の科、医師、看護者が変わっていきます。この流れをスムーズに行えるようにするシステムを「シームレスな医療」や「シームレスケア」と呼んでいます。
ケアのシステムについては医療機関によってさまざまです。たとえば、総合病院であれば一つの病院内で科が変わるだけで済みますが、リハビリ専門の病院などは、他の病院と提携し、スムーズに患者を受け入れられるシステムが構築されていることが多いです。
交通業界
交通業界においては、ひとつの交通系ICカードでさまざまな交通手段を利用できるシステムを「シームレス」と呼んでいます。
ゲーム業界
ゲーム業界では、主にバトルが発生するゲームでよく使われいる「シームレスバトル」が有名です。ロールプレイングなどでは、フィールドを移動中にバトルが発生しますが、その際、バトル画面に切り変わらず、フィールド内で行われるタイプがあります。これを「シームレスバトル」といいます。
「シームレス」の類語・言い換え
「シームレス」をほかの言葉に言い換えたい場合は次の言葉が使えます。
スムーズ
「スムーズ」は、「物事が滞らずすらすらと進むさま」という意味があります。ITやゲームなど、「流れが良い」というニュアンスで使われている「シームレス」の類語として使えます。
なめらか/スラスラ
「スムーズ」の日本語表現として、「なめらか」「スラスラ」「サクサク」などがあります。「スラスラ」や「サクサク」はとてもカジュアルな表現なので、ビジネスシーンの使い方には注意が必要です。
継ぎ目がない/縫い目がない
流れの良さを表す「シームレス」の場合には使えませんが、アパレル、建築など、構造上の「シームレス」の類語として使えます。
「シームレス〇〇」を紹介
現代では「シームレス〇〇」という名称がつけられた物が存在します。「シームレス」の意味を理解すると納得できるものが多いので、ここで少し紹介しておきます。
シームレスダウン
ユニクロなどでも販売されている「シームレスダウン」とは、通常ダウンジャケットに施されているキルティングの縫い目を限りなく減らしたものを指します。
針を刺さないため、中に入っている羽が出にくいというメリットがありますが、クリーニングを重ねるうえで、圧着部分が剝がれ、キルティング加工がなくなる可能性が高くなるデメリットもあります。
シームレスパンツ
主に、男性用の縫い目のない下着を「シームレスパンツ」といいます。女性用は一般的に「シームレスショーツ」と呼ばれています。
シームレスせん
象印から発売されている、水筒やボトルの中で、「せん」と「パッキン」がひとつになった仕様のものを「シームレスせん」といいます。洗いやすさ、洗ったあとのパッキンのつけ忘れ、パッキンの破損がないといったメリットがあることで人気のようです。
シームレス地質図
県や市などの境界線に引かれている線をなくした地図を「シームレス地質図」といいます。
「シームレス」の意味を正しく理解し、状況に応じて使い分けよう
「シームレス」は業界ごとにさまざまな意味をもって使われています。意味をきちんと理解するとともに、言い換え表現もマスターし、状況に応じて正しく解釈できるようにしておきましょう。