「レジリエンス」とは「復元力」「弾力」のこと
「レジリエンス」は、もとは物理学用語として使われていましたが、次第に心理学的な意味でも広く使われるようになりました。そしてさらに、派生し、一般的なビジネスシーンや日常の中においても、「危機からの復元力」「リスクを跳ね返す力」といった意味合いでも使われるようになりました。
本記事では、各分野での意味や使い方のほか、類語、「レジリエンス」を高める方法などについてもわかりやすく紹介します。
なお、反対語は「脆弱性」「脆さ(もろさ)」「もろさや傷つく可能性のある状態」の意味をもつ「ヴァルネラビリティ(Vulnerability)」になるので、これを機に併せて覚えておきましょう。
「レジリエンス」の英語は「resilience」
「レジリエンス」は英語で「resilience」と表記し、次のような意味をもつ単語として使われています。
・(病気・不幸・困難などからの)回復力、復活力
・(変形された物が元に戻る)復元力、弾力
「resilience」を使った熟語もわかりやすいものを紹介しておきます。
・resilience of financial markets(金融市場の回復力)
・have the essential margin of resilience to ~
(~するために必要な回復力を持つ)
・demonstrate impressive resilience(目覚ましい回復力を示す)
・We need to work on being more resilience.
(もっとレジリエンスを高める努力が必要だ。)
・skin resilience(肌の弾力)
日本語においての「レジリエンス」とは
日本語の中で使われる「レジリエンス」は、広い意味では「復元力」「回復力」「弾力」ですが、分野によっては詳しい意味は異なります。ここでは、「心理学」「ビジネス」「環境」についての「レジリエンス」について解説します。
「心理学」においてのレジリエンス
心理学用語としての「レジリエンス」とは、簡単にいうと精神の「回復力」「復元力」ですが、困難に直面した際に「上手に対応する能力」「対応していく過程」「対応した結果」を指すこともあります。
また、精神的に緊張などの刺激が加わることを「ストレスがかかる」といいますが、ストレスを跳ね返す力や、ストレスに上手に立ち向かう力も「レジリエンス」といえます。
・そんなにレジリエンスが低いんじゃストレスが多いこの職種は難しいのではないか?
・もう立ち直ったの?彼ほど高いレジリエンスをもった人見たことないわ。
「ビジネス」においてのレジリエンス
ビジネスシーンにおいての「レジリエンス」とは、トラブルが起こった際の「回復力」や「回復力」を指すことが多いです。
たとえば、急に生産のための材料が不足した場合、変わりのものを調達したり、顧客との納期調整ができなければ、会社の経営はあっという間に成り立たなくなってしまいます。こういった緊急事態への対応が「レジリエンス」になります。
また、企業運営にとって大切な存在である、従業員のメンタル管理面において心理学的な意味を指して使われることがあります。企業によっては、業務遂行のうえでストレスを受けた際の受け止め方や、ネガティブになったときの感情の切り替え方などを学ぶ、レジリエンス向上のための研修をするところがあります。
・組織力のUPには従業員のレジリエンス向上が必要だ。
・どんなに困難な状況に陥っても乗り切っているA社はレジリエンスの高い会社といえるだろう。
「環境」においてのレジリエンス
環境においての「レジリエンス」とは、自然災害や気候変動による悪影響への対処能力や回復能力のことを指します。
災害に関しては「災害レジリエンス」という言葉も出てきており、災害が起こった際に、スムーズに復興していく力を指してこのように呼ばれています。
・災害にあった際に、都市機能をいち早く復興するためには、高い災害レジリエンスが必要だ。
・B市の水害を教訓に、レジリエンスを強化していくことになった。
「レジリエンス」が高い人の特徴
ビジネスシーンだけでなく日常生活においても、なんらかの問題がおき、対処が必要なことがあるでしょう。しかし、自分だけではどうにもならない場合は、レジリエンスが高い相談相手が欲しいものです。
では、レジリエンスが高い人とはどんな人を指すのでしょうか。主な特徴をまとめてみました。
・柔軟な考え方ができる。
・自身の感情をきちんとコントロールできる。
・なにがあっても「きっとうまくいく」という楽観的な考え方ができる。
・常に挑戦し続けられる。
・コミュニケーション力がある。
・自責*思考の持ち主である。(自責*:自分で自分のあやまちを責めること。)
「レジリエンス」を高める方法
「レジリエンス」は、持って生まれたものではなく、努力次第で高めることが可能です。ここでは、「レジリエンス」を高めるためのポイントをご紹介します。
・現実的な目標を立てる。
・失敗したときは「気づきの場」と考える。
・自分に自信をもつ。
・一呼吸おいて正しい判断ができるよう努力する。
・良い人間関係を築く。
・レジリエンスに関するセミナーなどを受講する。
組織においてのレジリエンスを高めるには?
組織として困難に対して強くなるにはレジリエンスを高める必要があります。個人としてのレジリエンスの強化もその方法の一つですが、そのほかにも以下のようなポイントがあります。
・従業員が心地よく働ける職場環境をつくる。
・個人の失敗も会社の失敗事例とし、正しく検証できるようにする。
・環境や状況の変化に柔軟に対応できるようにする。
・企業全体のセキュリティの強化を図る。
専門家による「レジリエンス教育」とは
日本には、レジリエンスを育てるためのプログラムをいろいろ提供している、「日本ポジティブ教育協会」という団体があります。
自分自身のレジリエンスを高めたい人のみではなく、レジリエンスの教育を実施する人向けの講座もあるので、興味のある人は公式サイトをチェックしてみてください。
(データ参照元:一般社団法人日本ポジティブ教育協会)
「レジリエンス」の類語・言い換え
「レジリエンス」を日本語で言い換えたい場合は次のような言葉が使えます。
・復元力
・生命力
・耐久性
・回復力
・耐障害性
・耐性 など
・あの会社は問題が起こった際の回復力が他社よりもはるかに高いといえる。
また、これらのほかにも似た言葉として「ストレス耐性(Stress Tolerance)」「ハーディネス(Hardiness)」があります。
ストレスを感じたときに、それにどのくらい耐えられるのかの程度を指す。
強いストレスにさらされても、それを跳ね返してしまう強い性格の特性のこと。
「レジリエンス」と「レジリエント」の違い
「レジリエンス=復元性、回復性」の名詞形であるのに対し、「レジリエント=復元性のある、回復性のある」の形容動詞の形であるという違いがあります。
そして、「レジリエンス」は、「レジリエンスを高める」「レジリエンスの向上」といった使い方をしますが、「レジリエント」は、「レジリエントな人」「レジリエントな企業」など、特性を表す際に使います。
困難に負けないよう「レジリエンス」を高めよう
日常生活でも、ビジネスシーンでも、多少なりとも困難に遭遇することはあります。しかし、それらの困難に負けていては前に進めません。少しずつでもレジリエンスを高め、困難やストレスに耐えられるような人になってください。