「よしなに」とは「いいように」や「よろしく」という意味
古い言い回しのように感じる「よしなに」とは、「いいように」「よろしく」「いい具合になるように」の意味をもつ言葉です。現代で使う人はあまりいないかもしれませんが、古い日本語も知っておきたいものです。
本記事では、「よしなに」の意味や使い方のほか、類語、言い換え、英語表現などについてもわかりやすく紹介します。
「よしなに」の語源・意味
「よしなに」は、どこかの方言のようにも聞こえますが、実は奈良時代より以前に生まれた古語なんです。
天照大御神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の妻が、炎の産屋で三つ子を出産した際、お祝いに駆け付けた4人の県守から「へその緒を祀らせてほしい」と頼まれました。しかしへその緒は3つ。そこで、3つのへその緒を4人で喧嘩なく分けるよう「よしなにとりはからってほしい」と伝えたことが語源とされています。
そこから現代でも大きく変化することなく、「いいように」「うまい具合に」「よろしく」といった意味で使われるようになりました。
「よしなに」の使い方・例文
「よしなに」は古い言い回しで、挨拶や、相手になにかを依頼する場合によく使われます。そして、ある程度決まったフレーズも存在するので、会話に取り入れるのはそれほど難しくはありません。
今後ともよしなによろしくお願いいたします。
本日はお会いできませんでしたが、A様にもどうぞよしなにお伝えください。
例文②は、「よろしく伝えてほしい」といったニュアンスになります。
また、気の知れた相手の場合は、「どうそよしなに」という言い方をすることもあります。
「よしなに」は曖昧な表現なので解釈には注意!
上司の人が年配の場合、「会議の資料だけど、よしなに頼むよ」と依頼されることがあります。意味合いとしては「よい具合に作ってくれ」となりますが、「よい具合」は人によってさまざまです。
例えば、上司は「今進行中のA、B、Cすべての詳しい進捗を記載してほしい」と思っていても、作る側が「ざっくりでOK」と判断した場合は、依頼した上司にとっては「よしなに」ではありません。
そのため、「よしなに」で何かを依頼された場合は、最低限次の内容は確認しておくことをおすすめします。
・いつまでに作成完了すればいいか。
・掲載が必須の項目。
・データで提出すればいいのか、紙ベースがいいのか
・どこで使用する資料なのか。(どこの会議で使うのか決まっていない場合)
「よしなに」は敬語表現になる?
例えば、上司の人に「よしなにお願いいたします」と言った場合、意味としては「いいように、あなたの思うように頼みます」といったニュアンスになります。
そのため、「よしなに」はやわらかい表現ではありますが、敬語表現ではないため、目上の人や取引先の人に使うのは避けたほうが賢明です。
「よしなに」と言われた場合の返し方
「よしなに」と言われても、どんな返事をすればいいのか迷う人も多いと思います。そこで、例としてわかりやすい会話文を紹介しておきます。
Aさん:1時間ほど時間が空いてしまいますがどうぞよしなにしておいてください。
Bさん:わかりました。ありがとうございます。
Aさん:取引先からサンプル品をもらったから、よしなに頼みます。
Bさん:はい、承知いたしました。
「よしなに」の類語・言い換え表現
「よしなに」が「よい具合に」や「いいように」を指す場合は、次の言葉が言い換えとして使えます。
・適宜
・しかるべく
・適切 など
・このあとは適宜報告をしてください。
・しかるべく対応をお願いいたします。
・適切な対応をお願いします。
また、「よしなに」が「よろしく」の意味をもつ場合は、シンプルに「よろしくお願いいたします」「なにとぞよろしくお願いいたします」などが言い換え表現となります。
「よしなに」の英語表現
「よしなに」を英語で表現したい場合は、「適切に」の意味をもつ「appropriately」という単語が使えます。
・ Hope to benefit from your support in the future also as you consider appropriately.
(今後ともよしなにお願いいたします。)
そのほか、少しカジュアルな表現として「as you wish」という熟語もあります。
・Please spend your time the way you wish.
(どうぞよしなに時間をお過ごしください。)
「よしなに」の意味を理解し正しく使おう!
「よしなに」は、古い表現なので、現代ではあまり使う機会はないかもしれません。しかし、日本古来の言葉としては存在しているので、意味や使い方は覚えておきましょう。