トレースとはどんな意味?建築やIT、漫画の分野での意味や使い方も解説

トレースとはどんな言葉?

トレースの意味は、「すでにあるものをなぞること。またはなぞるべき痕跡のこと」です。

類語は、「まね」「コピー」「トラック」。

英語で表すときは、「trace」を使います。

トレースとはどんな意味?

トレースは、次の意味をもつカタカナ語です。

トレース
すでにあるものをなぞること。またはなぞるべき痕跡のこと

トレースのビジネスでの一般的な意味は、「すでにある方法や戦略をなぞる、まねること」です。既存のテイストやコンセプトを継承するというニュアンスで、トレースが使われる場合もあります。

建築・機械設計分野でのトレースとは

建築・機械設計分野でのトレースの意味は、すでにある設計図面や機械製図などの上に半透明の紙をのせて、鉛筆、インク、墨などでなぞり、原画と同じ図面を作ること

建築や機械設計の分野では、新しいものを作るときにまっさらな状態から作り始めることはあまりありません。すでにある設計思想や図面を土台にし、そこに改良を加えることで新しいものを作るケースが多いです。そのため、既存の図面をトレースする作業はよく行われています。

デザイン・イラスト・漫画の分野でのトレースとは

デザイン・イラスト・漫画の分野でのトレースは、先ほど紹介した「建築・機械設計分野でのトレース」と同じで、 原図をなぞって半透明の紙に写し取ることを意味します。

アナログな方法でトレースする場合は、トレーシングペーパーやトレース台を使います。

トレーシングペーパーは、下に置いた紙に描かれている線が透けて見える半透明の紙。トレース台は台の下から光を当てて、紙を重ねて置いたときに下の紙に描かれている線を透かし見やすくする専用の作業台のことをいいます。トレース台は簡単に自作もできます。興味のある人はインターネットで検索してみてください。

デジタルでは、イラストレーター(Illustrator)などのソフトを使用してトレースします。

IT分野でのトレースとは

IT分野でのトレースは、コンピュータのプログラムが実行されていく過程を命令の順番通りに追跡し、誤りのある箇所を突き止めること。 プログラムを実行するとエラーになるけれど、どこに誤りがあるのかがわからないときに行われる作業です。

Excelでのトレースとは

Excelには、「参照元のトレース」という機能があります。「参照元のトレース」は、セルに入力されている計算式がどのセルの値を使って(参照して)計算しているのか確認したいときに使う機能です。

参照関係が矢印で示されるので、数式が正しいかが視覚的に確認できます。

トレースルートとは

トレースルートは、インターネットを使って通信するときに、通信を実行するコンピュータから通信相手のところまで、どんな経路で通信しているのかを調べたいときに使用する命令です。「tracert」または「traceroute」と表記されます。

通信を実行するコンピュータからどのようなルーターを、どの順番で経由して通信相手のところまで行くかがわかります。通信トラブルがあったときなどに使用します。

生産・加工・流通・医療でのトレースとは

生産・加工・流通・医療でのトレースは、「トレーサビリティ」を意味します。

「トレーサビリティ」は、「跡をたどることができること」という意味です。日本語では追跡可能性と訳されます。

農作物や食品、医薬品、工業製品など、その商品がいつ、どこで作られ、どのような経路をたどって消費者のもとに届いたのか、製造や流通の時系列に沿って、または消費者に届いた時点から時間をさかのぼって履歴情報を確認できるようにすること。また、そのシステムのことをいいます。

「トレーサビリティ」の仕組みとメリット

「トレーサビリティ」では、対象の商品やそれを製造するために使用する部品、原材料に対して、一商品ごとや一ロットごとに識別記号を付与し、同種の商品や部品、原材料と見分けられるようにしています。

識別記号を付与された商品や部品、原材料は、それぞれその生産→加工→流通→販売→廃棄の過程が明確に記録されます。こうしておくことで、商品に不具合があったときなどに、履歴情報をたどってどこに問題があったのかを迅速に調査できるようになります。

