バリューチェーンとは?英語、使い方、サプライチェーンとの違いもわかりやすく解説

「バリューチェーン」とは「価値連鎖」のこと

「バリューチェーン」とは、材料調達、製造、販売、配送などの業務の流れが、それぞれどのような価値があるかを分析するフレームワークのことで、一般的には「価値連鎖」と呼ばれています。フレームワークとは、効率よく運用するための枠組みや、骨組みです。

市場の中で生き残っていくためには、自社の強味や弱みを明確に把握しておくことは重要な要素であり、「バリューチェーン」はその手法の一つでもあります。本記事では、「バリューチェーン」の詳しい内容、分析方法、言葉の使い方、類語、英語などについてわかりやすく解説します。

「バリューチェーン」の英語は「Value Chain」

「バリューチェーン」は、アメリカの経営学者、マイケル・ポーターの著書「競争優位の戦略」の中で使われた言葉で、「価値連鎖」と邦訳されており、「value=価値」と「Chain=鎖」から成る熟語です。英語での使い方の例は次のとおりです。

・create value chain(バリューチェーンを構築する)
・develop value chain(バリューチェーンを築く)

日本においての「バリューチェーン」とは

日本で使われている「バリューチェーン」とは、材料調達から出荷・配送までの一連の流れの中で、どの業務がそのポジションでどのような価値を提供できているかを分析・最適化するためのフレームワークを指し、その構成要素は、「主活動」と「支援活動」に分類されます

バリューチェンの「主活動」とは?

バリューチェーンにおいての「主活動」とは、その組織で直接的な価値をうみだす活動を指し、広くは「購買物流(原材料などの調達業務や商品企画)」「製造」「出荷物流」「マーケティング・販売」「サービス」といった職種が存在します。しかし、製造業、サービス業、第一次産業など、業種によっては内容が少し異なる場合があります。

製造業

製造業においては、「モノづくり」のメインとなる、「購買物流(原材料などの調達業務や商品企画)」「製造」がもっとも付加価値が生じやすいといわれています。特に原材料の購入価格は全体のコストに大きく影響します。そのほか、サービスの部分には、販売後のアフターサービスの質の高さが付加価値に影響します。

サービス業

サービス業は、飲食、宿泊、リース、理容・美容院、旅客・貨物の運輸、タクシー、サーバ運営会社、テレビ局など、顧客が「~してほしい」「~したい」といった要望に応えることを仕事とした業種をいいます。.

サービス業においては、より顧客に喜ばれるサービスを提供することが価値の高さとなるため、企画や営業力はとても重要です。また、飲食の提供については原材料の仕入れ価格も価値の高さにつながります。

そのほか、リピーターの多さが事業の成功につながりますが、これは、販売、マーケティング、サービスの部分にあたります。

第一次産業

第一次産業とは、農産・畜産の「農業」、木材の伐採・加工・生産を行う「林業」、魚介類を獲る「漁業」が含まれます。これらの産業は、単独ではなく、加工をする会社、販売を請け負う会社などとの連携で価値連鎖が生まれます。

たとえば、農業の場合、農作物の生産を行っている農家が、メーカーでは製造部門にあたり、その農家の野菜などを調理して提供している店舗がサービスの部分にあたるわけです。そのほか、小規模の農家が農協などの産直市場で販売して収益を得る場合は、農家が直接販売活動を行ったり、手作りレシピを作るといったサービスを提供することもあります。

バリューチェンの「支援活動」とは?

バリューチェーンにおいての「支援活動」とは、主活動を支援する活動で、「人材資源管理(人事・総務など)」「技術開発」「調達」といった、管理業務に携わる部門が対象となります。なお、「調達」とは、資金、品物、サービス、労働力などを用意することをいいます。

バリューチェーン分析とは?

