エンパワーメントとはどんな意味?ビジネスでの具体例、使い方もわかりやすく解説

エンパワーメントとは簡単にいうとどんな言葉?

エンパワーメントの意味は、「力を与える」「権限を与える」です。

類語は「インパワメント」。

英語で表すときは、「empowerment」を使います。

エンパワーメントとはどういう意味?

エンパワーメントは、次の意味をもつカタカナ語です。

エンパワーメント
・力を与える
・権限を与える

エンパワーメントは、個人や集団が本来持っている潜在能力を抑圧されることなく発揮できるようにし、個々の自己決定力を回復・強化できるように援助することを意味します。

エンパワーメントは英語だと?

エンパワーメントを英語で表すときは、「empowerment」を使います。

empowerment
・権限を持たせること、権限付与、権限委譲
・自信を与えること、力を付けてやること

「empowerment」と、カタカナ語のエンパワーメントの意味は同じですね。

ビジネスでのエンパワーメントとは?

ビジネスでエンパワーメントを使うときは、次の意味になります。

ビジネスでのエンパワーメント
・権限委譲
・自律性促進
・能力開花

このうちの「権限委譲」は、これまで企業の管理者が持っていた業務遂行や仕事上の意思決定の権限を、部下に与えることを意味します。

企業の中枢から現場へ、上司から部下へ、それぞれ権限を付与していきます。社員一人ひとりに仕事に関する意思決定を行わせることで自主性を伸ばし、会社全体としてのパフォーマンスを向上させることを目指します。

ビジネスでのエンパワーメントのメリット

エンパワーメントすることで、個人やチームは命じられたとおりに働かなければならない状態から解放され、自発的に動けるようになります。それにより、社員一人ひとりが仕事に感じるやりがいを増すことができます。

何か予定外のことが起こったときは、臨機応変な対応を迅速にとれるようになります。次期リーダー候補など、能力のある社員の成長を促すこともできます。

ビジネスでのエンパワーメントのポイント

ビジネスでのエンパワーメントは、やみくもに行っても上手くいきません。成功させるためのポイントを頭に入れておきましょう。

情報を共有する

権限を与えられても、情報がないと正しい判断はできません。エンパワーメントの事前準備として、会社内の情報は重要情報も含め社員にしっかり公開しましょう。情報を与えることは、社員に責任感を持たせるためにも必要です。

会社としての方向性も社員と共有し、その上でどこまでを各自の判断に任せるのか、どこからは上司との相談が必要なのか、権限の範囲を明確にしてください。

権限の付与は少しずつ

一度に大きな権限を与えるのは、自己判断することに慣れていない人間にとっては不安の種でしかありません。管理者が持っている権限のなかから一部を少しずつ部下に与えていき、自己判断し実行することに徐々に慣れさせていきましょう。

また、自己判断できるだけの経験がまだない人や、権限を与えられることに大きなプレッシャーを感じる人もいます。エンパワーメントをはじめてみて問題がありそうな社員がいた場合は、面談をしたり、いったん中止したり特別な対応をとる必要があります。

任せきりにはしない

エンパワーメントでは過度な口出しは厳禁ですが、完全に任せてしまうと大きなミスにつながることも。状況をみながら必要に応じてサポートしなければなりません。部下からの報告、連絡、相談もしっかり聞き、ミスしてしまった場合はどう挽回したらいいのか一緒になって考えて、優しくフォローしてあげましょう。

また、ミスの責任は権限を付与した管理者が負うのが鉄則です。責任まで部下に押し付けるのは、ただの責任放棄になってしまいます。

エンパワーメントの具体例

エンパワーメントに力を入れていることで有名な、星野リゾートの取り組みを紹介します。参考になる点がないか探してみてください。

①全スタッフと正確な情報を共有する

星野リゾートでは、現場の最前線でお客様に接しているスタッフ一人ひとりが持っている情報と、会社のトップが持っている情報が同じものになることを目指しています。上層部が持つ重要な情報をわかりやすくかみ砕いたうえで、社長自らがスタッフに伝えているそうです。

