「井の中の蛙」とはどんなことわざ?意味や使い方、類義語、英語での表現も解説

「井の中の蛙」とはどんな言葉?

「井の中の蛙」は、「自分の狭い知識や経験にとらわれ、さらに広い世界があることを知らないこと」をたとえた言葉です。

類語は、「夜郎自大」「夏虫氷を疑う」。

英語で表すときは、「The frog in the well knows nothing of the great ocean.」と訳します。

「井の中の蛙」とはどんな意味?読み方は?

「井の中の蛙」は、「いのなかのかわず」と読みます。次の意味で使われることわざです。

井の中の蛙
「自分の狭い知識や経験にとらわれ、さらに広い世界があることを知らないこと」をたとえた言葉

簡単に言い換えると「見識が狭いこと」や「世間知らず」「ひとりよがり」となります。

「井の中の蛙大海を知らず」や「坎井之蛙(かんせいのあ)」、「井蛙(せいあ)」「井底の蛙(せいていのあ)」と書かれることもあります。

「井の中の蛙」の語源は?

「井の中の蛙」は、中国戦国時代の思想家 荘子(そうし)の名を冠する書物『荘子』の、「外篇(がいへん)秋水(しゅうすい)」に登場する次の言葉に由来するといわれています。

「井の中の蛙」の語源
井蛙不可以語於海者、拘於虚也
(訓読文)井蛙は以って海を語るべからざるは、虚に拘ればなり。
(現代語訳)井の中の蛙に海のことを語っても無駄なのは、蛙が自分の住みかの狭いくぼみにとらわれているからである。

『荘子』の「外篇」は作者とされる荘子本人が書いたものではなく、後年誰かが付け足したものだろうと考えられています。荘子本人の言葉がもとになったわけではないですが、「井の中の蛙」は昔からよく使われている非常に有名な言葉です。

「井の中の蛙大海を知らず」に続きを付け足して使う人もいる

「井の中の蛙大海を知らず」に続きを付け足して、「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」のように使う人もいます。

しかし、「井の中の蛙」や「井の中の蛙大海を知らず」のもとになった『荘子』には、「されど空の青さを知る」の意味を表す文言は登場しません。

「されど空の青さを知る」の部分は、日本で近年になってから付け足された文言です。

「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」は、「井の中の蛙は海のことを知らないが、井戸の中に長くいたからこそ井戸からみえる空の青さはよく知っている」という意味。「狭い世界であったとしても、その世界のことを深く知りその道を極めることはできる」というようなポジティブなニュアンスで使われる場合が多いです。

どことなく、「井の中の蛙の何が悪い」というような意志を感じさせる文言ですね。本来のことわざからかけ離れた意味になっているため、「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」と「井の中の蛙」は別物と考えることをおすすめします。

「井の中の蛙」の使い方を例文で学ぼう

「井の中の蛙」の意味がわかったら、次はことわざとしての使い方を例文でイメージしてみましょう。

例文
・彼はまさに井の中の蛙のような人物だ。
・我が子には、井の中の蛙にはなってほしくないので、早くから外に目を向けるように教えてきた。
井の中の蛙で終わりたくなかったため、海外に武者修行に行くことにした。
・社内での派閥間の論争など、井の中の蛙の議論でしかない。
・自分は井の中の蛙だと気がついた。

「井の中の蛙」の類語・類義語・言い換え表現

「井の中の蛙」の類語は、「夜郎自大(やろうじだい)」「夏虫氷を疑う」です。それぞれの意味や使い方をおさえておきましょう。

夜郎自大
【意味】
実は大したことがないのに、自分たちの力を誇って威張ること

【例文】
夜郎自大な態度で失笑を買った。

夏虫氷を疑う
【意味】
夏の間しか生きていない虫は、世界に氷があることを知らないからそれを疑う。小さな領域に囚われて広い世界を知らないさまのたとえ

【例文】
夏虫氷を疑うにならないように見聞を広げる。

「井の中の蛙」は英語だと?

「井の中の蛙」は、英語では「The frog in the well knows nothing of the great ocean.(井戸の中のカエルは大海原について何も知りません)」と訳されます。

そのほかにも、次のような表現で「井の中の蛙」に似たニュアンスを表すことができます。

「井の中の蛙」に似たニュアンスの表現
He that stays in the valley, shall never get over the hill.:谷間に留まるものは山を越えられない
They think a calf a muckle beast that never saw a cow.:親牛を見たことのない者は、子牛を見て大きな獣だと思う
He lives in his own world.: 彼は自分の世界でしか生きていない

「井の中の蛙」の意味を正しく理解しよう

「井の中の蛙」は、「見識が狭いこと」や「世間知らず」「ひとりよがり」などのニュアンスを表すことわざです。

「井の中の蛙」のことわざに続きをつけて、「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」のように使われる場合もあります。しかし、「井の中の蛙」とは意味が大きく異なっているため、この2つは別物と理解しておきましょう。