組織での事業活動を「主活動」と「支援活動」に分け、それぞれの工程を可視化し、どの工程でどのような価値が発生しているかを分析していくことを「バリューチェーン分析」といい、競争化社会でで生き残るためには大切な要素です。

バリューチェーン分析を行うメリット

バリューチェーン分析は、目的意識をしっかりともって行わなければ、重要なことを見落とす場合もあります。そこで、考えられるメリットをいくつか紹介しておきます。

自社の強味・弱みを把握できる

どの部分をさらに強化すべきか、どこを改善すべきかがはっきりさせることで経営戦略が立てやすくなる。

コストの削減ができる

自社の利益を増やすには、無駄なコストは削減しなければなりません。どの部門でどのくらいのコストがかかっているかを詳しく分析することで無駄な費用が明らかになります

競合他社との差別化が図れる

市場内で勝ち残るには、他社よりも利益をあげなければならず、そのためにも他社とは異なる強味を見つけ出すことが大切です。自社の強味や弱みを見つけ出せば、他社との差別化を図ることが可能となります。

バリューチェーン分析の進め方

バリューチェーンの分析方法は、ある程度決まったものがあります。ここでは進め方のポイントを簡潔に解説します。

①バリューチェーンを洗い出す

自社でどの部門がどのような活動をしているかを分類し、消費者のもとに届くまでの流れに直接関係していれば「主活動」、直接関係がなければ「支援活動」といったように、仕分けをしていきます。

②コストの分析を行う

部門ごとにどのくらいのコストがかかっているかを一覧にし、無駄な部分がないかなどの分析を行います。

③弱み・強味の分析を行う

洗い出した自社のバリューチェーンに対し、「強味」や「弱み」はどこか、従業員からの意見を収集して分析を行います。出してもらう意見は多ければ多いほど分析の制度が上がるといわれています。

④VRIO(ブリオ)分析を行う

VRIO分析とはジェイ・B・バーニーが提唱したフレームワークで、「Value(経済的な価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の観点から自社の経営資源の分析を行うことをいいます。

「バリューチェーン」の使い方・例文

「バリューチェーン」は、会話の中では次のように使われることが多いです。場面を想像しながらぜひ呼んでみてください。

例文

バリューチェーン分析で改善点を見つけ出すことができた。
・これだけ実績が伴わないとなると、バリューチェーンのどこに問題があるのかを突き止める必要があるなぁ。
・大学で大企業のバリューチェーンを用いた研究をしてきたお陰で、就職してすぐに即戦力として仕事を任されることになった。

「バリューチェーン」の類語・言い換え

「バリューチェーン」を日本語で言い換える場合は「付加価値連鎖」や「価値連鎖」ですが、カタカナ用語の類語には「サプライチェーン」があります。

「バリューチェーン」と「サプライチェーン」の違い

サプラーチェーンを英語で表すと「supply=供給」「chain=鎖」、で日本語では「供給連鎖」と訳されています。日本においては物流用語として使われており、製品の原材料の調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの一連の流れを指します。

ただし、「バリューチェーン」では、一つの会社内のみの流れを対象としていますが、「サプライチェーン」は一つの会社内ではなく、複数の企業が対象になるといった点で違いがあります。

バリューチェーンイノベーターとは?

技術者は、技術力は高いものの、付加価値などの分析力はあまり持ち合わせていない傾向にあるため、分析は専門家に依頼することになりますが、分析の専門家は技術者ほどの技術的な能力はありません。

そこを補えるように生まれたのが、技術力とコンサルティング力の両方を兼ね備えたエンジニアによるコンサルティングサービスを提供する「バリューチェンイノベーター」です。これにより、現場が抱えている問題点などの情報収集から解決策の提供までを一貫して行えるようになります

競合他社に勝ちたいならバリューチェーン分析を!

市場内で勝ち残るためには競合他社よりも優れた点や魅力的な点を見出さなければならず、差別化を図るためにもバリューチェン分析は重要な作業です。分析方法を理解し、的確に行えるようにしましょう。