スタッフの情報を吸い上げるため、スタッフが立場に関係なくいいたいことをいえる「フラットな組織文化」も作り上げました。

②自分で管理する自律的な働き方を促す

星野リゾートでは、スタッフがやりたい仕事に就けるよう、キャリアや働き方に「自由度」を与えています

具体的には、可能な範囲で希望の仕事を担当できるように調整し、働き方もさまざまな働き方ができる仕組みを作り、なるべくスタッフ一人ひとりの希望に沿った形で働けるようにしています。そして、実際にやりたい仕事ができているかの確認まで行う徹底ぶり。

こうすることで、仕事に対するモチベーションが上がり、会社を辞めるスタッフも減りました。

③自分たちで統率するチームを作る

星野リゾートでは、出世にも「自由度」を与え、管理職への昇進や勤務地の異動など、人事の多くをスタッフの「立候補」で決めています。人事の「立候補」制は、キャリアの自由度ともつながっており、出世したいタイミングで誰でも立候補することができます。

立候補者の情報はすべてのスタッフに公開され、誰がそのポジションにふさわしいのか、スタッフ全員で議論したうえで決定されます。自分たちが選んだ管理職のため、その人に欠点があった場合も皆で支えていこうという意識が働くようになり、自分たちでチームをマネジメントしていく意識が生まれました。

女性のエンパワーメント原則(WEPs)とは?

女性のエンパワーメント原則(WEPs)とは、国連グローバル・コンパクトと国連婦人開発基金が2010年に共同で作成した、女性のエンパワーメントに取り組む企業向けの7つの行動原則です。

企業はWEPsに署名し、女性のエンパワーメントの取り組みを行うことが期待されています。

MEMO
国連グローバル・コンパクトは、国連と民間の企業や団体が自主的に手を結んで作った国際的な枠組み。
国連婦人開発基金は、女性の支援を専門に扱う唯一の国連機関。

7つの行動原則とは?

WEPsの7つの行動原則と、どのような取り組みがそれにあたるのかをおさえておきましょう。

①トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進
会社としての目標を設定するなど、企業のトップが率先して男女平等を促進する取り組みを行う。
②機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃
報酬や昇進の機会の男女平等、男女問わず子育てや介護と仕事を両立できるようにするための支援などを行い、インクルージョンを推進する。
③健康、安全、暴力の撤廃
・男女で異なる健康上の影響に配慮をする。
・職場でどのような暴力も振るわれることがないように対策を徹底する。
・人身取引や性的搾取など、従業員の安全に関する理解を深める。
④教育と研修
・伝統的に女性の就業者が少ない産業や職種に女性を積極的に採用し、女性が就ける職種を増やす。
・教育や研修を充実させる。
・他社の成功事例を調べ、自社の取り組みと比較し課題をみつけるなど、他社の取り組みも活用しながら対策を進める。
⑤事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動
・女性起業家に投資するなど、女性の起業を支援する。
・女性経営者とのビジネスを増やす。
⑥地域におけるリーダーシップと参画
・女性のエンパワーメントに力を入れている企業が模範となり、その地域のほかの企業の取り組みを促進する。
・取引先や調達先など企業の利害関係者や、そのほかの機関と協力してことにあたる。
・助成金や社会貢献活動を通して、女性のエンパワーメントを支援する。
⑦透明性、成果の測定、報告
・企業の方針や実行計画を書面など目に見える形で作成する。
・取り組みの成果を男女別のデータにまとめる。
・報告書を作成し公表する。

まずは①~④の社内でできる取り組みからスタートし、その後社外とも交流しながら⑤⑥⑦と順にステップを進めていきます。

WEPsのメリット

WEPsに参加することは、女性にとってだけでなく、会社にとってもメリットがあります。

まず女性の力を活かした、今までよりもパワフルなビジネスを行えるようになります。男性も含めて社員満足度が上がり、生産性が向上します。さらに、女性起業家や女性のエンパワーメントに取り組むほかの企業との縁が生まれ、新しいビジネスチャンスを得られます。
参考 女性のエンパワーメント原則(WEPs)内閣府男女共同参画局

そのほかの分野でのエンパワーメント

ビジネス以外の分野でもエンパワーメントは使われています。分野ごとのエンパワーメントの意味も覚えておきましょう。

福祉でのエンパワーメントとは?

