リテンションとは?人材・マーケティングでの意味の違い、使い方、関連語も紹介

「リテンション」とは「人材の維持」「顧客の保持」のこと

「リテンション」は、人事の分野においては、「優秀な人材の維持」、マーケティングの分野においては、「既存顧客の保持」を指しており、カタカナ用語が頻繁に使われるようになった現代で人事やマーケティングの仕事に従事している人は絶対に覚えておきたい言葉の一つです。本記事では、それぞれの分野での意味や使い方のほか、類語、言い換え、英語での表現方法などについてもわかりやすく紹介します。

なお、マーケティング分野での「既存顧客の保持」の対義語に「アクイジション=新規顧客の獲得」があるので、併せて覚えておきましょう。

「リテンション」の英語は「retention」

リテンションは英語で「retention」と表記し、次のような意味をもつ単語として使われています。

・保持
・維持
・記憶力
・記憶
・保持されているもの

「持っている」ということではなく、「今の状態を維持する」「相手が逃げないようにする」の意味合いが強いです。

・retention of communication data(通信データの保持)
・retention basin(溜め池)
・retention device(保持装置)
・boost retention(定着率を高める)

また、医療分野においては、「排出されるべき糞尿など、分泌物が滞留していること」に対しても使われます。

日本語においての「リテンション」とは

冒頭でも記載しているとおり、日本におけるカタカナ用語としての「リテンション」は、主に企業の人事分野、マーケティング分野で使われており、広い意味では「今の状況を保持する」ことを指しています。しかし、詳しい意味や使い方はそれぞれの分野で異なるため、区別して理解しておかなくてはなりません。

人事分野においてのリテンションとは

人事分野でのリテンションは、「優秀な人材の維持」という意味で使われています。企業にとって、優秀な人材の維持は、成長の過程において重要な要素の一つであり、流出を抑える努力は常にしておかなくてはなりません。

リテンションのメリット

人事分野でのリテンションのメリットは大きく3つあります。

・長期的な経営戦略の遂行が可能
・従業員のスキルの維持ができる
・採用コストの低下につながる

新卒も中途採用も、新しく従業員を採用するには、そのためのコストがかかってきます。今いる従業員の流出を防ぐことができれば、そのコストはかかりません。また、従業員の入れ替えが激しいと、長期間の知識と経験を持ち合わせた人がおらず、企業としてのスキルアップをすることができません。しかし、人材を維持できていると、経験と実績からさらなる成長につなげることが可能となり、長期的な事業戦略も立てやすくなります。

人事分野での「リテンション」の使い方・例文

人事分野での会話では、「リテンション」はこのように使われます。

例文

・ここ半年、毎月2~3人の離職者が出ているため、リテンションを高める方法を考えなければならない。
リテンション強化には、どのようなことに取り組めばいいか、各部署で案を出してほしい。
リテンション率の高い企業と当社と何が違うのか、調査をしたいと考えている。

マーケティング分野においてのリテンションとは

マーケティング分野でのリテンションは、「既存の顧客との関係を維持すること」を指していいますが、この場合の顧客は個人だけでなく、法人も対象です。また、この分野には「リテンションマーケティング」という、顧客と企業との良質な関係を維持するためのマーケティング活動が存在します。

リテンションのメリット

新規顧客ばかりだと、宣伝されていた商品のみの購入で終わってしまいがちです。しかし、既存顧客の場合、「この商品が良かったからシリーズで揃えてみよう」「Aを使って良かったから少し高いがBも使ってみよう」という人も増えてきます。また、本当に「これはいいものだ!」と自信をもって使っている人は、知り合いに進めたり、SNSで発信してくれたりするので、そこから新規顧客の獲得につながる場合も多いです。

そのほか、既存顧客が増えれば、どの商品の売れ行きがよく、どれが悪いのかも明確になるため、企業の商品開発にも役立ちます

マーケティング分野での「リテンション」の使い方・例文

マーケティング分野での会話では、「リテンション」はこのように使われます。

例文

・A社のリテンション率は高く、売上が年々上がっている。
・通販事業を始めるにあたり、リテンションマーケティングが成功の鍵だと考えている。
・マーケティング部門だけでなく、開発や営業も含めてリテンションに取り組んだ結果、顧客の定着率が上がった。

「リテンション」の類語・言い換え

「リテンション」を日本語で言い換える場合は、人事用語、マーケティング用語で異なった表現方法があります。

リテンションの言い換え表現(人事)

・人材/優秀な人材の維持
・人材流出の回避
・優秀な人材の引き留め など

リテンションの言い換え表現(マーケティング)
・既存顧客の保持
・リピート顧客の維持

そのほか、マーケティング用語としてのカタカナ用語類語には、「ホスピタリティ」「サービス精神」があります。

ホスピタリティ

ホスピタリティには、「心からのおもてなし」「心のこもったサービス」といった意味があります。既存顧客の定着には、ホスピタリティの精神が必要不可欠なため、リテンションの類語といえます。

サービス精神

サービス精神には、「人を喜ばせようとする、奉仕的な気持ちや態度」という意味があり、ホスピタリティと同じく既存顧客の定着のためにはとても重要な要素です。

「リテンション」の関連語

リテンションには、「リテンション〇〇」といった関連語が存在します。関連付けると覚えやすいので、これを機にチェックしておきましょう。

リテンションマネジメント

リテンションマネジメントは、人事用語として主に使われており、「人材を定着させ、継続して活躍してもらうための取り組み」を意味する言葉です。リテンションが「人材の維持」であるならば、リテンションマネジメントとは、「リテンションのための取り組み」ということになります。

リテンションレート

リテンションレートは、主にマーケティング分野で使われている言葉で、「既存顧客維持率」と訳すことができます。「リテンション率」という言葉もありますが、意味は同じです。

リテンションレートは決まった計算方法があるため、マーケティング業務に携わる人は覚えておくと便利です。

【リテンションレートの計算方法】
(特定機関の継続利用者数)÷(特定期間中の新規利用者数)

リテンションを高めることは企業の成長にもつながる

人事、マーケティングの区別なく、リテンションを高めることは、企業の業績アップや企業としての成長につながります。営業や開発など、ほかの部門で働いている人でも、自社のリテンションは高いか低いかを意識することは大切なので、まずは言葉の意味はしっかりと覚えるようにしましょう。