フードマイレージとは?日本の現状、地産地消状況、計算方法もわかりやすく紹介

「フードマイレージ」とは「食料の輸送距離」のこと

マイレージといえば、移動距離や利用料金でポイントが貯まる飛行機やETCのサービスが頭に浮かぶと思います。「フードマイレージ」もこれらと似ており、「食料の輸送距離」、もう少し簡単にいうと、食料の生産地から消費者の食卓に並ぶまでに移動してきた距離を意味します。

フードマイレージの削減は、環境負荷の軽減につながるため、農林水産省の公式ページでも取り上げられています。本記事では、由来や計算方法なども含め、「フードマイレージ」の意味について解説していきます。

「フードマイレージ」の英語は「food mileage」

「フードマイレージ」の英語は「food」+「mileage」の2つの単語から成り立つ熟語で、それぞれの意味は次のとおりです。

【food】
・食べ物、食品
・(動物の)餌
・(植物の)肥料
【mileage】
・総走行距離
・走行可能距離
・(距離を基準として支払われる)旅費
・(靴やタイヤなどの)耐用距離

「food mileage」で「食料の距離」となりますが、フードマイレージは和製英語で、英語圏では「フードマイルズ(food miles)」が正式な呼び方です。

これは、イギリスの消費者運動家が、「輸送で発生する排出ガスは少ないほうがよい」というエコのコンセプトのもと提唱した「フードマイルズ(food miles)」に由来したものです。

日本においての「フードマイレージ」とは

日本では、水質汚染、大気汚染、土壌汚染など、環境への影響を及ぼすものを抑えるため、さまざまな環境保全に取り組んでいます。

食料品の輸送も、多くの燃料を使用し、それを使うことによって排出される二酸化炭素が環境の汚染につながります。輸送距離が長くなればなるほど環境への負担も大きくなります。このことから、農林水産省において、食料分野における環境保全対策として「フードマイレージ」をあげています。
(参考資料:農林水産省 環境保全に向けた食料分野での取り組み

フードマイレージの計算方法

フードマイレージは、「食料の輸送量×輸送距離」で算出し、単位は「t・km(トンキロメートル)」です。例えば、100tの肉を100km輸送する場合は、100×100=10,000t・kmとなるわけです。

ただし、この計算には、トラック、船舶などの輸送手段は考慮されていないため、二酸化炭素の排出量の違いは反映されていません

フードマイレージの日本の現状

日本は、小麦、肉、魚、果物、野菜など、非常に多くの食料品を輸入に頼っているため、「フードマイレージ」は他国と比較しても断トツに高いのが現状です。その主な理由は次の3つだとされています。

・食料品自給率が低い
・島国のため輸送距離が長くなる
・食生活が欧米化している

「フードマイレージ」を削減するには?

「フードマイレージ」を削減するには、輸送距離を短くすることです。そのための日本での課題としては、「国内生産の拡大」「地産地消の推奨」があげられています。

地産地消もメリットだけではない

「地産地消(ちさんちしょう)」とは、地元で生産したものを地元で消費することをいいます。当然のことですが、食料の輸送距離は輸入に比べて各段に短くなるため、「フードマイレージ」削減には有効な手段です。しかし、100%地産地消がいいとは言いきれないんです

そこで、どんなメリットやデメリットがあるのかをまとめてみました。

メリット

・輸送距離が短縮され、二酸化炭素排出量削減が可能となる。
・中間輸送費が省けるため、生産者の利益増加につながる。
・収穫から販売までの時間が短くなるため、新鮮な食品が購入できる。
・地域内の交流が盛んになる。 など

デメリット

・農家の負担が増加する。
・大量の流通には適さない。
・物によってはコストアップになる場合がある。
・地域内の物だけでは品揃えが少なくなる。 など

地産地消の事例

地産地消のわかりやすい例としては、道の駅や産直市場などで販売されている、地元野菜や、農家が手作りした加工品、地元の養鶏所で採取された卵、地元養蜂場で造られた蜂蜜などがあります。

なお、どのくらいの自給率なのかは、農林水産省でデータをまとめていますので、参考資料をご覧ください。
(参考資料:農林水産省 日本の食料自給率

地産地消に取り組む企業例

青森県藤崎町(あおもりけんふじさきまち)にある、しょうゆの製造業者「株式会社中村醸造元」では、しょうゆの原料である大豆、小麦を県内で農業を営んでいる会社と契約栽培を行っています。そして、2004年からは、地元産の原材料を使用した高品質のしょうゆの開発・生産を行っており、「フードマイレージ」の削減に貢献しています。
(参考資料:農林水産省 環境保全に向けた食料分野での取り組み

「フードマイレージ」の使い方・例文

食に関係する企業に勤めていない限りは、会社で耳にすることは少ないと思いますが、「フードマイレージ」がどのように使われているのか、例文でチェックしておきましょう。

例文

・食料品の輸入率が高い日本は、島国なのもありフードマイレージがとても高くなっている。
フードマイレージ削減につながればと、当社では国内産原材料を使っての醤油の製造を開始することにしました。
・食料自給率のアップはフードマイレージ縮減につながり、環境負荷軽減にもなる。

「フードマイレージ」の類語・言い換え

「フードマイレージ」をほかの言葉で言い換えるには、「食料の輸送距離」「食べ物が移動した距離」「食料を運んだ距離」などで表すしかありません。

また、「フードマイレージ」を環境負荷軽減の関連語として取り扱う場合は、次の言葉も類語と考えることができます

・環境汚染
・環境保護
・環境保全
・大気汚染
・輸送エネルギー
・環境変化 など

【番外編】「フードマイレージ」以外の「フード〇〇」を紹介

「フードマイレージ」以外に、食に関する「フード〇〇」という関連語があります。食に関する事柄に接する場合は必要になるので、覚えておくと便利です。

フードロス

人が食べることを目的として作られた食料が、捨てられたり失われたりすることを「フードロス」といいます。たとえば、「農家での生産過程」「貯蔵過程」「加工過程」「流通過程」などでの廃棄が「フードロス」になります。

一方、小売店、レストランなどの外食、一般家庭など、食料品を食べる人の手に渡す状況にある場所からの廃棄は「食品廃棄物」といい、「フードロス」と「食品廃棄物」をあわせたものは「食品ロス」と呼ばれています。

フードシェア

「フードシェア」は「フードシェアリング」の略語で、食品ロスの削減に関する取り組みのひとつを指します。

たとえば、スーパーなどで、閉店時に売れ残ったり、賞味期限の関係で店頭に並べられない商品は、店舗としては廃棄しなければなりません。このような食品をアプリと連携し、登録ユーザーに提供するというサービスがあります。そのひとつとして「TABETE」というアプリがあるので、興味のある人は検索してみてください。

食料品購入の際は「フードマイレージ」を意識してみよう

食料品の生産に従事している人は、「フードマイレージ」を考えなければならないこともあるので、しっかり意味を理解しておきましょう。

また、食料品を消費する立場となった場合は、ぜひ「この食料品はどのくらいの距離を移動してきたのかな?」と、ときどきでも考えるようにしてみてください