「トレーサビリティ」についてくわしくは、下記の記事で解説しています。こちらもぜひ読んでみてください。
トレーサビリティとはどんな意味?使い方は?事例も入れて簡単に解説

登山でのトレースとは

登山でのトレースの意味は「先行者登山者の踏み跡。また、その踏み跡をたどること」です。

雪山登山では、トレースがあると雪をかき分けて進まずに済むため体力を温存できます。ただし、トレースが間違った方向に延びていたり、別の目的地に向かっているグループのものであったりする可能性もあるため、トレースを鵜呑みにするのは危険です。しっかり地図でルートを確認しながら進む必要があります。

MEMO
数学でも、行列の勉強をしているとトレースという言葉が出てきます。興味のある人は調べてみてください。

トレースは英語だと?

トレースを英語で表すときは、「trace」を使います。

trace
・(目に見える)跡、足跡、形跡
・(人がいたことやものがあったこと、事件などの)手掛かり、証拠
・(辛うじて感知できるわずかな)しるし、分量
・(人や動物が踏みならした)小道、山道
・(経験や境遇などの)影響、結果
・(製図や美術の)トレース図
・ほんのわずか、少量

「trace」は、「動きが現時点ではもう終了しているものや、現在ある位置や形がはっきりわかっていないものの動作を調べること」というニュアンスをもつ単語です。

「すでにある図面をなぞる」や「どこにあるのかわからないエラー箇所を探す」などの意味合いで使われる、トレースと意味のつながりがありますね。

トレースの使い方を例文で学ぼう

トレースの意味がわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・図面トレースの練習をする。
・先代モデルをトレースしたデザインが、長年のファンにうけている。
・当時の製法を忠実にトレースすることで、懐かしい味を復活させた。
・ロボットが、操縦者の身体の動きを正確にトレースしている。

トレースの類語・言い換え表現

トレースの類語は、「まね」「コピー」「トラック」です。それぞれの意味や使い方をおさえておきましょう。

まね
【トレースの類語として使うときの意味】
まねること。また、形だけ似た動作をすること。模倣

【例文】
先輩のやり方をまねしてスキルを習得する。

コピー
【トレースの類語として使うときの意味】
・写し取ること。複写。模写
・物まね。模倣

【例文】
昨年度の日程表をコピーして、今年度の研修スケジュールを作る。

トラック
【トレースの類語として使うときの意味】
足跡を追うこと。観測すること

【例文】
毎日の運動量や体重をトラックし、健康維持に役立てる。

このうちの「トラック」は、現在も動いているものや、現時点で位置や形がはっきりわかっているものの動きを調べるときに使う言葉です。トレースとはニュアンスが少し異なるので、使用するときには気をつけてください。

【おまけ】身の回りのトレース

トレースは、娯楽の分野でも使われています。興味のあるトレースがないかみてみましょう。

トレース〜科捜研の男〜
関ジャニ∞の錦戸亮さんが主演を務めた、フジテレビ系のテレビドラマ。原作は、日本の漫画「トレース 科捜研法医研究員の追想」。作品に登場する壇浩輝を主人公にしたスピンオフ作品、「ブルータル 殺人警察官の告白」も連載されている。
トレース デュオ ウーヌス
アクションRPGゲーム 「ELDEN RING」に登場する裏ボス的なキャラクター 血の君主モーグが、体力が減ってくると唱える言葉。ラテン語でトレースは「3」デュオは「2」 ウーヌスは「1」の意味。その後、モーグが「ニーヒル!ニーヒル!ニーヒル!(ラテン語で0のこと)」と唱えると、回避できない全画面攻撃が来る。「トレース ドゥオ ウーヌス」とカタカナ表記される場合もある。

トレースの意味を正しく理解しよう

トレースの意味は、「すでにあるものをなぞること。またはなぞるべき痕跡のこと」です。ビジネスでもいろいろな業界で使われていて、分野ごとに異なる意味ももっています。

業界ごとの意味も頭に入れておき、文脈に合う意味合いでトレースを解釈できるようになりましょう。