モラルハザードとは?保険・金融・経済分野での意味、例文、言い換え表現も紹介

「モラルハザード」とは「道徳的危険」のこと

「モラルハザード」は、「道徳的危険」を指す言葉です。なんとなく、「モラルに危険がせまっている」と予想はできるものの、説明はきちんとできない人は多いのではないでしょうか。

本記事では「モラルハザード」とはどういうことをいうのかを解説するとともに、英語表現、類語、言い換え表現、関連語なども紹介します。

「モラルハザード」の英語は「moral hazard」

「モラルハザード」は、英語で「moral hazard」できます。それぞれの意味は次のとおりです。

【moral】
・道徳上の
・道徳的な
・分別の
・教訓 など
【hazard】
・偶然
・危険
・危険を引き起こすもの
・危険にさらす など

そして、「moral hazard」という熟語では「保険をかけていることで、逆に故意や不注意での事故が起こる危険性」という意味になります。

・create a amoral hazard
(モラルハザードを起こす)
・reduce moral hazard
(モラルハザードを減少させる)

日本語においての「モラルハザード」とは

もとは保険用語で、英語とほぼ同じく、「保険をかけていることで、逆に故意や不注意での事故が起こる危険性」を意味するカタカナ用語でした。

たとえば、車両保険に加入していなかった場合、事故を起こすと全てが自己責任・自己負担になるため、十分に注意して運転をするものです。しかし、保険に入っていると「保険があるから多少大丈夫」と注意散漫になる人がいます。こういった状況が「モラルハザード」です。

また、医療保険の場合も、「病気になっても保険があるから」と、自分自身での健康管理を怠る状態も同じといえます。

現代では、これら保険分野においての「モラルハザード」の意味が、少しずつ変化し、次のような意味でも使われるようになりました。

・道徳*的危険
・責任感の欠如
・倫理**観の欠如

(道徳*:社会生活をおくるうえで、ひとりひとりが守るべき行為の基準。)
(倫理**:人として守り行うべき道)

そして、保険分野以外では、若干ニュアンスが異なるので、少し解説しておきます。

金融・経済分野におけるモラルハザード

金融の分野においては、株主や預金者などが、リスクを考えずに金融商品を運用した状態をいいます。

そのほか、経済分野においてはまたニュアンスが異なります。

たとえば、倒産の危機に陥った企業があったとします。その後、資金援助が行われる見込みがたった際、それを見越してリスク回避を行わなくなる、経営倫理が欠如した状態を「モラルハザード」と呼んでいます。

「モラルハザード」と「逆選択」の違い

通常であれば、専門家である保険会社のほうが、契約者よりもより多くの情報をもっているため、利益を多く得ることのできる契約が勧められます。これは「通常の選択」にあたります。

しかし、保険契約を結ぶ際、契約者の情報が不足していることで、保険会社にとってリスクの高い商品を、契約者が選んでしまう場合があります。これを「逆選択」といいます

そのほか、ビジネスシーンにおいても、通常であれば、品質の低い商品が市場に残り、高品質のものが先になくなります。しかし、供給者と需要者との間で情報の格差がある場合、高品質の商品が残ってしまいます。こういった現象も「逆選択」となります。

「モラルハザード」の使い方・例文

日常生活の中ではあまり使うことがないかもしれませんが、いざというときのために、会話ではどのように登場するのかを確認しておきましょう。

例文
・この死亡保険の申請、モラルハザードじゃないか?ちょっと詳しく調査してもらえるか?
・融資が決まった途端にこんな投資をするとは…完全にモラルハザードだね。
・保険に入っているからといって危険運転を繰り返す人は、完全なモラルハザードだといえる。

「モラルハザード」の類語・言い換え

「モラルハザード」を日本語で言い換える場合は、次の言葉が使えます。

モラルハザードの言い換え表現

・非道徳的な
・モラルに反した
・凶悪な
・非常識な
・常識に反した
・知能犯
・悪賢い
・悪質な など

「モラルハザード」を言い換え表現に変えた例文もいくつかピックアップして紹介しておきます。

例文
・車両保険に入っているからといっていい加減な運転をする人はモラルハザードといえる。
・車両保険に入っているからといっていい加減な運転をする人は悪質な人である。

例文
・ほんの一週間前までは倒産の危機って言ってたのに、こんなにハイリスクな投資をするなんて、モラルハザードとしか言いようがない。
・ほんの一週間前までは倒産の危機って言ってたのに、こんなにハイリスクな投資をするなんて、非常識としか言いようがない。

「モラルハザード」の関連語

日本には、「モラルハザード」に意味が似た関連語がいくつかあります。言い換えとしても使えるのか、別の言葉として使うのかを判断するためにも一緒に覚えておきましょう

モラルハラスメント

「モラルハラスメント」とは、倫理や道徳に反した嫌がらせで、暴力をふるうのではなく、相手の心理を傷つけることをいいます。実際にはどんなことをすればモラルハラスメントになるのか、例をいくつかあげてみました。

・人格を否定する
・暴言を吐く
・見下した態度をとる
・無視をし続ける
・その人の失敗を責め続ける など

このほかにも、現代の日本にはさまざまなハラスメントがあるので、少し紹介しておきます。

【パワーハラスメント(パワハラ)】
職場の上司が、権威をふりかざし、精神的・身体的な苦痛を与えることをいいます。
【マリッジハラスメント(マリハラ)】
独身の人に対し、無理に交際を迫ったり、結婚を促したりすることをいいます。
【エイジハラスメント(エイハラ)】
年齢を理由にしたハラスメントのことをいいます。「ゆとり世代だからできない」はエイハラにあたります。

モンスター〇〇

倫理に反した行動や言動をする人が「モンスター○○」と呼ばれています。一部例をあげておきます。

【モンスターペアレント】
学校、幼稚園、教育委員会などにたいし、自己中心的で、理不尽な要求をする親をさします。
【モンスターチルドレン】
モンスターペアレントから派生した言葉で、学校などで、教職員をバカにしたり、悪賢く反抗したりする子供のことをいいます。
【モンスターカスタマー】
企業に対し、無理な要求や理不尽な要求をする顧客のことをいいます。
【モンスター学生】
注意すると逆ギレをするような学生のことをいいます。たとえば、授業中に寝ている学生を注意しても言うことを聞かない学生がいたとします。その学生に退出するよう伝えると、授業を受ける権利を主張してくる。こんな行為をする学生は「モンスター学生」といえます。

職場でも日常でも「モラルハザード」を起こさないようにしよう

モラルハザードを起こしていると、人として信用されにくくなります。特にビジネスシーンにおいては、企業のイメージに直結する場合もあるため、モラルに反しない言動をするようにしましょう。