ベーシックインカムとは「基礎所得保障」のこと
「ベーシックインカム」とは、国から支払われる「基礎所得保障」を指す言葉です。簡単にいうと、国民全員が無条件にもらえるお給料のようなもので、決められた金額を定期的の給付する社会保障制度のひとつです。
コロナ渦で世帯収入が減った人も多く、ニュースなどでも見聞きすることがある中「こんないいシステムなのになぜ日本では実施されてない?」と疑問に思うところですが、実は、「ベーシックインカム」は、当たり前のように導入するには難しい点も多い制度なんです。
本記事では、「ベーシックインカム」の基本的な仕組み、メリット、デメリット、生活保護との違いについてもわかりやすく紹介します。
「ベーシックインカム」の英語は「basic incme」
「ベーシックインカム」は「basic=基本」「income=収入」の2つの単語から成り立つ熟語で、海外でも導入されているシステムで、「income-support program」とも呼ばれています。
また、カナダにおいては「universal basic income」というため、「UBI」という略語でも広く知られています。
日本においての「ベーシックインカム」とは
日本政府が全国民に対し、決められた金額を定期的に支給するという社会保障制度のことを「ベーシックインカム」といいます。社会保障といわれると、審査が厳しく申請もややこしいイメージをもつ人が多いでしょうが、「ベーシックインカム」は基本的には申請不要で、無条件で現金支給が行われます。
「ベーシックインカム」と「生活保護」の違い
「生活保護」は、最低所得を保障してくれるということでは「ベーシックインカム」と同じで、それに加え、税金や年金の免除、必要に応じて教育費、医療費などの援助も受けられます。
ただし、「ベーシックインカム」は無条件での保障ですが、「生活保護」ではいくつかの条件があるという点で違いがあります。
・世帯収入が就き13万以下であること
・申請時点で使っていない土地などの財産は売却しなければならない。
・パソコン、薄型テレビなど、なくても生活できるものな売却しなければならない場合がある。
・身内などからの援助が受けられない。
・住宅ローンが残っている持ち家は売却しなければならない。 など
ほかにも「生活保護」を受けられるには細かい規定がありますが、ベーシックインカムにはありません。
(参考情報:厚生労働省生活保護制度)
「ベーシックインカム」のメリット・デメリット
「ベーシックインカム」は国が国民に対し、無条件で給付してくれるお金なので、メリットしかないように思いますが、実はデメリットもあるということを認識しておかなければなりません。
メリット
「ベーシックインカム」は、無条件で給付されるというのが最大のメリットではありますが、ほかにもこのような内容があげられます。
【貧困家庭の救済】
最低限の生活が送れる額が保障されるため、貧困家庭の救済が可能となる。
【少子化対策】
世帯ではなく、個人に給付されるため、世帯所得の増加につながる。
【労働意欲の向上】
生活保護や年金の受給には所得制限があり、収入によっては支給が停止され、収入減少につながるため労働意欲が低下しやすい。一方、ベーシックインカムは制限がないため、所得を気にしなくていいため労働意欲が向上しやすい。
【地方の活性化】
ベーシックインカムは、最低限度の生活費を想定して給付されるため、家賃や物価の安い地方に移り住む人が増える。結果、地方の人口増加となり、活性化につながる。
【経済の活性化】
ベーシックインカムで家計に余裕ができた場合は消費するようになるため、経済が活性化する。
【社会保障制度の事務負担の軽減】
生活保護、失業保険、基礎年金など、ベーシックインカムで代用できるものは保障制度をまとめられるため、事務手続きのコストや運用の負担が軽減できる。
デメリット
「ベーシックインカム」を導入するには、国に財源が必要で、すべての国が実施しているわけではありません。また、次の観点からの反対意見もあるので、慎重に検討する必要があります。
【労働意欲の低下】
所得を気にせずに働いても給付を受けられるメリットがある一方、無条件に受給できるということで働かなくなる場合もある。
【経済の発展につながらない】
受給したお金を消費に回せば経済は活気づくが、老後の資金調達のために貯蓄に回す人が増えると経済が活性しない。
【給与カットする企業がでる】
ベーシックインカムでの所得を考慮し、雇い主が給与を減額する可能性がある。
「ベーシックインカム」の使い方・例文
あまり知られていない言葉なのでどのように使うのかイメージがわきにくいかと思います。そこで、例文を用意したので、状況を思い浮かべながらぜひ読んでみてください。
・生活が苦しくても生活保護は受けられないので、せめてベーシックインカムでも導入してくれると助かるのに。
・ベーシックインカムを導入してほしいけど、国にはそんな財源はないだろう。
・ベーシックインカムがあればもっと消費が増えるに違いない。
「ベーシックインカム」の類語・言い換え
「ベーシックインカム」は、「基礎所得保障」以外に、「基本所得保障」「最低生活保障」「国民配当」という言葉への置き換えが可能です。
そのほか、世界的には「Universal basic income」ともいうため、「BI」や「UBI」との略語も使われます。
「ベーシックインカム」の導入国
「ベーシックインカム」はすべての国で導入されているわけではありません。また、実験的に導入し、継続施行しなかった国もあります。では、導入事例も少し見てみましょう。
アメリカ
シカゴでは、2021年10月にアメリカ最大規模のベーシックインカムが承認され、5000の低所得層に対し、1年間に渡り毎月500ドルが支給されます。
また、ミネソタでも2020年に試験導入され、150の低所得世帯に対し、最大18ヵ月間、毎月500ドルが支給されています。
フィンランド
2017年から実験的に導入し、ランダムに選ばれた失業者2000人に対し、失業保険とほぼ同額が支給されました。その後、雇用状態や健康状態を調査し、ストレスの軽減や健康状態の向上は見られたものの、雇用状況に変化はなかったため、この実験導入のみで終了しました。
「ベーシックインカム」は失敗例も理解したうえで導入すべき
無条件に給付される「ベーシックインカム」は、国民にとってはとても魅力的な制度です。しかし、それによりほかの社会保障がなくなると、定額給付を受けることができても、導入前の保障よりも少なくなる可能性があります。
「ベーシックインカム」の導入を求めたいと思う人は、失敗例やデメリットをしっかりと調査するようにしましょう。