「漸く」とはどんな言葉?
「漸く」の意味は、「やっとのことで」「何とか」「だんだん」「ゆっくりと」です。
類語は、「とうとう」「どうにか」「次第に」。対義語は、「早くも」「余裕で」「一気に」です。
英語で表すときは、「finally」「gradually」「barely」などを使います。
「漸く」とはどんな意味?読み方は?
「漸く」は「ようやく」と読みます。複数の意味をもつ言葉で、次のようなニュアンスで使われます。
②苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか
③物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん
④ゆっくりと。おもむろに
「漸く」の由来
「漸く」は、もともとは漢文訓読で使われた言葉で、「漸ク」と書かれていました。仮名文学の「ようよう(漸)」に対する表現として用いられた言葉です。
もとになった言葉ははっきりとわかっておらず、一説では「ややく」に「う」の音が足されてできた語ではないかといわれています。また、「やくやく」が変化した「やをやく」が、さらに変化した語ではないかとも考えられています。
「ややく」と「やくやく」は、次の意味で使われていました。
・だんだんと
・順を追って
・だんだん
「漸」の漢字からも意味を考えられる
「漸」という漢字からも、「漸く」のニュアンスを考えることができます。
「漸」は水を意味する「さんずい」と刀で切ることを表す「斬」を組み合わせた漢字です。
川の流れなど、水流を切ることは非常に難しく時間のかかることですよね。このことから「漸く」は、困難なことや時間のかかることがやっと実現できたことを表していると推測できます。
「漸く」の使い方を例文で学ぼう
「漸く」の意味がわかったら、言葉の使い方を例文でイメージしてみましょう。
「やっとのことで」の例文
「漸く」は、「予想以上に時間がかかって、やっと待ち望んでいた事柄が実現する様子」や「苦労してやっと目標を達成した様子」を表す文脈で使われます。
・ベルを鳴らし続け漸く電話が繋がった。
・技術班の専門的すぎる解説を漸くして理解できた。
・漸く技術開発に進展が見られた。
「ギリギリ」「かろうじて」の例文
「漸く」は「ギリギリ目標を達成した様子」や「かろうじて目標を達成した様子」を表す文脈でも使われます。
・一触即発の状況を漸く回避した。
「徐々に」「ゆっくり」の例文
「漸く」は「徐々に進行する様子」や「ゆっくり進行する様子」を表す文脈でも使われています。
「漸く」の類語・言い換え表現
「漸く」の類語は、「漸く」で表されているニュアンスによって変わってきます。
「やっとのことで」のニュアンスで「漸く」を使っているときの類語は「とうとう」。「ギリギリ」「かろうじて」の場合は「どうにか」。「徐々に」「ゆっくり」のケースでは、「次第に」が言い換え語になります。
・地図を頼りにどうにか目的地にたどり着くことができた。
・リスクが次第に高まっている。
「漸く」の対義語
「漸く」の対義語も、「漸く」のニュアンスによって変わります。
「やっとのことで」の意味の「漸く」の対義語は「早くも」。「ギリギリ」「かろうじて」の反対は「余裕で」。「徐々に」「ゆっくり」のケースでは、「一気に」が対義語になります。
・このくらいの仕事量ならば余裕でこなせる。
・ここ数日の陽気で一気に雪解けが進んだ。
「漸く」は英語だと?
「漸く」を英語で表すときも、「漸く」のニュアンスによって単語を使い分けます。
at last:最後に、ついに、とうとう、やっと、ようやく
eventually:結局は、ついに、やがて
in the end:ついに、とうとう、いろいろ考慮してみて、結局は
manage to:なんとか~する、思いがけず~してしまう
little by little:少しずつ、だんだん
「漸く」と同じく書き方や読み方が難しい言葉
日本語には「漸く」のように、書き方や読み方が難しい言葉がいくつもあります。一緒に頭に入れておきましょう。
しばらく
【意味】
・すぐではないけれど、あまり時間がかからないさま。少しの間。しばし
・時間的にある程度長く続くさま。当分
・一時的であるさま。仮に
ことごとく
【意味】
問題にしているもの全部。残らず。すべて。みな
いこう
【意味】
・ゆったりとくつろぐ。休息する
・休ませる。休める。やわらげる
「漸く」のニュアンスを正しく読み取ろう
「漸く」は、「やっとのことで」「何とか」「だんだん」「ゆっくりと」という意味をもつ言葉です。
記事で紹介した「漸く」の知識をもとに、「漸く」のニュアンスを文脈から正しく読み取れるようになりましょう。