社会福祉政策の分野では、エンパワーメントは福祉サービスの利用者にどのサービスを使うか選択する権利を与え、政府の介入や裁量を減らしていこうという考え方を意味します。

具体的には、特定のサービスを政府の判断で福祉サービスの利用者に提供する従来の支援とは別に、利用者に直接手渡す補助金を増やして、それをどのサービスに使うか利用者が選択できるようにします。

介護福祉の分野でのエンパワーメントの意味は、障害を持った人やその家族がなくしていた主体性や能力を回復し、できる範囲で自分たちの生活を自分たちの力でやりくりできるようになることです。その力を高めていくことを意味する場合もあります。

看護でのエンパワーメントとは?

看護でのエンパワーメントは、患者さんや家族が持つ本来の力を引き出すように、看護師が援助することです。

従来は、患者さんや家族は医師や看護師の指示に従い、受け身で治療を受けるやり方が一般的でした。しかし、この方法は治療に対する患者さんや家族の意欲がわきにくく、退院後の服薬や食事制限、運動制限など継続的な治療や健康増進ができない場合がありました。

現在では主導権を患者さん自身に与え、看護師は患者さんや家族が自分たちで治療や健康増進行動をマネジメントできるようにサポートするべきという考え方が主流になっています。

患者さんや家族が積極的に治療に参加できるよう、患者さんや家族に知識や技術を提供するなど必要な支援を行い、やる気を引き出していくのが看護でのエンパワーメントです。

心理学でのエンパワーメントとは

心理学でのエンパワーメントは、否定的な評価を受けたことなどが原因で自己否定の状態にあり、生活する力を失っている人に対して、その人らしく生きられるように支援をすること

自己否定の影響をなくす手助けをし、社会と関わりながら自分の問題を自分で解決できるように導き、自分の生活を自分でやりくりできるようサポートします。

その人の強みや個性、可能性などポジティブな面に注目し、その人が持っている能力を発揮できるよう環境面の整備も含めたいろいろな角度から支援していきます。

エンパワーメントの使い方を例文で学ぼう

エンパワーメントの意味やメリットがわかったら、次はカタカナ語としての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・作品を通してたくさんの人をエンパワーメントすることを目指している。
・次代を担う後継者が集う青年団が、業界のエンパワーメントに取り組んでいる。
・社員がエンパワーメントしていないと会社の成長は望めない。
・企業としてのエンパワーメントを高めることを目指し、社内の改革を始める。

エンパワーメントの類語・言い換え表現

エンパワーメントの類語は、「インパワメント」です。カタカナの表記が違うだけでエンパワーメントと同じ意味のため、言い換えに使えます。

例文
今回の応募作品はメッセージ性が強く、インパワメントされるものが集まった。

【おまけ】楽天のエンパワーメントとは

楽天グループ株式会社は、社会的存在意義を示す言葉としてエンパワーメントを掲げています。楽天がエンパワーメントしたいのは人々と社会です。

楽天は、インターネットなどのテクノロジーを活用し、地域社会やビジネスパートナー、多くの消費者にチャンスを提供し、持続可能な社会を実現することの手助けをしていきたいと考えています。

エンパワーメントは、楽天のこの想いをひとことで言い表す言葉として、企業理念やブランドコンセプトなどに度々用いられています。

エンパワーメントの意味を正しく読み取ろう

エンパワーメントは、ビジネスで重要視されているカタカナ語です。ビジネスの場合は、「権限委譲」「自律性促進」「能力開花」の意味になりますが、そのほかの分野では異なるニュアンスで使われることもあります。

分野ごとの意味も頭に入れておき、文脈に合わせて正しい意味合いで読み取れるようになりましょう。