「クレド」とは「信条」や「志」のこと
多くの企業には、独自の企業理念や経営理念が掲げられていると思いますが、たいていの場合、企業理念、経営理念といったものは抽象的に表現されているものです。そこで、それらをより具体的に示したものが「クレド」であり、日本語では「信条」や「志」と訳されます。
日本においては、サービス業を中心に導入する企業も増えているため、「クレド」が何かということをしっかり理解しておく必要があります。本記事では、言葉の意味や会話での使い方だけでなく、メリットや導入のための進め方などについてもわかりやすく解説します。
「クレド」の英語は「credo」
「クレド」は英語で「credo」と表記します。もともとは、ミサ典礼においての聖歌のひとつで、ラテン語で「われは信ず」の意味する言葉で、信仰宣言全体を指すこともあり、「信条」や「志」と訳されています。
日本語においての「クレド」とは
日本企業では、たいていの場合「企業理念」や「経営理念」を掲げて事業に取り組んでいます。まずは、「企業理念」「経営理念」がなにかを理解しておきましょう。
【企業理念】
この企業がどのような目的で事業を行うのかや、企業を存在させる意味を表したもの。
【経営理念】
経営者の考え方や信念を表したもの。
しかし、これらの理念は、短文で抽象的に表現されているのがほとんどで、じっくり考えなければなかな意味が伝わりません。そこで、より具体的に向かうべき方向性を示す目的で作られるのが「クレド」です。
「企業理念」や「経営理念」は経営陣が決め、従業員に周知させたり、社外向けに「当社はこのような考えをもって事業を行っています」と伝えますが、「クレド」は、企業理念や経営理念をもとに、従業員が主体となって決め、「このように行動していきましょう」と全従業員に周知させます。
「クレド」と「行動指針」には違いがある
「クレド」は、日本語で「行動指針」と説明されている場合がありますが、厳密には違いがあります。
【行動指針】
向かうべき方向を指し示すもの。
【クレド】
どの方向にどのように進むのかを具体的に指示するもの。
「クレド」を導入するメリット
日本の企業でもクレドを導入する企業が増えていますが、その理由は次のようなメリットがあると考えられているためです。
従業員のモチベーションアップになる
何を目指せばいいのか、どこに向かえばいいのかが明確になっているため、従業員ひとり一人が目的意識を持ちやすく、それがモチベーションの維持につながります。
従業員の人材育成につながる
定期的に社内研修を行い、従業員の仕事への目的意識を高めている企業もあります。しかし、研修で学んでも日常業務の中では結構忘れているものです。しかし、クレドを作成し、目につくところに掲示することで、各従業員への周知ができます。
従業員に明確な意識づけができる
クレドを作成し、どのように事業に取り組むべきかをわかりやすく提示することで、従業員に明確な意識づけができます。
コンプライアンスの強化につながる
コンプライアンスとは「法令遵守」の意味で、わかりやく説明すると、「企業などが規則・法令をしっかり守ること」を指す言葉です。
クレドを設定し、各自が目的意識を強くもつことで、コンプライアンスそのものを強化することができます。
「クレド」導入にあたっての進め方
「クレド」は、従業員が主体となって作成するもので、ある程度決まった進め方があります。
①各部署から代表者を選出する
いろんな意見が出やすいよう、偏った部署ではなく、複数の部署から議論するためのメンバーを選出します。
②目標やスケジュールを定める
代表者の意識を統一するため、どのような目的でクレドを決めるのかを確認したのち、いつまでに作るのか、どのような形で周知させるのかを決めます。
③経営理念・企業理念を明確にする
その企業で定められている、「経営理念」や「企業理念」が、どのような目的や意味をもっているのか、経営陣に確認する場を設け、代表者がしっかりと「経営理念」や「企業理念」を理解します。
④従業員へのヒアリングを行う
代表者以外の従業員に対しアンケートなどを利用して、従業員へのヒアリング実施しますが、一つの部署で人数が多い場合、小規模のミーティングを開いて議論するといった方法もあります。アンケートをとる場合、確認する内容としては、「従業員としてどのようなことをするべきか」「改善点」「課題だと感じていること」などがあります。
⑤クレドをわかりやすく文章化する
アンケートの結果を誰もが理解できる文章にまとめ、全授業員に伝えます。伝える方法としては、次のようなものがあります。
・携帯しやすい大きさの「クレドカード」を配布する。
・メールを配信する。
・各部署に掲示する。
・朝礼時に読み上げる。
「クレド」の有名な導入事例
楽天、ニチレイなど、さまざまな大手企業でクレドが導入されていますが、ここではクレドを導入していることで有名な「ザ・リッツ・カールトン」の事例として紹介しておきます。
有名ホテルのひとつである「ザ・リッツ・カールトン」では、企業理念として「ゴールドスタンダード」というものを掲げており、次の6項目で構成されています。
・クレド
・サービスの3ステップ
・第6のダイヤモンド
・モットー
・サービスバリューズ
・従業員との約束
そして、「クレド」の内容は、「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。」「最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します」といった、具体的な行動が示されています。もっと詳しく知りたい人は、ぜひ公式サイトを覗きにいってみてください。
(データ参照元:ザ・リッツ・カールトン ゴールドスタンダード)
「クレド」の使い方・例文
「クレド」がどのようなものであるかを理解できれば、使い方はそれほど難しくはありませんが、一応わかりやすい例文を紹介しておきます。
・クレドを作成するために、経営理念の内容と意味を確認した。
・従業員の目的意識を統一するために、当社でもクレドを導入することにした。
「クレド」の類語・言い換え
クレドを日本語で表すとすれば、「具体的な信条や志」「どのように進むかを表した指示書」がわかりやすいです。そのほか、カタカナ用語の類語としては、「ミッション」「ビジョン」があります。
ビジョンとは、企業が「こんな姿でありたい」ということを示したもので、基本的には「ミッションを実現するためのビジョン」となります。つまり、ビジョンは単独で存在することはなく、ミッションが前提にあるといえます。
「クレド」を作ってモチベーションをキープしよう
企業が成長していくためには、従業員が働きやすい環境を作らなければなりません。そのためにもモチベーションを保つことが大切であり、「クレド」は有効な方法の一つといえます。また、「クレド」は一度決めれば終わりというものではなく、新しい課題が見つかればクレドに組み込まなければなりません。そのためにも定期的な見直しを行うようにしましょう。