「享受」とは「受け入れて自分のものにする」という意味
「享受」とは、対象となる物事を「受け入れて自分のものにする」「受け入れ、味わって楽しむ」という意味をもつ言葉です。さらに、利益や恩恵を受け入れる際にも用いられます。
堅い言葉で、普段の会話のみならず、ビジネスシーンでも使う場面は少ないかもしれませんが、公的文書やニュースなどではよく使われるので、ぜひ覚えておきたいものです。本記事では、正しい意味や使い方のほか、類語、言い換え、英語表現などについてもわかりやすく紹介します。
なお、「享受」の対義語は、自分のもっているものを相手に役立ててもらうために差し出す、という意味をもつ「提供」や、相手がほしいと思っているものを与える、という意味をもつ「供給」などがあります。「享受」とは逆の状況の際にすぐに頭に浮かぶよう、これを機に併せて覚えておきましょう。
「享受」の読み方・意味
「享受」は「きょうじゅ」と読みます。「享」は、もとは、神に供物を勧めるという意味をもつ言葉でしたが、現代においては、「ありがたく受け取る」「供える」「もてなす」の意味で使われています。
そして「享受」の形になると、受け取ることがありがたかったり、メリットがあったりするものでなければならず、意味をわかりやすくまとめると次のようになります。
・受け入れて自分のものにする。
・受け入れ、味わって楽しむ。
・何らかの好ましい物事を自分のものにして味わう。
・恩恵にあたり、それを堪能する。
受け入れる対象となるのは、物事だけに限らず、精神的、肉体的な恵み、施し、利点も含まれます。
「享受」の使い方・例文
「受け入れて自分のものにする」「受け入れ、味わって楽しむ」という意味であることがわかっても、どのように使えばいいのかはわかりにくいですよね。そこで、いくつかのパターンにわけ、使い方の例を紹介します。
「受け入れて自分のものにする」の意味の使い方
物理的な利益だけでなく、精神的な利点などを自分のものにする場合の例文です。
・祖父からの遺産を享受することになった。
・癒しの時間を享受できることに喜びを感じている。
「受け入れ、味わって楽しむ」の意味の例文
何かを受け入れたことで自分が楽しめたり、好ましい物事が自分のものにして、その状況を楽しんだりする際の使い方です。
・規律だらけの寮を出て、自由な暮らしを享受した。
・結婚してから、今まで味わったことのない優雅な暮らしを享受できているのが信じられない。
「恩恵にあたり、それを堪能する」の意味の使い方
受け入れた物事を堪能したり、楽しんだりする場合などに使います。
・有料会員になって、会員特典を享受している。
「享受」は、日本国憲法にも使われている
「享受」という言葉は、日本の国家形態や統治の組織・作用を規定している「日本国憲法」の前文の中でも使用されています。ここでは、「享受」が含まれている部分のみを紹介しておきます。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
(情報引用元:E-GOV法令検索 日本国憲法)
「享受」の類語・言い換え表現
「享受」をほかの言葉に言い換えたい場合は、次のようなものが使えます。
・恩恵を受ける
・(恵みが)もたらされる
・幸せを手にする
・分け前をもらう
・役得にあずかる
・授かる
・巡り合う
・獲得する など
また、熟語としての類語には、「受益(じゅえき)」「享楽(きょうらく)」「謳歌(おうか)」などがあります。
「受益(じゅえき)」の意味
「受益」とは、「利益を受ける」という意味の言葉です。精神的なメリットや味わって楽しむといった意味はありませんが、利益を得た結果は、多くの場合、堪能しているので「享受」と類語といえます。
・受益者といわれているが、それほど多くの利益が得られているとは思えない。
享楽(きょうらく)の意味
「享楽」とは、「快楽にふけり、十分に楽しむ」ことをいいます。「受け入れて味わい楽しむ」という意味において「享受」と類語といえます。
・彼女はいつも享楽的なので、大変な仕事でも大変そうにみえない。
謳歌(おうか)
「謳歌」とは、「恵まれた幸せをみんなで大いに楽しみ喜び合う」ことをいいます。「受け入れて味わい楽しむ」という意味において「享受」と類語といえます。
・独身生活を謳歌していたので一生独身を貫くのかと思っていたが、急に結婚の知らせが届いたのでみんなが驚きを隠せなかった。
「享受」の英語表現
「享受する」を英語で表現する場合は、「enjoy」を使います。
・He was to enjoy his inheritance from his grandfather.
(彼は祖父からの遺産を享受することになった。)
・I enjoy the benefits of a paid membership.
(私は、有料会員の特典を享受しています。)
「享受」の意味を理解し正しく使おう!
「享受」は、難しい表現ですが、楽しみや利益などを受け取る場面は、ビジネスシーンでも日常生活でもよくあることです。状況によっては「享受」のように堅い表現のほうが適していることもあるので、類語も含めきちんと使えるようにしておきましょう。