「悉く」とはどんな意味?読み方や使い方の例文、類語、英語も解説

「悉く」とはどんな言葉?

「悉く」の意味は、「問題にしているもの全部。多数のものがあるうち、例外なくすべて。残らず。みな」です。

類語は、「余すところなく」「すっかり」「つぶさに」。

英語で表すときは、「every」「all」「altogether」「entirely」「completely」「wholly」を使います。

「悉く」とはどんな意味?読み方は?

「悉く」の読み方は「ことごとく」。次の意味をもつ言葉です。

悉く
・問題にしているもの全部
・多数のものがあるうち、例外なくすべて
・残らず
・みな

「悉く」は、ネガティブな文脈で使用されることが多いです。

しかし、「悉く」は「全部」や「すべて」という意味合いの言葉で、そこにプラスのニュアンスもマイナスのニュアンスもないため、いい意味の文章でも使えます。

「悉く」の古典での意味

「悉く」は、昔から使われている言葉で、古典では漢文訓読体の文章で使用されるケースが多いです。

古典での意味
すべて。残らず

漢文訓読体とは、漢文の語順構成はそのまま維持して、返り点、送り仮名などの訓点を付けることで日本語の語順に置き換え、日本語として読めるようにしたものをいいます。

「悉く」の由来

「悉く」は、「できごと」や「ことがら」という意味をもつ「事」を2つ重ねて「物事のすべて」という意味を表した「事事」に由来する言葉です。「事事」に接尾語の「く」を付けて「ことごとく」となりました。

「ことごとく」が「悉く」と書かれるようになったのは、「悉」の漢字の意味に理由があります。

「悉」は「獣の爪」の象形である「釆」と、「心臓」の象形の「心」を組み合わせてできています。爪でほかの獣の心臓を残らずえぐりとる様を表現しており、そこから「残すところなく全部に及ぶこと。きわめつくす」「すべて。残らず。みな」の意味をもつ漢字になりました。

この「悉」の意味が、「ことごとく」の意味に似ていることから、「ことごとく」が「悉く」と表記されるようになったのです。

「悉」は音読みだと?常用漢字なの?

「悉」の音読みは「シツ」です。「悉」を「シツ」と読む言葉には、次のものがあります。

「悉」を使った言葉
委悉(イシツ):物事をくわしく、ことこまかくすること。委細
詳悉(ショウシツ):非常にくわしくて漏れのないこと。詳細に述べること
知悉(チシツ):ことごとく知っていること。ある物事について細かい点まで知っていること。精通
悉皆(しっかい):残らず。すべて。まるで

「悉」は、常用漢字ではありません。文章で「悉く」と書いても読めない人がいることが考えられるので、「悉く」はひらがな表記される場合も多いです。

「悉く」と「尽く」の違い

「ことごとく」は、「尽く」と書かれることもあります。

「尽く」の意味は「悉く」と同じなので、言葉そのものに違いはありません。どっちを使ってもいいので好きな表記を使用してください。

「尽く」に使われている「尽」の意味もおさえておきましょう。

①つくす。出しきる
②つきる。なくなる
③ことごとく。すっかり
④つごもり。月の終わり

「尽」には、「次第に減って、なくなる」や「続いていたものが終わる」のニュアンスがあります。

「悉く」の使い方を例文で学ぼう

「悉く」の意味がわかったら、次は言葉の使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・彼が手掛けたした商品は、悉くヒットしている。
・絶望的に思われた数々のトラブルは、彼女の手によって悉く解消された。
・常識だと思っていた事柄が、悉く塗り替えられていった。
・彼は常識とされていた事柄の悉くを否定した。
・僕が提案した企画は悉く没にされた。
・これまでのところ作戦は悉く失敗している。

「悉く」の類語・言い換え表現

「悉く」の類語は、「余すところなく」「すっかり」「つぶさに」です。それぞれの意味や使い方をおさえておきましょう。

余すところなく
【意味】
残りがないように、残らないように

【例文】
地元の人しか知らない名所を余すところなくご紹介します。

すっかり
【「悉く」の類語として使うときの意味】
残るもののないさま。ことごとく

【例文】
この公園では、ゲンゴロウやドジョウなど、都会ではすっかり見かけなくなった生き物と触れ合える。

つぶさに
【意味】
・細かくて、くわしいさま。詳細に
・すべてをもれなく。ことごとく

【例文】
作業の段取りをつぶさに確認し、改善点を見つけていく。

「悉く」は英語だと?

「悉く」は、英語だと次の単語を使って表せます。

「悉く」の英語
every:あらゆる、すべての、どれもみな、いかなる、~ごとに、~おきに、毎~
all:全体の、全部の、あらゆる、すべての、あらん限りの、最大の、最高の、~だけ
altogether:まったく、完全に、全然、まるで、全体で、総計で、全体的に見て
entirely:まったく、完全に、もっぱら、ひたすら
completely:完全に、完璧に、まったく、徹底的に
wholly:まったく、完全に

伝えたいニュアンスに近い単語を選んで使用してください。

「悉く」と「漸く」「暫く」

「漸く」と「暫く」は、「悉く」と同じく読み方が難しい言葉です。目にしたときに困らないように覚えておきましょう。

漸く(ようやく)
【意味】
・長い間待ち望んでいた事態が遂に実現するさま。やっとのことで
・苦労した結果、目標が達成できるさま。かろうじて。何とか
・物事がしだいに進行して、ある状態になるさま。だんだん
・ゆっくりと。おもむろに

【例文】
長く取り組んできた対策の成果が漸く現れ始めた。

暫く(しばらく)
【意味】
・すぐではないが、あまり時間がかからないさま。少しの間。しばし
・時間的にある程度長く続くさま。当分
・一時的であるさま。仮に

【例文】
詳細は決まり次第ご連絡します。暫くお待ちください。

【おまけ】「悉くを滅ぼすネルギガンテ」とは?

「悉くを滅ぼすネルギガンテ」は、アクションロールプレイングゲーム「モンスターハンターワールド・アイスボーン」に登場するモンスターです。

「モンスターハンター」シリーズには、ネルギガンテ」という古龍種のモンスターも出てきます。ネルギガンテ」は非常に獰猛で凶暴、凶悪な性格をしており、見るものすべてに襲い掛かってくることから「滅尽龍」とも呼ばれています。「悉くを滅ぼすネルギガンテ」は、この「ネルギガンテ」の特殊個体です。

「悉く」を使ってみよう

「悉く」は、「問題にしているもの全部」や「例外なくすべて」などの意味をもつ言葉です。悪い意味の文脈で使われることが多いですが、言葉そのものには「いい」「悪い」のニュアンスはないため、いろいろなシチュエーションで使用できます。

機会があったら「悉く」を用いてみて、ただの知識から使える言葉に変えていきましょう。