「上梓」とはどんな言葉?
「上梓」の意味は、「文字などを版木に刻むこと」「書物を出版すること」です。
類語は、「出版」「刊行」。
英語で表すときは、「publication」や「publish」を使います。
「上梓」とはどんな意味?読み方は?
「上梓」は「じょうし」と読み、次の意味を表します。
・書物を出版すること
発音するときは、「じょ↘ーし」と「じょ↗ーし」どちらのイントネーションでも大丈夫です。
「上梓」の由来
世界初の印刷術といわれる木版印刷は、隋末期から唐初期の7世紀頃の中国で誕生したと考えられています。「上梓」の「梓」は、この時代の中国で印刷をするときに、梓(あずさ)の木を版材に使い木版を掘っていたことが由来です。
また「上梓」は、「梓に上す(しにのぼす)」といわれることもあります。この「上す」は「正式に書き記して残す。記載する」の意味をもっています。
つまり、「上梓」は、「梓の版材に書き記す」という意味。「文字などを版木に刻むこと」がもともとの意味で、後に「書物を出版すること」の意味が加わりました。
「上梓」が使えるもの
「上梓」は「書物を出版すること」を意味する言葉なので、「書物」を出版するときに使います。
「書物」とは「書籍」「本」「図書」のこと。「冊子」とも呼ばれる次のようなものが「書物」になります。
・漫画
・写真集
・図鑑
「上梓」を用いることができる「書物」には、紙の「書籍」だけでなく電子書籍も含まれます。電子書籍は紙に印刷されたものではありませんが、紙の「書籍」がもとになっているためです。
また、自費出版物であっても「書籍」であれば「上梓」を使用できます。
「上梓」が使えないもの
印刷物であっても、「書物」でない次のものには「上梓」は使えません。
・チラシ
・広告
・回覧文書 など
「上梓」は敬語ではない
「上梓」は「書物を出版すること」を意味するだけの言葉で、単独では敬意のニュアンスをもちません。
敬語として使うときは、相手に対する敬意を表す言葉と組み合わせて、次のように言い換えてください。
・「上梓する」→「する」を尊敬語の「される」に変えて「上梓される」
・「上梓する」→「する」を謙譲語の「いたす」に変えて「上梓いたす」
・「上梓する」→「する」を丁寧語の「します」に変えて「上梓します」
・「上梓した」→「した」を尊敬語の「された」に変えて「上梓された」
・「上梓した」→「した」を謙譲語の「いたしました」に変えて「上梓いたしました」
・「上梓した」→「した」を丁寧語の「しました」に変えて「上梓しました」
「上梓」の使い方を例文で学ぼう
「上梓」の意味がわかったら、次は言葉としての使い方を例文でイメージしてみましょう。
・人気ビジネス系YouTuberのサラリーガールさんが、新著「社会人のお金のつき合い方」を上梓されました。
・この度は、初詩集「夢の中」のご上梓誠におめでとうございます。
・新刊は今年の冬頃上梓予定です。
「上梓」の類語・言い換え表現
「上梓」を言い換えできる類語は、「出版」「刊行」です。それぞれの意味や使い方をおさえておきましょう。
「上梓」と「出版」の違い
「出版」は次の意味をもつ言葉です。
【例文】
各地の民話を集めた昔話の本を出版する。
「上梓」と「出版」の意味はほぼ同じですが、ニュアンスに若干の違いがあるので頭に入れておきましょう。
「出版」は、一般的によく使われる言葉になっていて、やや即物的な印象があります。「上梓」は、古風なイメージのある言葉なので、改まったシーンで使用されることが多いです。
「上梓」と「刊行」の違い
「刊行」は、次の意味をもつ言葉です。
【例文】
地域の歴史を記した古文書の翻訳書を刊行する。
「上梓」と「刊行」の意味もほぼ同じですが、意味合いに少し違いがあります。
「刊行」は、主に美術や文学関係などの書物を「出版」するときに使われており、堅いイメージがある言葉。
「上梓」は上品な印象があります。
「上梓」と「上市」の違い
「上市(じょうし)」は次の意味で使われる言葉です。
【例文】
新薬の開発に投資し、新薬の上市後に売上高に応じたロイヤルティを受け取る契約を結ぶ。
医薬品業界などで、新薬を市販品として発売するときなどに使用されることが多いです。
「書物を出版すること」を意味する「上梓」と「上市」は、まったく異なる言葉なので書き間違えないように気をつけてください。
「上梓」は英語だと?
「上梓」は、英語だと「publication」や「publish」を使って表されます。
・公表、発表、公開、公告、広報、公布
・出版物、公表文献
・発表する、公表する
「publication」は名詞、「publish」は動詞として使用します。
「上梓」の意味や使い方をおさえておこう
「上梓」は印刷業界や出版業界でよく使われる言葉で、そのほかの業界ではあまり用いられていません。
しかし、自費出版物にも使用できるため、知り合いの人が自費出版した場合などに、お祝いの言葉として使う機会があるかもしれませんよ。
社会人の知識として「上梓」の意味や使い方をおさえておきましょう。